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訪問者

――翌日の学校――


 教室の中は昨日よりも静かで暗い空気に包まれていた。

 “ミア、アイビー、ソフィアが未だに帰ってきていない”

 アンナ達のグループはこの現実を受け入れることができないようだ。

 耳に入ってきた話だと、警察はすでに何百人体制で捜索にあたっているらしく、一夜明けても見つからないのはおかしいと、ソフィアの恋人のアンディは怒りをあらわにしている。


 ―――ジャックは無事なのだろうか。

 もし警察の中に裏切り者がいて、ジャックの正体をバラされてしまったら?

 それこそ一大ニュースになって多数の報道関係者がキラーハウスに押し掛けるだろう。

 これが金持ちの娘を殺してしまった代償だと言うのか。


 何故――

ミア達が私にしてきたことを誰も気に留めないのだろう。 

 散々な目に合わされてきたのに・・・ クラスメイトはミア達の安否を心配するばかり。

 残酷な現実を突き付けられた私は心苦しくなり虚無感に襲われた。


「これ事件なんじゃない?」

「1人だけ帰ってきたらしいよ」

「え?誰?」


 校内は一日中その話で持ち切りで“肝試しスポットに行った3人が帰ってこない”という噂はあっという間に広まっていった。

 自力で帰ってきたとアンナに伝えた私もすでに注目の的。 どこにいても周りから視線を浴びるから気まずかった。

 すでにあの3人は死んでいるけど―― 最初からキラーハウスに行く選択をしなければ、こんな面倒臭いことにはならなかったのに。

 

 

 それから3日後―――


 “3人がまだ見つからない”とアンナ達のグループが険しい表情で話し合っていた。 深刻な事態に直面していることを受け入れ始めている様子だ。

 これだけ時間が経過しても見つからない。何の情報もない。全員の頭の中には恐らく“死”という言葉がよぎったのだろう。


 父親も母親もSNSの更新が止まっているからか世間の憶測が始まっていた。 “娘が家出した”“家庭内の仲が悪い”“浮気”“不倫”など不確かな情報が飛び交っている。

 まだニュースには取り上げられていないようだけど時間の問題だろう。

 

 そんな現状の中、私には1つだけ違和感があった。

 何故、私のところに警察が誰一人も来ないのか―――。

 捜索が始まってからもう4日も経っている。 ミア達と一緒にいた私にキラーハウスで何があったのか、事情を聞きに来てもおかしくはない。それが普通だと思っていたから伝えることを準備していた。

 しかし一向に警察が来る気配がない。


 違和感を胸に抱えながら、今日も1日が過ぎていった。

 

 5日目の朝もいつも通り大学へ行って、周りの視線を浴びながらも目立たないように過ごした。

 放課後はどこにも寄らずに帰宅する。

 猫のジャックにご飯をあげて、食べている様子をじっと見つめていた。

 こんなにも可愛くて尊い存在をジャックが見たらどんな気持ちになるのだろう。 吸血鬼にも感情はあると言っていた。“可愛い”と共感してもらえるのだろうか。

 そんなことを考えていた時だった。


ピンポーン


(――誰?)


 珍しく玄関のチャイムが鳴り、全身に緊張感が走る。


 もしかして警察?


 私は猫のジャックに「ちょっと待っててね」と伝えて、恐る恐る玄関先へ向かった。

 玄関に近付くにつれて鼓動が速くなるのを感じる。


「どなたですか?」

「――ミアについて聞きたいことがある。

兄のクリスだ」


 訪問者はミアのお兄さんだった。

 想定外の事態に鼓動が更に速くなる。


 ミアの兄、クリスの口調は落ち着いていたが、キラーハウスから1人で帰ってきた私に対してどんな印象を持っているのかは分からない。

 まぁ、でも、帰ってくださいと伝えるのも変だ。

 私は深呼吸をして一度気持ちを落ち着かせてからドアの部に手を掛けた。

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