再会
ドゥルルッ ドゥルルッ
ブォォンッ⸺⸺
前はこの音の正体がすぐに分からなかった。 建物の取り壊し工事でも始まるのだろう。そう思っていた。
でも、今は分かる。これは2度目の経験だから⸺⸺。
ガガガガガッ
壁を削る音。人を切断するための、男の武器。チェーンソーだ。
「きゃああああああ!!!!!いやぁ!助けて!!!助けて!!!!っぅぐあ!!!!!」
そう、前もこんな感じだった。
ソフィアは呆気なく殺される。
「いやぁぁぁあああ!!!!!」
ダッ ダッ ダッ ダッ
逃げ惑う2人の足音。 忠告を聞けば生きて帰れたかもしれないのに。
ここは“キラーハウス” 足を踏み入れてしまった時点で最期。死のルートしか存在しないのだ。
これからここで起きること全てを知っている私は前よりも緊張感がなく、冷静でいられた。
「助け、助けて!!!ごめんなさい!ごめんなさいいい!!!」
ギィィインッ
ズズズ⸺⸺・・・
「あがっ、ぉ、う・・・」
「うそ、、アイビー、いや、い、いやぁぁあああ!!!!!」
アイビーも、終わってしまったか。残るはミアだけ⸺⸺。
あの男からは逃げられないことを知っている私はミアを少しだけ哀んだ。
ダッ ダッ ダッ ダッ ダッ
「何なのよぉ!!!馬鹿エマ、何とかしなさいよぉお!!!」
ミアが全速力で私の元へ戻ってきて、泣きながら私の髪を力強く引っ張った。
私の額の傷口から垂れ落ちる血の量が増えていく。
「⸺⸺エマぁぁあああ!!!あんたが、あんたが死になさいよぉお!!!!」
ああ、同じ光景だ。泣き叫ぶことしかできない哀れなミア。美人なのに涙と鼻水で顔面がぐしゃぐしゃだ。
ブォンッ
ブォォンッ
ミアを追ってきたあの男が、ゆっくりと姿を現す。チェーンソーを片手に。
「・・・・・・」
男は私を見て一瞬だけ固まった。どんな心境で私を見ているのかは分からないが、その様子から男も未来の記憶があるのだと察した。
男は意外にもチェーンソーを振りかざすことなく、じっと私を見下ろしながらその場に立っている。
ダッ
ミアはその隙を狙って走り出す。
男はミアを追い掛けようとしたが、足を止めて私の前に屈んだ。
「・・・さっそく自殺でも試みたのか、お前」
「え?」
男は私の額についている血を拭いながらそう言った。
その声は少し弱々しくて⸺⸺。 こいつには感情がないはずなのに・・・まるで私を心配してくれているかのような、前とは違う人情味のある発言に妙な気持ちになった。
「・・・まあいい。お前は最後だ」
男は前回と同じ台詞を吐き捨て、静かに立ち去った。ミアを探しに行ったのだろう。
「・・・何?」
未来から過去へ戻ってきたのは私だけではなかった? もしかしたら殺人鬼側には私を殺さないと先へ進めない、とか決まったルールがあるのだろうか。
だとしたら次は確実に、容赦なく殺しにくるだろう。それにあいつはあの時私を殺し損ねたから、殺意も強くなっているはずだ。
私は死ぬ覚悟はできている。
ああ、そう言えばさっき、逃げるのを忘れてしまった⸺⸺。
男からあんなふうに話しかけられると思ってなかったから。
次こそは逃げないと。
また価値がないから殺さないとか言い始めて長期戦になるのは面倒臭い。




