生意気な忠告
廃墟の中をスマホで撮影しながら奥へ進むアホ女達。
こいつらの運命を知っている私は不思議な気分だ。
「この辺でいいんじゃない?」
「ほらエマ、座れ!」
アイビーは乱暴に私を座らせると、バッグの中からロープを取り出した。
「エマ、抜け出せる自信はあるぅ!?」
悪魔のような笑みを浮かべながら。
私の体にロープを巻き付けるアイビー、その様子をスマホで撮影するソフィア、リーダーのミアは満足気に眺めている。
一度私が引き止めたからだろうか?
こいつらが聞き覚えのない台詞を吐くのは未来が少し変わっているということ?
キィィ――・・・
「何今の!?誰か音出した?」
「風じゃない?」
扉が軋むような音に辺りをキョロキョロと見渡すミア。ソフィアは一旦スマホを下ろしたが、気を紛らわすように撮影を再開した。アイビーは肩を強張らせながらも一生懸命私を縛っている。
そろそろ、あの男が来る―――。
「さて、エマは抜け出せるのでしょうか!」
「ははっ!実況に熱入ってるじゃん」
ロープでぐるぐる巻きにされた私をスマホに映し、笑い合う3人。
「早く逃げたほうがいいと思うけど」
これは最後の忠告だ。
「は?」
「えらそうに、黙れよブス」
「――っ」
ミアの口から冷たく吐かれた言葉と同時に額に石がぶつかった。
手加減という言葉を知らないのか・・・ いつになく反抗的な私の態度に苛立ったミアは、地面に落ちていた石を結構な力で投げ付けた。
額からゆっくりと血が垂れ落ちる。
忠告を無視したことを後悔するのはあんた達なのに。
ロープで縛られている私は額を抑えることもできなかった。
前も石を当てられたけど、こんなに強くはなかったはず。
私の発言や行動によって未来が変わるのだろうか。
「じゃ、私らは出ようよ」
「行こ行こ!」
「最後に何か一言お願いしま~す!」
「・・・・・・」
「つまんね~女」
去り際に3人は1人ずつ私に唾を吐き捨てた。 まぁ、ミア達にとったら私は格下の人間だし。忠告のつもりだったが生意気な態度に見えたのだろう。
静けさが残る空間に1人置き去りにされた私はロープからの脱出を試みる。
「はぁ・・・」
そろそろチェーンソーの音が聞こえてくるはず。 私は男に見つかったら全速力で逃げればいい。そのためにはまずこのロープを何とかしないと――。
筋肉でロープを引き裂けるわけがないため、一度体勢を整え直し勢いを付けて起き上がった。
何とかバランスを維持しながら立ち上がることに成功した私は、小さな歩幅で歩み出す。
こんなに全身に巻き付けなくてもいいのに。
(馬鹿みたい・・・)
殺されないと先へ進めないのならさっさと死んで、この意味の分からない現実からおさらばしよう。




