リセット
「おい、ドジ!早く来いって~!」
「てか、ここまじで雰囲気あるじゃん」
「でしょ!ほら、動画撮るよ~!」
目を開くと、私はキラーハウスの目の前に立っていた。
自殺を試みて切ったはずの左手首に切り傷は見当たらない。
そして何故か死んだはずの3人が生きている。
自分の格好を確認すると初日に来ていた服を身に纏っていることに気付いた。
――何、この状況。
「やってきました~!噂のキラーハウス!
今日はここに、馬鹿エマを閉じ込めま~す!!!」
聞き覚えのある台詞に、見覚えのある場面。
これは、夢――?
または死後の世界だろうか?
いや、夢にしても死後の世界にしてもここまで意識がはっきりしているのはおかしい。
頬に感じる風の冷たさも、木々の揺れも、この独特な静けさも妙にリアルで気味が悪い。
ミアに腕を強引に引っ張られ“痛み”を感じた瞬間、私の疑惑が確信に変わった――。
「ほらエマ、笑えよ!」
「何か言ってごら~ん!」
これは、現実だ――!
つまり、そう、あり得ないけど、多分“過去に戻った”
「はは・・・」
ソフィアに向けられたスマホを見つめ、ぎこちなく笑う私。
「え、きっも!!!」
思いがけない私の行動に私を3人は蔑んだような目を向けた。
もしかして、殺人鬼に殺される前に自死したからだろうか? この森ではそれが許されないのかもしれない。
「キラーハウスの中に入ってみたいと思いま~す!」
でも今、この3人の命握っているのは“私”だ――。
このままキラーハウスの中に入れば殺人鬼に目を付けられて3人の“死”は確定だ。
廃墟を進み、私をロープで縛るまで大体30分。
(・・・どうする?)
迷う必要なんてない。
「ここに入っちゃだめ。帰ろう」
私達はまだ“生きて帰れる段階”にいる。
あの男に見つかる前に、ここを出ないと。
「はぁ?お前、誰に指図してんの~?」
でも、この3人に私の思いが伝わるわけもなく、強引にキラーハウスの中へ連れていかれそうになる。
「本当に!ここは危険なんだってば!」
それでも必死に抵抗する私。 精一杯足に力を入れてその場に踏みとどまる。
あんた達のことは心底嫌いだけど、殺される未来を知っている以上、見殺しにはできない。
「何?今日のエマめっちゃ反抗的じゃん!」
「撮り高撮り高~!」
――やっぱり、何を言っても駄目か。
まぁこの3人は未来を知らないわけだし。 まさか自分達がチェーンソーで殺される、だなんて1ミリも思わないだろう。事実を話したところで「キモい」と笑われるだけ。
(じゃあ、どうしたらいいの?)
また、同じ未来を歩む?
私があの殺人鬼に殺されれば、時間が戻るのだろうか。
男の趣味は私がよく分かっている。 見つかったら、全速力で、悲鳴をあげながら、死にもの狂いで逃げればいい。演技でもいい。
そうすればあいつは私を殺しにくる。
引き返すことができないのなら、別のルートに進むまでだ。
「・・・どうなっても知らないから」
「ねぇ、まじで今日のエマキモくない?」
「きゃはは!何か乗り移った!?」
ここは“キラーハウス” 足を踏む入れた人間は“絶対に”生きて帰ることができない。“逃げる”と言う選択肢は端から存在しないのだ。
私は自死したことによって例外の道を進んでしまった。 殺人鬼に殺されなかった場合はどうやら“やり直し”になるようだ。




