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死のルート

――翌朝――


 薄っすらと目を開けると、あの男が視界に映った。

 何も言葉が出てこない私に男は斧を見せつける。

 寝ている間に殺してくれるほど、優しくはないか。


「――っ」

 

 起き上がろうと両手に力を入れた瞬間、全身に激痛が走る。 あぁ、想像以上に大怪我をしたようだ。


「はは・・・」


 つい、笑ってしまう。

 この不利な状況を脱するにはどうしたらいいのか。今の私には考える余裕もなかった。


 男は斧の刃先を私の額に当てながら笑っている。 “殺気”は感じないから遊んでいるだけだろう。


「・・・ちゃんと逃げるから」


 痛みに堪えながらやっとの思いで起き上がる。

 派手に転んだせいで服の損傷も激しかった。

 露出している部分は擦り傷だらけで見苦しく、両方の膝からは大量の血が滲み出ていた。

胸の痛みも未だに収まらない。

 水や包帯が欲しいけど、今は服も必要だ。


 何とか立ち上がることができた私は足を引きずりながらゆっくりと歩き始める。


 もう何も考えたくない――。


「次、追い付いたら殺す」


 背中に突き刺さる男の声。

 男は何度も私を殺し損ねているから、そろそろ限界なのだろう。

 だけど、中々殺してはくれないのは何故――?


 あぁそっか、最初から私だけ嬲り殺す予定だったんだ。

 だってここは“キラーハウス” 無法地帯のこの場所に足を踏み入れてしまったその瞬間に、私の運命は決められた。


 仮に殺人鬼から逃げ切れたとしても待っているのは地獄の日々。

 ミア、アイビー、ソフィアはどこにいる? どうして私だけが帰ってこれた?

 責め立てられる未来しか見えない――。

 私には遠くへ引っ越すお金もない。頼れる家族もいない。


 終わりだ―――。

 

 ここへ来る前に、私は無知な3人に助言をしていた。 キラーハウスの恐ろしさを伝えたつもりだった。私はここについて調べていた時期があったから、誰よりも詳しかったのだ。

それなのに3人は全く聞く耳を持たなかった。 だから死んだのは自業自得。


 あの時のミア、必死だったなぁ。アイビーの悲鳴も凄かった。ソフィアはどんなふうに死んだのだろう。


 ここへは無理やり連れて来られたけど私は1人でも来ていたと思う。


 私は精神疾患を患う、自殺志願者だから――。





――2時間後――


 遠くの方から私をおとりに使ったあの女の叫び声が聞こえた。


 私の“死期”ももうすぐだ。

 ジャックに会えなくなるのは寂しいな・・・


 体の感覚が徐々に薄れていくのが分かる。


 とめどなく流れる血。

 地面が赤く染まっていく――。


 自分は今、限りなく“死”に近いところにいるのだろう。


 私は・・・あいつを刺すために使うつもりだった折り畳みナイフを自分に使ってしまった。 最後の力を振り絞り、男からもらったナイフで自分の左手首を深く傷付けた。

 本当は昨日の時点でもう限界だったのだ。

 薬を何日間も服用していなかった私は、すでに気持ちをコントロールできなくなっていた。精一杯我慢していたけど、もう無理だった。

 

 そして気付いたら大量に血が流れていた。 


 これは“自死” 衝動的な行動だった。


 あの男は死体になった私をどう思うのだろう。 生きているうちに殺すべきだったと、後悔するに違いない。


 ――あぁ、今日はここへ来た初日のように曇っている。


「・・・・・・お前」


 静かに近付いてくる男の気配。

 雲が見えなくなったから多分男の影が私を覆っているのだろう。


 息の根が止まる数秒前――・・・


 “殺すなら今だよ”と、必死に伝える。 声を出す力は残っていないから、心の中で思うだけ。


「死んでるのか?」


 最期に見た男の表情は不満そうで、初めて人間味を感じた。

 



 ようやく、この理不尽な世界ともお別れだ。

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