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第6章:奇跡の瞬間

梅雨の晴れ間が訪れた午後、中庭のベンチに腰掛けた二人は静かな時間を共有していた。背後には色とりどりの花壇が広がり、鳥のさえずりが心地よいリズムを刻む。その風景の中で、山田さんがふいに戦後まもない頃に仲間と歌った詩を口ずさみ始めた。細い声ながらもどこか力強く、里美の胸には言葉にならない感動が湧き上がった。

「忘れな草の青い花よ 戦火の夢を呼び起こせ」

里美はその一節を初めて聞いたが、詩の言葉が過去と現在をつなぐ架け橋となっていることを直感した。山田さんの瞳にはかつての少年らしい輝きが宿り、しわ深い顔に若々しい表情がよみがえっていた。二人は言葉を交わさず、ただその詩の余韻を共有し続けた。

帰室後、里美はそっとポケットからスマートフォンを取り出し、その詩を検索して資料をノートに写し取った。次の日には詩の全文を印刷し、額装して山田さんの部屋に飾った。詩の一節がいつでも目に触れることで、山田さんの心に小さな宝石のような光を宿らせたいと考えたからだ。偶然の一瞬がもたらした奇跡は、二人の日常を鮮やかに彩っていった。

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