成長
カイは村を出て、神殿へ向かう山道を進んでいた。
足元の石ころを踏みしめ、周囲の音に耳を澄ませる。
突然、冷たい空気が辺りを包み込んだ。
視界の端に、黒い影が二つ、うごめくのが見えた。
魔物――だがなんだか異形な形をしていた。
少し戸惑っていたら一体がカイに向かって素早く襲いかかる。
カイは急いで剣を抜き、一撃を防いだが、鋭い爪が腕をかすめて鋭い痛みが走る。
続けざまに二体目が側面から切りかかる。
咄嗟に身をかわし、縮地で背後に跳んだ。
「くっ……!」息を整えながら、カイは間合いを見極める。
魔物の動きは俊敏で、攻撃は予測不能だ。
一体が素早く前に飛び出し、爪を振り下ろす。
カイは剣で受け止めながら、反撃の機会を探る。
「ここだ!」縮地で一気に距離を詰め、背後から斬りつけた。
一太刀で一体が崩れ落ちる。
「やっぱり、縮地の後が特にやけに攻撃力が高い気がするな。」
そう考えていると、残る一体は怒り狂ったように咆哮し、猛攻をかけてくる。
カイは幾度も攻撃を防ぎ、何とか間合いを取ろうとするが、徐々に疲労が募る。
「負けられない……!」
カイは全神経を研ぎ澄ました。
魔物の鋭い爪と剣がぶつかりそのまま押し込んだ。その魔物は少し体制を崩して距離を取る。だが俺はその隙を見逃さなかった。
再び縮地を使い一瞬で相手の懐に入り込む。
振り下ろした剣が魔物の頭部を捉えた。
息を切らしながら剣を鞘に収める。
「ふぅ……なんとか……」
その時、遠くから荷車を引く商人が現れた。
「おや、そこで何をしておる?」
商人はカイの剣に目を向け、声をかけた。
「おお、これは珍しい。そなたが倒したのは“グリムバイト”の亜種じゃな。危険度は中とされておって単独で仕留めるとは。さては中々の実力者じゃな?」
カイは息を整えながら訊いた。
「いや、俺はまだ初級冒険者なのですが、、そんなに強い魔物だったんですか?」
商人は頷いた。
「動きも荒々しく、一撃の威力も高い。初級冒険者が一人で倒すのはかなり難しい相手のはずじゃが」
カイは自分の成長に思いを馳せつつ答えた。
「そこまで強くなれたか……」
商人は笑みを浮かべた。
「中級に上がるのも、そう遠くはないかもしれんぞ」
カイは軽く頷いた。
「いえ、まだまだ強くならないと……」
商人はにこやかに言った。
「ほほ、まだ強さを求めるとはな。頼もしい、機会があればうちで雇おうかの」
「いや、そんな、、」
「冗談じゃよ、そなたにはなにか目標があるのであろう。」
そう言って商人は荷車を押してそのままゆっくり去っていった。
『縮地 Lv.3』
「んー、やっぱり普通だよなー。なんなんだあの感覚は」
カイは疑問に思いながらも再び神殿を目指し歩き出した。
まだ遠いかの神殿の塔を目指して。




