更なる強さへ
「……はぁ、はぁ……助かった……」
全身が汗で濡れている。さっきまでの光景がまだ頭から離れない。
白い空間、あの声。
「強くなれ……か」
思い出すたびに胸の奥が妙に熱くなる。恐怖じゃない。どこか、嬉しいとすら思っている自分がいる。
――なぜだ?俺は、怖くないのか?
神と対面したんだぞ。本来なら膝が震えて動けなくなるはずだ。それなのに……胸の奥が、妙に高鳴っている。
「……気のせいだ」
首を振って気持ちを切り替える。だが、どうにも落ち着かない。
とりあえず、今は――力を試したい。
周囲を見渡すと、少し離れた森の奥で獣の唸り声が聞こえた。
「ちょうどいい」
剣を握り、気配の方へ歩き出す。
現れたのは大型の魔物――オーガ。
身の丈は二メートルを超え、棍棒のような腕を振り回している。以前なら間違いなく避けていた相手だ。
「……どうなるか、試してやる」
オーガが咆哮し、巨腕を振り下ろす。
だが――
遅い。
まるで時間が止まったかのように、すべてが緩慢に見えた。
『縮地』
気づけば、俺はオーガの背後に立っていた。
「……終わりだ」
振り向きざまに一閃。
ズバァッッ――!
次の瞬間、オーガの首が宙を舞った。
一呼吸もかからなかった。
「……今の、俺なのか?」
自分の動きが理解できない。縮地を使ったとはいえ、速すぎる。
衝撃波を試そうとしたが――試すまでもなかった。
強い。あまりにも。
だが、そこでふと気づく。
さっきの盗賊たちを殺した時よりも――血の匂いに何も感じない。
吐き気もしない。手の震えもない。
あるのは、ただ――興奮だけ。
「……はは」
笑みが漏れた。自分でも、ゾッとするほど自然に。
死体をそのままに、森を抜ける。
「次はギルドか……」
だが、その前に――頭の奥に、あの声が残っている。
『強くなれ。敵なしと為れ』
耳に残るその響きが、まるで呪いのように消えない。
――それがこの先、俺をどこへ導くのか、この時の俺はまだ知らなかった。
その頃、別の場所では――
「カルヴァン、見ただろう?」
「ああ、見た……完全に“始まった”な」
「ふふ、面白くなるよ。ねぇ、アゼル?」
「ん、今度はもっと面白くなる」
白い空間で、三つの声が静かに笑っていた。
今日は少し用事があって遅れてしまい申し訳ないです
明日からはちゃんと夕方までには投稿しますのでお待ちください




