神殿
すっかり目が冴えてしまった俺は、まだ夜明け前だったが遺跡の中へ足を踏み入れることにした。
ランプに火を灯し、薄暗い石の道を進む。
湿った空気が肺にまとわりつき、足音だけがやけに響く。壁には古代文字のようなものが刻まれているが、読めるはずもない。
ただ……その文字の並びが、何かをこちらに見つめているような感覚がしてならなかった。
一本道は、異様なまでに長かった。歩いても歩いても同じ光景が続き、やがて道は人ひとりがやっと通れるほどの幅に狭まる。
背後を振り返っても暗闇しかなく、出口が本当にあるのかさえ疑わしくなる。
——息が苦しい。いや、違う。圧迫されているんだ。
壁が、天井が、音もなく迫ってくる錯覚に、思わず足が止まる。
その瞬間——道が開けた。
あまりに唐突に、目の前に広がったのは巨大な広間だった。
さっきまでの閉塞感が嘘のようだ……いや、嘘であってほしい。
広すぎる。馬鹿げた広さだ。クリスタルウルフが五体は並べそうな空間が、ただ沈黙に沈んでいる。
正面に石の神棚。そして、その奥に立つ七体の石像。
……七神。世界を創った存在とされる七柱。
だが、ここにあるのはただの像。そう思った瞬間だった。
——視界が、歪む。
「ッ……な、なんだ……」
立ち直ろうとしたが、全身の力が抜ける。耳鳴りがして、目の前の光景が遠ざかっていく。
——暗闇。音が消える。
そして、白。
ああ、ここが天国か。あのまま魔物に殺られたのか
もう少し長く生きていたかったな、、、、
「ははは、一人で勝手に死なないでよね」
後ろから少年の声がする。後ろを振り向いたがそこには誰もいない。
「こっちだよ、こっち」
また後ろから声が聞こえる。だが振り向いても誰もいない。
なんなんだ、ここは
「ふふ、アゼル、悪ふざけしすぎよ」
今度は上から少女の声がする。目を向けるとそこには真っ白な少女がいた。
周りの白と同化してあまりハッキリと姿が見えない
「お前たちは何者だ、どうして俺をここへ連れてきた」
「はは、焦っちゃダメだよ」
「そうそう、焦っちゃだめだよ」
「俺は死んだのか?何があったんだ?」
「ふふ、さっきも言ったけど勝手に死なないでよ、面白い冗談だけどね」
「はは、実は自殺願望だったりして」
「ふふ、それは困るのよ」
さっきからこいつらの声はなんだか頭がフワフワして考えが纏まらない。上手く思考出来ない。
「はは、そろそろ教えてあげようか」
「ふふ、そうね」
か」
——空気が変わった。
白が、暗転する。底知れぬ闇に飲み込まれ、息が詰まる。
二人の輪郭が、ゆっくりとこちらに寄ってくる。
心臓が潰れそうだ。
逃げられない。足が動かない。
動いたところで、無意味だと分かる。
二つの声が、重なった。
「「汝は——ただ強くなれ」」
「「この世界で、敵なき者となれ」」
「「考えるな、疑うな、ただ——強く」」
頭が焼けるように熱い。声が、脳を、骨を、血を、支配する。
抗えない。抗うという概念が、消えていく。
——そして、闇。
目を開けると、神棚の前に突っ伏していた。
「……ッ、はぁ、はぁ……」
全身が汗で濡れている。心臓が痛いほど暴れている。
「あれは……何だったんだ……」
神だ。間違いない。あれは人間じゃない。理解してはいけない存在。
そして、神託。
「……強くなれ、か。どんな抽象的な神託だよ……」
ゴゴゴゴゴゴ
そんな凄まじい音と共に石像は崩れ始め、部屋が塞がり始める。
まずい、早く出ないと下敷きになる。
急いで俺は神殿から出る。
俺の通ってきた道は来た時より目で見て分かる程に短くなっていたおかげで2分程度で神殿を出ることが出来た。
出た瞬間一気に神殿が潰れる。そして地面に溶けていく。まるで元々何も無かったかのように




