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悪役令嬢と呼ばれる前に退場します

作者: こうじ
掲載日:2025/07/01

「聞いたか? クロス公爵家が取り潰しになるらしいぞ」


「マジか!? 公爵家が取り潰しになる事もあるんだな」


「なんせ好き勝手やってきたんだから当然の報いだよな」


「そういえば公爵て再婚してからおかしくなったんだよな」


「そうそう、前の奥さんは社交界では評判が良かったそうだけど夫婦仲は余り良くなかったらしい」


「貴族の結婚は政略が当たり前だもんな、でも娘がいるだろ?」


「あぁ、でも前の奥さんが病気で亡くなったと同時に娘は公爵家からいなくなったらしい」


「家出か?」


「どうも再婚相手と合わなかったらしい、手紙だけ残して姿を消して行方知れずだそうだ」


「そっか〜、どっかで無事に生きていれば良いんだけどなぁ」


 お客さん達のそんな話を聞きながら私セレスは厨房でコーヒーを淹れていた。


 ここは王都の路地裏にある喫茶店『宿り木』、数年前に私が開いたお店だ。


 お店のお客さんは大体平民がメイン、偶に貴族のお屋敷で働いている人達もやって来る。


 そして耳に入ってくるのは貴族の噂話、平民の耳に入ってくるという事は概ね事実である事が多い。


 貴族内でのトラブルは基本平民の耳に入る事はない、入って来た時は騒動が終わった時だ。


 だから私の実家であるクロス公爵家が取り潰しになるのは事実だろう。


 まぁ、既に出て来た身なので関係無い。


 そう、先程話が出ていた家出した公爵令嬢というのは私の事だ。


 私が家出をした理由は大体合ってる。


 そもそも両親は仮面夫婦でその仲は冷え切っていた。


 私は幼い頃からその空気感を感じていたので窮屈さを感じた。


 私が産まれてからは元父は家に帰ってくる事は無いしお母様は社交界に参加して私は放置されていた。


 唯一の救いは使用人達が優しくしてくれた事だ。


 その中にお茶を淹れるのが凄く上手い女性がいてその人からお茶の淹れ方を習った。


 お湯の温度とか茶葉の種類とかを色々習った。


 その使用人のおかげでこうしてお店を営んでいるんだから本当に感謝している。


 転機となったのはお母様が病気で倒れそのまま亡くなってしまった事。


 元父は葬儀後に再婚を宣言し浮気相手とその娘を勝手に家に呼んだ。


 その瞬間、『逃げよう』と決めた。


 というのは参加していたお茶会で友人の令嬢が父親が再婚して居場所が無くなってキツイ、みたいな話を愚痴っていたのだ。


 私も似たような事になる、と感じた私は荷物を纏めさっさと家を出て行った。


『新しい家族に私は邪魔になりそうなので遠くに行きます』と置き手紙を残した。


 そして、頼ったのは使用人の実家だった。


 家出する事を使用人達に伝えたら『是非我が家に』と申し出があったので好意に甘えて身を寄せる事にした。


 その家の人達も嫌な顔をせずに私を歓迎してくれて初めて家族の温もりを感じた。


 最初の1年は絶対に見つからないようにコソコソと息を殺して生きていた。


 この国の法律で令嬢や令息が失踪した場合、1年経過しても見つからなかった場合、自動的に籍が抜かれる。


 つまり1年経てば私は公爵令嬢では無くなりただのセレスになる。


 そして、家出してから1年後私は貴族では無くなった。


 そこからは堂々と行動して食堂で働き始め自分の店を出す為の資金を貯めた。


 そして、この店を開店したのは2年前、私が家出してから既に5年が経過した。


 家出したのが13歳だったから今は18歳だ。


 勿論、貴族学院に通う事は無かったしかつての友人達と顔を合わす事もなかった。


 後から聞いた話なんだけどどうやら私と王太子の婚約の話が出ていたらしい。


 まぁ私がいなくなった事で自然消滅してしまったけどその際に元父は連れ子を婚約者に!と宣ったらしい。


 当然却下された挙句国王様の信頼も低下したそうで公爵家の家勢もその頃から勢い良く下っていたのかもしれない。


 更にだけど王太子、性格的に問題があったそうでつい最近王太子の座を剥奪され幽閉された、と聞いた。


 いくら王族でも素行が悪ければ……、ねぇ。


 そんな相手と婚約の話が進んでいたのか、と思うと家出して正解だったと思う。


 



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