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【ホラー 怪異以外】

あの子が可哀想だ

作者: 小雨川蛙
掲載日:2025/04/04

 

 あの子が可哀想だ。

 生まれる前に父親が離婚して出て行った。

 生まれた直後に母親はそのまま死んでしまった。

 生まれた頃から独りっきり。

 あの子が本当に可哀想だ。


 あの子が可哀想だ。

 親が居なくて独りきり。

 友達も出来ずに独りきり。

 いつも宙を向いて独り言。

 あの子が本当に可哀想だ。


 あの子が可哀想だ。

 独り言を言っていることを面白がられ、同級生に虐められ。

 抵抗しないから殴られ、蹴られ。

 だけど、翌日には同級生は皆、死んで。

 気味悪がられて独りきり。

 あの子が本当に可哀想だ。


 あの子が可哀想だ。

 口を開けば「お母さん、お母さん」

 もうとっくに死んでいるのに繰り返す。

「お母さん、お母さん」

 頭が狂ってしまったのだと言われている。

 あの子が本当に可哀想だ。


 あの子は可哀想だ。

 嫌がっていたのに偉いお坊さんの前に連れられて行き。

 お坊さんはあの子の言い分を何一つ聞きもせずに。

「この子の母親が悪霊となりこの子にとりついている」

 だから、不幸と決めつけて。

 勝手にお祓いをしてあの子から全てを奪った。

 あの子が本当に可哀想だ。


 あの子が可哀想だ。

 何を言われても無視をして。

 宙に向かって言い続ける。

「お母さん。お母さん」

 誰も答えてくれないのに言い続ける。

 あの子が可哀想で仕方ない。


 偉いお坊さんは子供を救ったと満足気に語っている。

 曰く、悪しき霊にとりつかれたままでは必ず死に至るから、これが最善なのだと断言する。

 確かにそうなのかもしれない。

 だけど、私はあの子が可哀想で仕方ない。

 今日も空を見つめて母を求めるあの子が。


 偉いお坊さんはあの子の予後を気にしたりしない。

 いや、誰だってあの子の予後を考えたりしない。

 だから、あの子は今日も独りきりだ。


 あぁ、あの子が可哀想だ。


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