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8. 最大の難関:喪女とお嬢さまの奮闘

この二人…とても仲よしです。

でも冷静に考えれば、一人の男性を二人で共有…ってことには気づかないフリをしてください!




 自分のせいだとは言え、発覚した事実は現実としてわたしとオリビアの前に立ちはだかってしまった。夜の夫婦生活についてオリビアは何も知らない...純粋無垢なままなのだ。言葉にした以上、忘れることはできないし、避けるのも不自然だ。だからと言って、喪女に閨の教育はハードル高すぎます!!!困った...困った...コレはまさしく言わなきゃよかった発言ナンバーワンだ。


 「頼子姉さま、あの...」


 オリビアが遠慮がちに沈黙を破った。


 「わたくし、閨の教育は教育係のご婦人から受けております。」


 「そうだろうって思ってたわ。でもね、オリビア。’旦那さまにお任せしなさい’というのは、教育とは言わないのよ。」


 オリビアの顔は真っ赤だ。たぶん、わたしも。


 「いえ...もう少し詳しく習っております。痛みを伴うことも、香油を使ってその痛みを和らげる方法があることも。」


 「うん。じゃぁオリビア、その香油をどこにどうやって使うかまでは習ったのかしら?」


 責めてるわけじゃないの。でも、どれくらい具体的に知っているのかは本当に聞かなきゃわからないでしょ?こんなことを話していると、なんだかオリビアの真っ白な心を悪い色に染めていくみたいで、とんでもなく居心地が悪い。


 「それは…」


 オリビアが言葉につまる。


 「そうよね…そうなのよね。」


 今のオリビアは夫婦の営みを経験しているのだから、いまさら閨の教育を受けるのはおかしい。かと言って、ほとんどわからない状態でいきなりジオと実践というわけにはいかないだろう。だとすると、やっぱり…必然的に…選択肢は限られてしまうわけで…。気づきたくないけれど、逃げてはいけない現実が目の前で大きく手を振っている。


 「オリビアは、どう思っているの?」


 身体は経験してしまっているけれど、オリビア自身にどんな認識があるのかはわからない。


 「ジオと肌を合わせること…できると思う?」


 正直に言えば、ジオとの夜はとても魅惑的だ。この上なく甘やかされるうえに、初めての夜から変わらず優しく触れてくれる。不安を敏感に感じ取って、その思いごと受け止めて包んでくれる。これ以上の経験は必要ないだろうというくらいしあわせを実感できるし、ジオ以上に優しい人はいないだろうと思えるほど愛されていることも実感できる。


 「今でも、ジオが怖い?」


 いつだったかに、オリビアがどうして‘魂の召喚’をしたのか理由を説明してくれた時に教えてくれた。ジオの噂とオリビアのなかにあった不安。人となりを知ることなく結婚することへの戸惑いは、噂の存在を必要以上に肥大させ、抵抗感をうんだ。正直に頼子が請け負ってくれたことに感謝しかないことを打ち明けられ、とても複雑な気持ちになった。


 「今は、ジオさまに恐怖心はありません。むしろ、尊敬しています。」


 オリビアの声は少し震えていたけれど、嘘を言っているようには聞こえなかった。


 「身も蓋もない話になってしまうけれど、あなたの身体はもうジオにならされていて、女性としての喜びを知っているわ。だから、痛みより…その…快感のほうが強い…と思うの。」


 言葉にするって難しい。性教育は照れたらダメって聞いたことあるけど、これを照れずにするって、どんだけハードル高いんですかっ!相手は生粋のお嬢さまとか、もう勘弁して~。


 「ジオさまを受け入れることはできる身体になっているということですか?」


 オリビアだって、頑張ってくれているの!だから、わたしもちゃんとしなきゃ!! 


 「受け入れるという意味で、あなたの身体は大丈夫だと保証してあげられるわ。でもね…」


 シタことないお嬢さまにジオのあの姿は刺激が強すぎるのではないか…と尋ねてみたいが言葉にできない。どう表現したらいいか迷ってしまう。オリビアはわたしが続けるであろう言葉を待っているのだが、なんといえばいいかわからない。


 「オリビアは…その…男性と女性の身体の違いは理解している?」


 「たぶん、存じ上げていると思います。」


 ココ、重要ポイント。知っているならありがたい。だって言わなくていいんでしょ?


 「じゃぁ、夫婦の営みがどう行われるかはわかる?」


 オリビアの顔が瞬時に赤くなる。


 ”あっ、コレ知ってる顔…かも。”


 照れるオリビアに申し訳ないと思いながら、口頭で説明しなくてもいいかと思うとホッとした。


 「受け入れるって話したけど、何をどこに受け入れるかってことまでわかっているかしら?」


 うわぁぁぁぁ~。具体的な表現をあえて言わないってかえって卑猥に聞こえるのか?変な要素入ってないよね??


 「たぶん、理解できていると思います。」


 かなり…かなり小さな声だけれど、オリビアが肯定してくれた。よしっ!何とかなるか?


 「そこまで理解できているなら、オリビアがちゃんとジオと夫婦になれるように考えたほうがいいと…わたしは思うのだけれど…」


 


 『エッチなんて、気持ちがそこにあってお互いを思いあえば自然と起こりうることなのよ。頼子は頭でっかちに考えすぎなのっ!無駄にハードル上げないで、好きだって思ったらその人の胸に飛び込んじゃいな。その先は、本能が知っているから。』



 ふいに前世で和美が言った言葉を思い出した。いつだったかに恋愛に飛び込めない臆病な自分が嫌いだとへこんだ夜に言われたことだった。そうだ、説明しようとするから難しくなるんだ。


 「オリビア、心を決めて。ジオはオリビアを愛しているわ。あとはあなたがジオを愛せるかだと思う。」


 気が付くと照れくささはどこかへいって、真剣な声でオリビアに話しかけていた。大事なのはオリビアの気持ちだ。それ以外は、とうにすべてが整っているのだから。


>>>>>>>>>>>>>>><<<<<<<<<<<<<<<

 

 オリビアの気持ちを確認してから、彼女の決断までは時間はかからなかった。彼女自身がジオに対して恐怖心がなくなっていることを自覚したのだから、あとはほんの少しの勇気ときっかけが必要なだけだった。


 「頼子姉さま、わたくし頑張ってみようと思います。」


 オリビアが決意した夜、頼子はジオが寝室に来るであろう頃を見計らってオリビアと交代することにした。本来ならこの日がオリビアの初夜…になるはずだった。

 でも、結果から言えば、’オリビアが初夜を迎えること’は簡単にはいかなかった。

 

 決意した夜、オリビアはジオの口づけに驚いてそのまま意識をなくしてしまったのだ。夜がはじまって早々にオリビアの身体には頼子の意識が戻り、その夜はいつものように頼子がジオとの愛を交わした。


 お嬢さまにとっては刺激が強すぎるのか、オリビアに免疫がなさすぎるのか…。とにかくオリビアにとっての‘口づけだけの夜’は何度か幾夜か繰り返された。ようやくオリビアがキスで気絶しないでいられるようになったのは、決意の初夜から数週間も過ぎてからだった。

 けれど、ひとたび口づけに’情熱的な’という形容詞がついたとたん、またもやオリビア気絶の夜は続いてしまった。ひょっとしたら頼子という逃げ道が常に用意されているのがいけないのかもしれないが、とにかく’本当の初夜’はなかなか迎えることができないでいた。


>>>>>>>>>>>>>>><<<<<<<<<<<<<<<


 頼子のなかではシンプルなことだったが、オリビアが頼子と同じように考えるわけでも感じるわけでもない。そもそも二人は別の人間なのだから、それは当然のことだろう。状況打破のためどうしたものかと真剣に悩み始めたころ、頼子は日記の中にオリビアの気持ちをみつけた。


 ’ジオさまが好きだという気持ちに嘘はないけれど、どうしても不安が消えないのです。頼子姉さま、この不安はどうしたら消すことができるのでしょう。’


 ジオのことが好きだからこその不安なのかもしれない。すべてを委ねることに漠然と不安を感じることはわからなくもない。無防備にすべてをさらすことができず、’できない’という実績だけができてしまった。逆にそれが変なプレッシャーになっているのかもしれない。オリビアも考えすぎるタイプだ。それに気づいて思わず苦笑いした。


 「ねぇオリビア、ジオを愛している?」


 いつもより少し真剣な声で聞いてみる。


 「夫として、ジオを支えて愛したいと思える?」


 オリビアの本音を探るように、正直な気持ちに気づいてほしくて尋ねる。


 「ジオさまのこと…お慕いしています。」


 一瞬でも疑うことなくオリビアが自分の気持ちを即答する。


 「わたしがあなたの中にいることが不安だったりする?」


 初めてオリビアと体験を共有していると知らされたときの戸惑いを思い出した。


 「考えたこと…ありませんでした。」


 オリビアは真面目だし優しい。無意識に意識下の中にいる自分の存在に抵抗を感じるのかもしれない。自分以外の人間がいるとわかっていて、無防備に裸はさらせないだろう。ジオに抱かれるということは、心にも身体にもなにも纏わない状態…裸になるということなのだから。


 「約束する。わたしは…わたしの意識は存在しない状態にしておくわ。完全な交代の状態で今度は夜を迎えて。交代も無理。ジオを愛しているのでしょう?」


 「はい。」


 「その気持ちがあれば絶対に大丈夫よ。きっと、ジオがあなたの不安を溶かしてくれる。わたしも…わたしだって怖かったわ。初めての夜は不安だった。でもね、ジオはそんなわたしの気持ちもすべて包み込んで愛してくれた。それが幸せだって教えてくれたの。だから、大丈夫。ジオを信じてあげて。」


 前世の和美の言葉の受け売りだけど、この言葉が一番ふさわしい気がした。


 「肌を合わせるってことは、愛しい気持ちがそこにあってお互いを思いあえば自然と起こりうることなの。好きだって思ったらその人の胸に飛び込んでしまえばいいのよ。その先は、本能が知っているから。」


 ここまで告げて大切なことに気づく。 


 「ジオを愛すること、ジオに愛されることは、この先の未来へ命をつなぐ大切な儀式だわ。」


 そして、その未来に自分がいないことも…頼子はそう告げた瞬間に理解した。

 

ムチャブリ設定をしたのはわたしですが、冷静になると「何てことしてるんですかっ!」と手厳しく自身を責める声が聞こえてきます…自分の中の葛藤が恐ろしいことになっているので何とか平和的解決をしたいデス。頑張ります。

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