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愛が重いだけじゃ信用できませんか?  作者: 歩く魚
第3章

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打ち上げ

「かんぱ〜い!」


 三つのグラスが音を立ててぶつかる。

 新しいメンバーの加入祝いということで、俺と七緒、そして紫の三人で居酒屋に来ていた。

 とはいえ、もちろん全員未成年のため酒はなしだ。


「無事に達成できてよかったな」

「そうですね。良かったですね、音羽さん」

「ん。俳句で褒めてくれてありがと」


 対面に座る二人の仲は、心なしか以前より良好に見える。

 先ほどどちらが俺の隣に座るかという無益な争いが繰り広げられていたが、もはやこれはお約束ということで気にしないことにした。


「三人目……四人目のサークルメンバーか。うちも増えてきたな」


 元々が二人だったし、紫が入って四人。つまり倍だ。

 一瞬、楽人のことを忘れて三人目とカウントしそうになってしまった。ごめんな楽人。


「何人くらいまで増やす予定なんですか? 十人ですか? 音楽家とかほしいですよね」

「別に俺たちは海に出るわけじゃないから。もう増えなくていいかな」

「そう? 私はもう一人くらいいても良いと思うけど。具体的にはネットに強かったり、私と古庵くんがイチャイチャしてる間に依頼を解決してくれる人とか」

「逆に俺がサボってる間に二人で解決してきてくれ」


 それか俺一人でも良い。

 他に動ける人間がいるとどうにも本領を発揮できないということに最近気付いた。

 きっと気が締まらないんだろうな。


「そういえば、優勝したからデートできるって覚えてるよね?」


 小悪魔のような笑みを浮かべて紫が問う。


 「……すっかり忘れてた。この前デートしたし、あれじゃダメか?」


 この前というのはもちろん、七緒と紫が互いに時間内でのデート内容を競ったアレだ。


「短期間のうちに何度もっていうのも味気ないし、ここは一つ――」

「もちろん朝から一日空けてくれるんだよね? 信じてるから」

「あ……はい」


 机の下にある紫の細い脚が、俺のに絡みついてくる。

 絡みつくというか、圧死させようとしている。痛い。


「私とはデートしてくれないんですか? あんなに頑張ったのにぃ」

「七緒は二人の精神を破壊しただけだろ。この間ので我慢してくれ」

「ちっ」


 乾いた舌打ちとともに肉感のある脚先が、もう片方の俺の足に這わせられる。

 先に触れてきたそれとは違った面でまた女性的だ。


「失礼なこと考えてますよね?」

「いや、そんなことない」

「細いだけが良いとは限らないんですよ」


 知ってる。


「ねえ、せっかくだしさ……」

「…………いいですね」


 二人がコソコソと何かを話している。

 どうせろくな内容じゃない。

 そんなことを考えていると、密談を終えた二人のうち、七緒がゆっくりと立ち上がって俺の隣に座った。


「急に鏡の世界に入っちゃったか? なら俺が反対側に行かないと」

「鏡の世界なんてありませんよ。ファンタジーじゃないんですから」

「じゃあ、ここに座った意図を聞かせてくれ」

「二人とも古庵くんの隣に行きたいだけだよ」


 驚いて反対側を見てみると、対面に座っていた紫が真横に。


「お前……下から来たな?」

「うん。厚底履いてるから進むの大変だった」

「そういう情報はいらない」


 この居酒屋の席は掘り炬燵のようになっているから、一応下を通って向かいに行くことができる。

 一応というのは、わざわざ二十近くにもなってそんな馬鹿なことをするやつがいるとは思わないからだ。

 また、客に快適な時間を過ごしてほしいからか半個室になっている。

 大変ありがたい配慮だが、今この状況においては俺の逃げ場をなくしていた。


「しばらく注文も来ませんし、二人で先輩を堪能しましょうか」

「俺を食べ物みたいに言わないでくれ」

「蹴落とし合うって無益なことなんだね。よく分かった」


 俺を踏み台にして精神的成長を遂げているようだ。

 二人が潰しあって共倒れしてくれることを望んでいたが、まさか仲良く半分この道を選ぶとは。

 もしかすると、俺の読みは大外れで自ら袋の鼠に追い込まれている?


「残念ながらその通りです。あむっ」

「お、おいっ!?」


 七緒はおもむろに俺の耳を甘噛みし始めた。

 振り解こうにも腕が胸や太ももにがっちり捕まっていて動かせない。

 重量のある胸や柔らかい脚の間の圧を感じながら、なぜ耳を愛撫されているのか疑問に思う。


「私は古庵くん成分を摂取しないと」


 同じように腕をホールドされていて、紫はこちらに頭を擦り付けてくる。


「あのな、服に香水の匂いが」

「マーキングマーキング」

「あ、そう……」


 両腕は固められてしまっているし、左耳はくすぐったい。

 右胸のあたりには鈍い圧がかかっている。

 もう二人に何を言ってもダメそうだ。

 無事に動かすことのできる両足を動かしてもせいぜい直角を作ることくらいしかできないし、諦めてされるがままになろう。

 ちなみにその後、店員が注文を持ってくるのを察知すると二人は急いで元の席に戻り、また何事もなかったかのようにこちらへ侵攻してきた。

 これに関しては示し合わせている感じはしなかったし、やはり息が合ってきている気がする。

 俺の目論見が自分の首を絞めているかどうか、それがわかる未来はそう遠くなさそうだ。

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