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愛が重いだけじゃ信用できませんか?  作者: 歩く魚
第3章

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BOSS

 長かったメイド合戦もいよいよ大詰め。

 満を持して登場するのはあの人物。

 そう――。


「待たせたな!」


 西堂凛である!


「うおー! 頑張ってくださいー!」


 坊主もめちゃくちゃ声を張って応援している。

 だが、彼の熱意とは裏腹にこちらの期待値は低い。


「なんていうか、西堂先輩が俺たちに優しくしてくれる気がしないよな」

「優しいことは優しいだろ。でも言いたいことはわかるぜ」


 こんな感じである。俺も同感だがな。


「まぁまぁ、私も色々考えておいた。大船に乗ったつもりでくつろいでくれ」


 もう不安だ。

 凛は俺たちの目の前に立つと、勇ましく胸を張って口を開く。


「お前たち、いや主よ。まずは注文から取るのだと、そう思ったな?」


 皆一様に頷く。

 堂々と胸を張るのはいいが目に毒だ。


「甘い、甘すぎる! 私はメイド。メイドとは、家庭内の家事やら何やらを完遂するエキスパート! そのメイドが、主の健康管理を怠るとでも?」

「はっ! ま、まさかっ!」


 今のは俺たちじゃなくて坊主の合いの手だ。


「そう! 私がお前たちの健康状態を加味したメニューを提供してやろう! まずは団子頭!」

「俺ですか!?」


 さすがの楽人も凛相手には腰が引けている。

 だが、彼女はそんなこともお構いなしに言葉を続けていく。


「お前は見たところ身体の疲労が残っているようだな! ……ふむ、おそらくスポーツのやり過ぎだろう」

「なぜそれがっ!? 確かに最近は練習漬けで……」

「そんなお前におすすめなのがこれだ!」


 坊主が颯爽と現れて凛に何かを手渡す。


「こ、これは――!」

「レモンの砂糖漬けだ! クエン酸によってスポーツで疲れた身体を癒やせ!」


 ということでまずは一品が置かれる。

 すごいな。メイドが用意するのではなく用意させる。

 坊主はどの立ち位置なんだ。


「次にアシンメトリー!」

「……は俺ですね。はい!」


 次は蓮だ。

 なぜ名前ではなく髪型で呼ぶのだろう。

 もしかして人間は全員同じ顔で見えていて、特徴で見分けているのか?


「お前は睡眠不足だ! 理由はそう……恋の悩みとかそういうやつ!」

「ど、どうして分かったんですか!?」

「ま、まぁ……なんだ、メイドの経験というやつだ!」


 この反応、絶対適当に言っただろ。

 それが偶然当たってしまったから彼女も驚いているのだ。


「た、確かに俺は最近気になる子ができて夜中まで悩んでいますが……さすが校内一の有名人だぜ」

「そんなお前におすすめなのが……これだ!」

「こ、これはっ――!」


 睡眠不足の蓮に最適な食べ物、それは……。


「レモンの砂糖漬けだ!」

「おおっ!」


 いや同じかい。

 蓮も初見みたいな対応をしているが、内心同じことを思っているだろう。


「寝不足の身体にはクエン酸が効く! これで身体を癒すと良い!」


 あれか、セリフのテンプレートとかあるのか?

 この調子だと俺もスライスされたレモンを食べることになりそうだ。


「そして瑠凪、お前は……」

「なんですか?」

「見たところ精神的に疲れているようだな」

「まぁ、確かに……」


 凛も含めてツッコミっぱなしだし、疲れていると言えばそうなる。


「そんなお前におすすめなのは…………これだ」


 今回は坊主ではなく、自らの足で皿を取ってくる。

 そして、少し緊張したような面持ちでそれを机の上に置いた。


「これは……クッキー?」


 皿一面にレモンが飾られているのかと思ったが、綺麗な小麦色の丸いクッキーが数枚置いてあった。


「脳が疲れた時には糖分を取ると良い。ほら、食べてみろ」

「ありがとうございます。それじゃあ……」


 手前のクッキーをとり、口に運ぶ。


「あ、めちゃくちゃ美味しい」


 シンプルなバタークッキーだが、材料全てが元から一つであったと錯覚するような統一感。

 俺が今まで食べてきたクッキーの中で最高クラスの美味しさだ。

 そんなに批評するほど食べたこともないが。


「そ、そんなに美味しいか?」

「こんなに美味しいクッキー食べたことないです。市販の材料で作ったわけじゃなさそうだし……どこで買ったやつですか?」


 おそらく凛が個人的に用意したものだろう。

 多少値は張りそうだが、また食べたいと思った。

 だから出所を聞いてみたのだが、彼女は頬をかくばかりで一向に教えてくれない。


「いやまぁ、それは企業秘密というか、な?」


 もしかすると、西堂家が次にクッキー界に進出しようとして、その試作品なのかもしれない。

 だとすれば教えられないのも納得だ。


「とにかく、めちゃくちゃ美味しいです。ありがとうございます」

「う、うむ! 瑠凪の口にあったようで嬉しい!」


 後方では坊主がガッツポーツしている。



 こうして凛のターンが終わり、全員のパフォーマンスが終了したことになる。

 俺たちは各々意見を交わしていた。


「予想以上に西堂先輩がよかったよな」

「確かにな。心なしかみんな顔が元気になってる気がするし」

「いや、その理由は多分別にあると思うけど……でも凛先輩は良かったよな」

「あぁ。一つだけ気になることがあるとすれば……」

「なんだなんだ?」

「西堂先輩のはメイドっていうかメイド長……っていうか隊長じゃねぇ?」


 楽人の一言に、俺と蓮は顔を見合わせる。


「「確かに」」

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