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愛が重いだけじゃ信用できませんか?  作者: 歩く魚
第3章

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忘れてた

「おかえりなさい……で、いいんだっけ」


 やはり凛はトリを選んだようだ。

 ということで三人目のメイドさんは紫。

 経験はないはずだが照れもなく、ただ冷静に接客しようとしているようだった。


「今回は俺たちは空気になってるよ。瑠凪、楽しんでくれ」

「こうやってぼーっとしてると、見えるはずのない青空が見えるみたいだ……」


 楽人と蓮は虚空を見つめ、生命活動を停止しているかのように黙りこくってしまった。


「ちゃんと二人とも会話するから」

「…………え? そうなの?」


 困ったような紫の言葉。

 死んでいた目に光が灯る。


「私は真面目に優勝狙ってるからね。それで、注文は?」

「じゃ、じゃあパンケーキにしようかな」

「同じで」

「ん。古庵くんは?」

「俺も同じので頼むよ」

「わかった。ちょっと待っててね」


 ひらりと踵を返して坊主の元へ向かう。

 その姿はキュートなメイドとは言えないが……。


「あれはあれでありだよな……?」

「クールメイド、新しい扉を開いちゃうかもしれない」


 首脳陣の評価も意外と高いようだ。

 もちろん俺も、これまでの二人よりも期待している。


「お待たせ。じゃあそれぞれ絵を描くから、リクエストあったら言ってね。あんまり上手くいく自信ないけど」

「サッカーボールがいいです!」


 楽人のリクエストはサッカーボールだ。

 別のスポーツをやっているのだからそれに因んだものにすれば良いのにな。

 意外と難しい注文だと思ったが、紫はチョコペンを使って難なく綺麗な円を描き、サッカーボールを完成させた。


「俺は猫で!」


 次に蓮の猫に取り掛かる。

 絵心もかなりあるようで、可愛らしいタッチの猫が完成した。


「次は俺か。じゃあ――」

「あ、古庵くん……じゃなくてご主人様のはもう決まってるから」


 そう言って紫は俺のパンケーキに勝手に何か描き始める。

 どんな絵を描くのかと思っていたが、どうやらこれは文字らしい。

 全貌が明らかになっていくにつれて顔が引き攣るのを感じる。


「ご主人様、大好き……?」

「うん。あとはこれで完成」


 最後に文字に重ならないようハートを描くと、満足そうに皿を差し出す。

 

「はい。召し上がれ」

「おいおい、そんなことしたら……」


 また二人の顔が死んでしまう。

 そうなれば優勝するという彼女の目標も遠のいてしまうと思ったのだが……。


「…………ふふふ」

「お前も同じ気持ちか楽人。俺もだよ」

「あぁ、良いよな……」


 なぜか二人とも満更でもないという顔をしていた。

 どういうことだよ。



 パンケーキを食した後は、まだ時間に余裕があったので雑談タイムになった。


「最近いい感じの子がいるんだけど、いまいちどこに遊びに行ったらいいかわからなくて……」

「その子の趣味とかは? アウトドアかインドアか聞くだけでもいく場所が変わってくると思うよ」

「確かに。でも、それでもどこに連れてけばいいかわからなかったら?」

「本人に直接聞くのがいいんじゃないかな。でも、自分のことを思って選んでくれたならなんでも嬉しいはず」

「そうか、頑張ってみるよ!」


 楽人の質問に的確に答えているし、会話も結構盛り上がっている。

 これはマジで彼女の一人勝ちではないだろうか。

 他の参加者の反応はどうだろうか。

 視線を彷徨わせてみる。


「…………」


 七緒は無表情で行く末を見守っているようだ。

 パンケーキにハートが描かれている時にどこからか舌打ちが聞こえてきていたが、おそらく彼女のものだ。


「やはり一人一人に寄り添った接客というのが大切なようだな」

「そうですね。その点座長は普段から私たちに親身に接してくれているので心配はないかと」

「褒めすぎだぞ。まぁ、悪い気はしないがな」


 凛と坊主は変わらず分析を進めている。

 いよいよ順番が巡ってくるわけだし期待だな。


「時に、先ほど教場を覗いていた金髪の女子生徒がいたのですが、座長のお知り合いですかな?」

「私の?」

「はい。なにやら座長のことをまじまじと見つめていたようですので、てっきり用があるのかと……」

「いや、私の知り合いに金髪の人間はいない。きっと通りがかっただけだろう」

「よく考えれば、この教場を客観的に見ると異様としか言いようがありませんからな」

「…………それは洒落というやつか?」

「洒落……? あぁっ、違います! 異様と言いようをかけたわけでは!」

「そうか。まぁ良い」


 何やら漫才を繰り広げていた。

 金髪の生徒というのが気になったが依頼人だろうか。

 まぁ、メイドが四人もいれば驚いて立ち止まって見てしまうのも無理はないか。

 気にすることではなさそうだ。

 最後に加賀美の様子だが……。


「……なんであんなに……」


 どこか悔しそうに紫のことを見つめていた。

 本職がぽっと出の相手に反応で負けているのだから当然だ。

 彼女が紫に負けている理由は明白だが、伝えるのは後で良いだろう。


「っていうか、紫ちゃんはそのまま本名でやってるんだな」


 他の参加者を見ていて気づいた。

 ムラサキでも可愛いニックネームを付けるわけでもなく、彼女だけ「紫」。

 何かわけがあるのだろうか。


「……あ、忘れてた」


 何もなかった。

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