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愛が重いだけじゃ信用できませんか?  作者: 歩く魚
第3章

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興味

「次は私でーす! ミカンって呼んでくださいねー!」


 過半数の心に絶望をもたらしたナナのターンが終わり、次は蜜柑がミカンとして接客してくれるようだ。

 今回はまともなやり取りが期待できるということで、心なしか場からも温かみを感じる。


「やっと俺たちがご主人様として扱ってもらえる時がきたわけだな」

「あぁ……長かった……」


 ここまで時間にして約15分。

 だが、彼らにとっては永遠にも感じる苦痛だったのかもしれない。


「俺は萌え萌えオムライスとオレンジジュースで!」

「じゃあこっちは萌え萌え焼きそばで!」


 二人は勢いよく手を上げて注文する。


「わっかりましたぁ! それじゃあちょっと待っててくださいねぇ!」


 ミカンが坊主の方へと向かった。


「まだ二人目だけど随分ガッツリいくんだな?」


 俺としては単純な疑問をぶつけただけなのだが、蓮はやれやれと肩をすくめながら口を開いた。


「あのな、次は多分音羽さんだろ? それでその次は西堂先輩」

「そうだな」


 順番の吟味はあれど、凛はどっしりと構えて一番最後に出てきそうだ。

 次にご奉仕してくれるのは紫で違いない。


「あの二人が俺たちに対してまともに接してくれると思うか?」

「いや、紫ちゃんはそうかもしれないけど、凛先輩はまだわからないだろ。もしかしたら……」

「どう見てもあの人はメイドじゃなくて将軍だろ」


 ちらりと凛の方を見てみると、メイド服姿で腕を組み、堂々と仁王立ちしている。

 確かに、これではメイドカフェへ来たというより冥土にぶち込まれたという感じだ。


「だから俺たちに残された最後の萌え萌えチャンスが今ってことだよ。そうだよな楽人?」

「あぁ、蓮の言うことはまるっと正しい。今が正念場。ここを逃せばあとは絶望しかないのよ」

「よくそんなに自信満々に悲しいこと言えるよな」

「うるせぇ!」


 また二人が泣き出してしまわないよう、俺は視線を正面に戻した。

 食事の準備ができたようで、ミカンがこちらへやってくる。


「お待たせしました〜! こちら萌え萌えオムライスとぉ〜萌え萌え焼きそばで〜す!」


 楽人の目の前にはオムライスとオレンジジュース、蓮には焼きそばが置かれる。

 ちなみに俺は何も頼まなかった。別の意味でお腹いっぱいだからな。


「それじゃあ今から、私が最後にとっておきの萌え萌えスパイスを入れますねっ!」

「うおー!」

「待ってましたー!」


 スパイスなんだ。

 萌え萌えだから甘いんだろうなと思っていた。

 ミカンは親指と人差し指を交差させていわゆる指ハートを作り、にっこりと微笑む。


「いきますよー! せーのっ! キュンキュンフルパワー!」


 可愛らしい声に続いて野郎達の野太いフルパワーが食事に降り注ぐ。


「召し上がれ〜!」


 愛に飢えた獣達は一斉に食糧を口に運び始め、涙を流さんばかりに深く味わっていた。


「うめぇ……萌えるし心は燃えてきた……」

「そうだよな、これが本来のメイドさんだよな……」

「もう、ご主人様おもしろーい!」


 食事をしている間にも退屈しないよう、ミカンが話を振る。


「ご主人様は普段何されてるんですか〜?」

「俺は運動サークルに入ってるんだよね。ピチュランダって言うんだけど」

「へぇ〜! どんなスポーツなんですか?」

「ルールとしては、1チーム――」


 あ、ぼーっとしていてピチュランダの解説を聞き逃してしまった。

 千載一遇のチャンスだったのに。


「そうなんですね〜。オムライスは美味しいですかぁ?」

「あぁ、うん。美味しいよ!」


 ミカンもあまり楽人の話に興味がないんだろうな。

 適度に会話したあと蓮の前に移動していく。


「ご主人様は焼きそばどうですかぁ?」

「美味しいです! ミカンちゃんは趣味とかあるんですか?」

「私ですかぁ? 最近は韓国アイドルにハマってます!」

「へぇ……そうなんですね……」

「とってもかっこいいんですよ! ご主人様は音楽とかよく聞きますかぁ?」

「俺は最近だと……」


 彼らの会話を聞きながら、自分の脳内で違和感や改善点を考えてみる。

 そうしているうちに20分ほどが経ち、ミカンのターンが終わる。


「ありがとうございました〜! いってらっしゃいませ、ご主人様!」


 彼女が去ると、楽人や蓮も考え出したようで、俺はその間の暇を潰すべく、再び凛の方へ意識を集中させる。


「聞きたいことはいくつかあるが、ご主人様と呼ぶのは決まっているのか?」

「いえ、必ずしもそうではありません。ただ、メイド服を身につけている以上、格好に似合わない言動は減点対象になり得るかと」

「ふむ、一理あるな。それでは一度練習してみるとしよう」


 凛は深く息を吸う。


「ご、ご主人さ…………やっぱりやめよう、うん」


 こちらに聞こえないよう蚊の鳴くような声で相談を進めているようだが、丸聞こえである。

 恥ずかしくなってやめてしまったのだろうが、本番はどうなるのか。


「なぁ、俺たちの楽しみってもう終わっちゃったんだよな」

「そんなこと言うなよ。もしかしたら西堂先輩が良い感じかもしれないだろ?」


 残念だが二人の楽しみはここまでだ。

 そう思ったが、またあの魂が抜けたような顔を見たくないので黙っておくことにした。

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