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愛が重いだけじゃ信用できませんか?  作者: 歩く魚
第3章

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入店

 連れてこられたのは、向かいの歩道に渡って二本くらい裏に入った場所にある店だ。

 さびれたビルの三階だか四階だかにあるということで、正直店のクオリティが不安になってきた。


「大丈夫ですよ。見た目はボロいけどお店の中は綺麗です」


 俺の心が読めたというよりは、同じように考えたり口に出す客が多いのだろう。

 怖いお兄さんが出てきた時は俺がどうにかすればいい。

 ナースがエレベーターのボタンを押し、俺たちを先に箱に入れてくれる。

 扉が閉まると、やはりさびれたビルらしく大きく揺れながら稼働した。

 四階で老人の動きが止まり、ドアがゆっくりと開く。

 降りてすぐに店というわけではないようだ。


「右側が私たちのお店です。左はうちの系列店ですよ」


 系列店があるってことはそこそこの人気があるのかもしれない。

 彼女に促されるままに店に入ると、その内装は予想とはだいぶ違っていた。

 床の色はありきたりなものだったが、壁紙は宇宙のような淡さと煌めきが混ざったものとなっている。

 部屋自体はかなり暗いが、小さな月のような照明がまばらに取り付けられているため視界は良好。


「思ってたよりロマンチックな空間だね」

「私ももっと怪しい場所を想像してました」

「みなさんそうおっしゃるんですよ〜。気に入ってくれました?」


 3人が頷く。

 ここはガールズバーに近い体系なのだろうが、一風変わった内装のおかげで夜感は少ない。

 感じたとしてもおしゃれなバーにいるような気分だ。

 しかも、流石に机は無茶だろうが、カウンターの足元なんかは光が微妙に行き届いていないため、掃除をサボっても客にバレない。

 汚れが目立たない工夫が感じられる点も……これは良くないか。


「あ、お席ついてもらって大丈夫ですよ」


 内装に感心して座ることを忘れていた。

 左から七緒、俺、紫の順に座ると、カウンター越しにお姉さんが話しかけてくる。


「それじゃあ改めて、私はカナタって言います。よろしくね〜」


 金髪で中性的な顔立ちのカナタ。

 サバサバした性格っぽいし、女性人気もありそうだ。


「女性がくることも多いんですか?」

「結構多いですよ。仕事終わりのコンカフェの子とか、祝日だと普通に女の子二人で来てくれたりもしますね」


 紫も言っていたが、女子も可愛い女子が好きなんだったな。

 それを主軸にやってみても面白いだろう。


「カナタさんのお客さんはどんな人が多いんですか?」


 左の席から質問が飛んでいく。


「そりゃあまぁおじさんが多いですよ。私、結構ズバズバ言っちゃうタイプなんですけど、そういうのが嬉しいみたいで」


 確かに、他人との関係を穏便に済ませようと思うばかりで、自分が本当に伝えたいことを伝えられずにいる場合が多いのだろう。

 以前にもそういう部分を直したいという依頼が何件かあった。

 

「社会生活では常に気を使って接していますし、真っ向からぶつかってくれるが気持ちいいんですかね」

「かもですね。正直こういう風にしたら売れるっていうのはないと思います。むしろ自分を偽らない方がいいみたいな」

「たとえば私みたいに愛想がなくてもいいってこと?」


 今度は右からの質問だ。


「お姉さんとんでもなく可愛いし、むしろクールだからこその魅力があると思いますよ。お姉さんだったら……家族間の会話がないおじさんとか、あとは普通に女の子人気が出まくると思います」

「へぇ……ちょっと嬉しいかも」


 持ち味を活かすということだな。

 っていうか、カナタの分析はすごく分かりやすいのだが、家族間の会話がないおじさんってリアルすぎるからやめてほしい。

 思春期の娘に避けられてるパパとかな、同じくらいの年頃の子に話聞いてもらえると嬉しいんだろうな。


「ただ、個人個人で気をつけてるのこととか違うかもです。暇そうな子と変わってきますね」

「ありがとうございます」

「でも、ちゃんとドリンク入れてくださいね?」


 揶揄うように言って、カナタは去っていった。



「どうも〜カナタちゃんから呼ばれてきましたユカです〜お二人ともとっても可愛ですねむしろお兄さんも可愛いです!」

「おお……」


 やってきたのは小柄でハイテンションのお姉さんだ。

 彼女はナース服はナース服でも、謎に露出の多いものを身に纏っている。


「…………先輩?」

「目の前に相手がいるのに視線を逸らすのは失礼だろ」

「はい有罪」


 あとでどうにかして減刑しなくては。

 各々で適当に注文を済ませて話を聞くことにした。


「…………ってわけで、お話聞けたら嬉しいです」

「あ〜〜私はあんまりそういうのは気にしてないかも? 強いて言えば話が一方的にならないようにしてるくらいかなぁ。あぁでも、お客さんの中にはこっちに話してて欲しい人もいるから相手の反応を見てって感じかな? その子はどんなタイプなんだろ、お兄さんはどう思います?」

「あー、えっと……」

「相手に興味持てる子なら目につく部分を話題にしてみるとかいいですよね〜そうじゃなかったら初回のお客さんように会話のテンプレートを作っておくのもありかなぁ他には――」


 怒涛のマシンガントークで入り込む余地がない。

 しかもところどころで使えそうな情報も入っているから話を聞き流すのも勿体無いし、かなり体力を持っていかれそうだ……。

 そこからさらに10分ほど演説は続き、バテる俺たちとは反対に彼女は胸を張って去っていった。

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