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愛が重いだけじゃ信用できませんか?  作者: 歩く魚
第3章

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秋葉原

「先輩の反応を見て今後に活かせるのは嬉しいけど、仮に先輩が鼻の下を伸ばそうものなら許せない……むぅ」


 メイドカフェといえば秋葉原ということで、俺たちは電車に乗っていた。

 楽人は俺たちに天啓を授けるや否や、練習があるということで去ってしまったため、向かうのは3人だ。

 そもそも加賀美の店に体験に行けば良いんじゃないかという意見も出たが後の祭り。

 帰したのにまた呼び戻すのも申し訳ないので、今日のところは本場の盛り上がりや技術を拝見というわけだ。

 座席に座り、本を読むふりをしながら小声でぶつぶつと何か言っている七緒は放っておいて、俺は紫と会話することにした。


「紫ちゃんはメイドカフェは初めて?」

「うん、初めて。でも、前々から行ってみたいと思ってたんだよね。可愛い子好きだし」


 そういえば、最近は女性の客も多いらしいな。

 メイドさんに興味があるのは男子だけだと思っていたが、可愛い女子が好きというのは性別に関係ないらしい。


「自分はやってみたいとは思わないのか?」

「うーん、私あんまり愛想良くないからさ。嘘でも古庵くん以外に好き好きしたくないし」

「……そうか」


 まぁ、カラオケの時みたいな距離の詰めかたをされると困るからな。


「でも、可愛いから似合うと思うよ、メイド服」

「…………今度やってみる? メイドプレイ」

「プレイじゃなくてコスプレに留めておいてくれ」


 プレイって言うと一気にいかがわしさが出てくるな。


「……七緒はどうしたんだと思う?」


 もう電車に乗って10分以上そのままの調子だ。

 ちょっと心配になったので紫に意見を仰ぐ。


「古庵くんがメイドさんにデレデレしないか心配なんだよ。たふん、その姿を見たら日向ちゃんは鬼になるね」

「…………鬼か」


 メイドカフェってデレデレしに行くところじゃないのか?

 それで刺される可能性があるって理不尽な気がするんだが。


「紫ちゃんは正気みたいで安心したよ」

「ん? 私も本当は嫌だよ。でも、七緒ちゃんと同じで勉強しようって気持ちがあるから」

「勉強……?」


 手でハートを作って料理に魔法をかける機会でもあるのだろうか。

 何を学びたいのか分からなかったが、二人の考えが似ている部分があることは理解した。

 その後も雑談をしていると、車内アナウンスが秋葉原への到着を知らせる。

 俺たちは人混みに混ざって降車し、長いエスカレーターを降りていく。


「すごいですね。他の駅とは雰囲気が全く違います」

「確かにな。違う世界に来たみたいだ」


 エスカレーターで降っていると壁に貼られた広告が目に入ったが、そのどれもがスマホゲームやアニメのものだった。

 秋葉原はオタクの街という認識があったが、街そのものもそれを理解して、ふさわしいアプローチをかけている。

 地上に降りるとさらに人が増える。

 行き交う人やホームへと上がる階段の多さ。

 街が持つ魅力もさることながら、中継地としての機能も優れているようだ。

 電気街口を抜けると、柱にもたれる人の多さにまた驚く。

 誰も彼もが待ち合わせしているのは明白だが、いかにもオタクといった感じの風貌の男子や、おそらくコンカフェの出勤前の子など、種類は様々だった。

 左へ曲がると、正面に大きなゲームセンターがある。

 さらにそこを右へ曲がると、かの有名なラジオ会館が堂々とそびえ立っていた。


「すごいな……路面でカードショップがあるなんて珍しい」

「あ、あの曲がり角のところ、メイドさん立ってない?」


 紫の指さす方向を見ると、確かにメイドさんらしき格好の人物が目に入る。


「いや…………あれは違くないです?」


 だが、その人物をよく見ると、明らかに骨格がおかしい。

 おかしいと言っては失礼だが、女子のものではないのだ。


「あれは多分、趣味で女装してるおじさんだな……」


 別に誰がどんな格好をしようと人の勝手だが、残念ながら俺たちが探し求めていた人物ではない。

 しかし、その紳士の近くで正規のメイドさんが軽く踊りながら客引きをしているのが目に入った。


「こんにちは〜! メイドランドへようこそ〜!」


 軽快なステップで道行く人にチラシを配っている。

 公共の場で堂々と踊れる精神力や、よく通る声に感心した。


「よく見たら先の方まで客引きの子がいるし、とりあえず歩いてどの店にするか様子を探ってみるか?」


 紫が頷く。


「そういえば、横断歩道を渡った一本裏の通りにもたくさんいるらしいですよ。むしろそこの方が多いかもしれませんね」

「じゃあそこも追加で。とりあえず行ってみよう」


 まずは3人で大通りを歩いていく。

 客引きの子達は揃いも揃ってガードレール側に立っていて、何かの儀式のようだった。


「……そういえば昔やったゲームであったな。一番奥に良いアイテムがあるんだけど、道中でこんなふうに5人くらいと戦うことになるんだよ」


 なかなかに良い例えをした自信があったが、二人には首を傾げられてしまった。


「あ、こんにちは〜!」


 ほら、こういう感じで目が合うと話しかけられる……というか戦いを挑まれるんだよ。

 マジで良い例えだと思うんだけどなぁ。

 何はともあれ、せっかく声をかけてきてくれた相手を無視するというのも忍びない。

 話だけでも聞いてみることにした。

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