表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛が重いだけじゃ信用できませんか?  作者: 歩く魚
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/124

二戦目

 日曜日。都心部の駅での待ち合わせ。

 昼過ぎの集合時間に遅れないよう、五分前に待ち合わせ場所に向かったのだが、二人は当然のように俺よりも早く到着していた。

 数メートル先から手を上げて存在をアピールすると、それに気づいた二人が嬉しそうに顔を綻ばせる。


「いや、二人とも早いな。今時五分前でも早い方なのに」

「私は15分前に着きました」

「私は30分前に着くように家を出たけど、途中で忘れ物してるのに気付いて戻ったんだ。だから結局、古庵君より10分早く着いたよ」

「算数の問題かよ」


 要するに二人とも待ち合わせ15分前、俺より10分早くに到着していたことになる。


「15分って割と暇じゃないか? 二人とも何して待ってたんだよ」

「先輩がやってたスマホゲームを先日インストールしたから進めてました。さっきアルティメット・マンティス出ましたよ」

「…………は?」


 アルティメット・マンティスは今の限定ガチャの目玉キャラだ。

 最高レアリティの排出率が1%くらいのゲームだが、俺は今のところ180連爆死している。

 彼女がどのくらいガチャを引いたか分からないが――。


「20連です」


 シンプルに許せん。


「私は好きなバンドのサイト覗いたりしてた。次のライブ行こうと思ってるから」


 紫はイメージ通りというか、さすが軽音サークル所属といった感じだ。


「……古庵君も一緒に行かない?」

「あぁ、別に良いよ」

「そ。じゃあ、楽しみにしてる」


 デートはあんまり乗り気にならないが、ライブなら行きたい。

 いわゆる雑食で音楽を楽しむタイプだし知識が増える。

 同年代や年下と打ち解けるために必要な場合もあるからな。


「「あぁ、ただ……」」


 二人の声が重なる。


「「今日は声をかけてくる人がいなくて嬉しかった」」


 相手が一人じゃないと声をかけられないやつ、友達との時間を邪魔したくないやつとか、プレイスタイルはそれぞれだからな。

 だが、ちょっかいをかけられなかった一番の理由は「オーラの増幅」だろう。

 なにもバトルものの話をしているわけではない。

 美人は無意識のうちに威圧感を与え、高嶺の花には声をかけないでおこうという気持ちを呼び起こす。

 それが二人になれば加算ではなく乗算され、さらに近寄り難くなるのだ。


「……苦労をかけます。それで、今日の予定をまだ聞いてないんだけど。そもそも二人が勝負するのに俺が来る意味あるか?」

「当たり前じゃないですか。勝負には立ち会ってくれる人が必要なんです。いざ戦って勝っても、二人しか証人がいなければどちらが真実を言っているかわからないんですから」


 どちらも「勝者は自分だ」と主張した場合、第三者には判断できないということか。

 紫がそんな姑息な真似をするとは思えないが。


「私は潔く負けを認めるよ」

「……そうだと良いですけど、本当に勝ちたい勝負の時、人は手段を選べません」

「まぁ、一理あるかもね」


 変なところで通じ合ってるな。

 互いに譲れない何かを持っているのかもしれない。


「それに、先輩がいないと今回の対決が始まりませんから」

「俺がいないと?」


 どういうことだろう。

 俺がいないと成立しないゲームなんてあるのか?

 その疑問を見透かしているかのように、七緒は軽く笑っていた。


「今回の対決は……デート対決です」

「…………デート?」

「はい。一時間という制限時間の中で、私と音羽さんはそれぞれ先輩とデートをします。そして最終的に、先輩にどちらのデートが良かったか選んでもらうんです」

「はぁ……」


 彼女の言っていることは理解したが、果たしてそれで良いのだろうか。

 じゃんけんのように誰が見ても勝敗が分かるものではなく、俺の匙加減で勝ち負けが決まってしまう。

 なんていうか、それはフェアじゃない気が――。


「いいよ、やろ」


 あ、いいんだ。


「ちなみに、何か禁止事項とかはあるの?」

「物やお金を貢ぐことは禁止です」


 これが許可されていたら、多くお金を出してくれた方を選びたくなっちゃうからな。


「あとは、時間がもったいないので他の駅に行くのも禁止です」


 一時間をフルに使って移動すれば帰ってくるのは大変だ。

 そんなことをする意味はないが。

 ……移動で俺を疲れさせて、次の相手とのデートの楽しさを半減させるとか?


「デートの順番は?」

「じゃんけんで決めましょうか」


 紫が頷く。

 お馴染みの掛け声のあと、二人が手を出した。


「……私の勝ちだね」


 七緒が出したのはグー。

 それに対して紫はパーを出していた。


「どうしようかな。先に場を温めてもらえれば有利だろうし、私は後攻を選ぶことにする」

「……そうですか。それじゃあ私が先行ですね。行きましょう、先輩」


 ここで話している時間が惜しいというふうに、待ちきれない雰囲気を出している七緒。

 俺の意見は聞きもされず、ここから二時間の予定が決められてしまった。

 そしてもう一つ、俺は彼女に問いたださなければならない。


「あのさ、もしかしてこれって、七緒がデートしたいだけなんじゃなくて?」

「…………そんなことないですよ?」


 目を逸らす姿を見て、俺の直感もバカにならないなと思った。

 全然関係ないけど、何番勝負って漫画みたいでちょっとワクワクするよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ