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愛が重いだけじゃ信用できませんか?  作者: 歩く魚
第2章

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友情

 続いて隣になったのは、もう一人の目的である白峰だ。

 飲み会前半で目的を達成できるとは幸先が良いな。


「よぉ、元気?」

「元気元気〜! 古庵君……瑠凪君?、は調子どう? さっき紫に肩揉ませてたっしょ!」

「瑠凪でいいよ。肩めちゃくちゃ痛くてな。紫ちゃんのお陰で可動域が広がった感じがするよ」

「ウケる。プラモデルかよ」


 楽人と話しているところを見た限りノリは良さそうだし、そういう相手には多少ラフに話しかけても良いだろう。

 実際、初動の盛り上がりとしては悪くない。

 次は櫂とのエピソードを聞き出すための布石を打つ。


「さっきチラッと会話が聞こえてきたんだけど、白峰さんかなりノリ良さそうだよね。盛り上げ上手なオーラ出てるよ」

「え、マジで? なんか嬉しいかも」

「うんうん。なんなら盛り上げエピソードとか持ってそうだし」

「盛り上げエピソードってなんだし。でも、確かにヤス君と出会ったのも飲み会だったし、その時のテンションが良かったのかも?」


 安田の時は例外だったが、人から情報を引き出す際は、単刀直入にその話題に入るよりも、相手が自分から話したくなるよう誘導する方が良い。

 なぜなら、「言わなければ」と思って出てくる情報には抜けがあるからだ。

 スポーツでもなんでも、誰かに見られていると意識している時に動きが悪くなってしまうことが多い。

 プロはそれに対する練習を積んでいるが、一般人は違う。

 だから、出来るだけ自然に情報を伝えてもらえるよう、相手を誘導するのが望ましいのだ。


「へぇ。やっぱ白峰さんモテるの? 櫂先輩に好かれるなんて相当すごくない?」

「そ、そう?」

「いやマジですごいよ、ミスターコン出てる人なんて高嶺の存在だよね。飲み会で出会ってから付き合うまでも早かったんじゃないの?」

「えっと、飲み会が……それで付き合ったのが…………1ヶ月くらい?」


 彼女が小声で数えている時に確認できたが、二人が知り合ったのは、ちょうど安田と櫂が喧嘩中の期間だ。

 一連の流れで重要なのは「櫂に好かれる魅力」でもなく「付き合うまでの期間」でもなく、「いつ出会ったか」である。

 しかし、あくまでこの会話は「恋バナ」や「雑談」の類であり、尋問だと思われてはいけない。

 知りたいことが副産物として得られるのが理想だ。


「1ヶ月かぁいいね。付き合ってからはどこ行ったの?」

「普段はヤス君の家でデートすることが多かったかな。ミスターコンでプチ有名人みたいになってたからさ、あんまり女の子と出歩けないんだって」

「あぁ〜、それは仕方ないよね」


 仕方ないわけがない。

 それこそ安田のようなミスコンNo. 1なら分かるが、大して順位も奮っていないミスターコン如きに注目は集まらない。

 つまり、白峰と外でデートしたくない別の理由があるはずだ。

 考えずとも分かるが、理由は一つしかない。

 浮気がバレないようにリスク管理を行なっている。

 さて、欲しかった情報は大体得られたので、ここからはシンプルに質問していこう。


「そういえば、安田先輩と色々あるじゃん? それにはいつごろ気付いたの?」

「気付いたっていうか、紫が教えてくれたんだよね」

「紫ちゃんが?」


 思わぬ情報源に眉をひそめる。


「うん。紫とは一年の時に知り合ってたまに話すんだけど、この間たまたま恋バナになった時にヤス君のこと言ったの」

「それはいつ?」

「3ヶ月くらい前かな? で、最近になって紫が『まだ櫂先輩と付き合ってる?』って聞いてきて、よくよく話聞いてみたら他に彼女がいるみたいだって……」


 紫はどうやってそれを知ったんだろう。

 学内の情報屋でもやってるのか?


「だったら早いところ真実をはっきりさせないとな」

「んー、まぁ、そうだよね」

「どうかした?」


 自分の彼氏が浮気しているなんて許せないだろうに、どうしてか白峰は真実の解明に乗り気じゃないように見える。


「……ヤス君はちょーかっこいいし、一緒にいて楽しいし、浮気してるなんて信じたくない。もし仮に浮気してたとしたら……悔しいけど、あの先輩綺麗だから……」


 要するに、薄々勘づいてしまっているのだろう。

 安田が櫂を想う気持ちに嘘はないことも、もしどちらかを選ばねばならない状況になったら、彼女は選ばれないということも。

 だから、表面上は安田とやりあって真実を突き止めようとしているが、心の奥底ではそれに恐怖しているのだ。


「そうだよね。でも、白峰さんも十分魅力的だと思うよ」

「……ほんと?」

「うん。話してて楽しいし、もし付き合ったら毎日楽しそうだなって」

「……ありがと。ちょっと元気出た」


 励ますために嘘を言っているつもりはない。

 第三者から見れば明らかに遊ばれているような理由でも、彼女は信じてしまうのだ。

 それくらい櫂に心を開いていて、純粋なのだろう。

 二人の話が聞けたことだし、明日にでも今後の方針をまとめていきたい。


「はーい、それじゃあ次の席替えするぞ〜!」


 先ほどよりさらにハイテンションになっている楽人。

 彼の号令によって、三度席替えが行われることとなった。


「あ、瑠凪君」

「ん?」


 引いたくじを確認し、席を移動しようとしたその時、白峰に呼び止められる。


「私のこと、白峰じゃなくて夕莉でいいよ! なんか仲良くなれそうだし!」

「おう。よろしく、夕莉」


 こちらに突き出された拳に、俺の拳を軽く合わせた。

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