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愛が重いだけじゃ信用できませんか?  作者: 歩く魚
第2章

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捜索

 捏造疑惑のある桜の花びらは一旦スルーして、色々と質問し、深掘りしてみる。


「その子とはそれっきり会ってないのか?」

「あぁ、残念ながらな……。どの学部なのか、何年生なのかも全くわからないんだよ」


 名前すら分からず、判明しているのは見た目だけ。

 本人が探すなら外見は便利な判別方法になるだろうが、第三者からすると、名前や所属学部のような情報の方がありがたい。


「今のところ……クール系の女の子で、自分より強い相手に物怖じしないってことしかヒントがないわけか」

「あれから何度か出会ったところで探してみたりもしたけど、一回も見かけなかったし……」


 まだ大丈夫だが、ちょっとストーカー気質があるな。


「待ち伏せするなら一週間毎日、同じ時間にすると良いですよ。それでもダメだったら時間をずらしてまた一週間。そうすれば、生活圏内ならどこかしらで会えると思います」

「そうだったのか……参考になります!」


 余計な知識を吹き込んで狂戦士を増やさないでほしい。

 お前もお前で「参考になります!」じゃないんだよ。

 ……でも、探さないと辿り着かないのも事実だからな。


「とりあえず今から学内を回ってみるか?」

「時間をとらせて悪いけど、そうしてくれると嬉しい」

「じゃあいくか……七緒はどうする? 二人いようが三人いようがさして変わらないし、乗り気じゃなければ休んでてもいいぞ」

「もちろん私も行きます。ちょっと待ってくださいね」


 そう言って七緒はどこからともなくヘアゴムを取り出して、自分の髪をポニーテールにくくる。

 これからの時期は蒸し暑くなってくるし、髪を上げる頻度が上がりそうだな。


「お、おお……」


 中身を知っているから実感が湧かないだけで、七緒は一般的に見たらかなりの美人の部類に入る。

 蓮が見惚れてしまうのも無理はないだろう。

 しかし、自らが人を惹きつける容姿だと知ってか知らずか、彼女は迷惑そうに舌打ちをした。


「あの、あんまり見ないでもらえます? 古庵先輩以外に見られたくないです」

「す、すまん……。でも、君は綺麗だけど目移りしたわけじゃないぞ。俺はあの子に心を奪われているから……!」

「はぁ、それなら良いですけど」


 一瞬目を奪われたが、心は別の女子のものだと言いたいのだろう。

 その言葉が言い訳臭いが、彼は美しいものを美しいと感じる、素直な感性を持っているように思える。


「それにしても……古庵、さすがだな!」

「…………なにが?」

「なにって、こんな綺麗な子にベタ惚れされてるじゃないか。俄然期待しちまうよ……!」


 七緒に気を遣って耳打ちしてくれるが、そうじゃないんだ。

 できることなら変わってほしい。

 俺の肩をパンと叩き、サムズアップする蓮の笑顔は眩しかった。


 

 三人で教場を出て、学内を適当に歩くことにする。


「まずは食堂がいいんじゃないかと思う。昼過ぎとはいえ、空きコマで勉強してるやつとか多いから可能性はあるはず」

「そうですね。食堂だったらじっと見ていても気付かれにくいですしね。なんなら盗撮してもバレませんよ」

「……七緒のは経験則じゃないよな?」

「まっさかぁ。私がそんなことするわけないじゃないですかぁ」


 この白々しさ、確実に経験からくるアドバイスだ。

 もちろん対象は俺である。

 ……そういえば、俺の盗撮写真をスマホのロック画面にしていたよな。

 あの時は別のことに気を取られていて触れられなかったが、今度問いただすとしよう。

 盗撮みたいな犯罪行為はさておき、理論として間違ったことは何一つ言っていない。

 木を隠すには森の中、人を隠すには人の中という具合に、人がたくさんいる場所、さらに騒がしい場所であれば自らの視線を感知されにくい。

 怪しまれない心がけが、より自由な行動を作るのだ。


「適当に話すふりをしながら探そうか。同じサークルのメンバーって設定で」

「わかりました」

「わかった。それじゃあ俺が話題を考えるよ。えっと……」


 方法は示されれど、自分も力になろうとする姿勢が素晴らしい。

 こういう部分からも、彼が本気で恋をしているのが伝わってくる。

 相手の女子も、彼の実直な姿を見れば心動かされるに違いない。


「昨日の『魔術大戦』観た?」


 やっぱりダメかもしれない。

 高校生が朝礼の前にする会話じゃねぇか。


「見ました。ついにソロモンの魔術が明かされましたけど、まさかあんな能力だとは……」


 お前も乗るのか。

 っていうか見てるのかよ『魔術大戦』。

 同じ作品でも、昔は漫画の方がアニメより面白いと言われていたが、今ではアニメのクオリティが上がりすぎて逆転現象が起きかけている。

 ちなみに俺は漫画派だ。

 少年漫画談義に無駄に花を咲かせながらも捜索は続く。


「あの子は?」

「いや、違うな。服装は似てるけど、もっと細かった」

「それを本人に言ったらぶっ飛ばされるから気をつけるんだぞ」

「勉強になる」


 似たようなことを言って、昔何発か殴られたことがある。


「今、券売機に並んでる子はどうだ?」

「いやぁ違うな……」

「うーん。何か個性的な部分とかなかったか? 俺だったら白い髪で、七緒だったらメガネとか」


 その人間を代表するようなパーツがあれば、探すのはグッと楽になる。


「それなんだけど、個性的なところがあった気がするんだが、恋に落ちた時の衝撃で全然覚えてない。一眼でわかるような特徴があったのは……覚えてる」


 特徴から探るというのはダメそうだ。

 やはり、地道にいろいろな場所に出向いて探すしかあるまい。

 この後も1時間ほど食堂内外をうろついていたが、結局お目当ての人物を見つけることはできず。

 続きは後日ということになり、一旦解散することにした。

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