表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/124

災難

キリがいいところで分けてるので極端に文字数が少ない時もあります。

「いてぇー……」

 

 平日とはいえ、都会とは思えないような、人の少ない通りにある黒い外観の建物から、古庵瑠凪は出てきた。

 まだ暦の上では春とはいえ、昼頃の突き刺さるような日差しが彼を襲う。

 どうやら頭に怪我をしているようで、男子にしては白い手で頭を押さえていた。

 

「あー。まだ十四時か……」

 

 黒いスラックスの右ポケットからスマホを取り出し、時間を確認した。

 

「予定がずれちゃったからなぁ。これからどうするか……」

 

 二年生ともなると、大学生活にも慣れてきている頃だ。

 しかし、かといって生活に余裕が生まれるわけでもなく、むしろゼミの受講やサークル内の地位の向上という面で、さらに忙しくなるだろう。

 にも関わらず瑠凪は、既に今日は一、二限をなかったものとして扱い、己の欲を満たすための行為に勤しんでいた。

 彼が大学生における典型的な、受験勉強や親の束縛からの解放による逸脱状態にいるのであれば、まだ更生の余地はある。

 浮かれたテンションに現実、つまり自らのスペックが追いついていないからだ。

 だが、長いまつ毛に気だるげな瞳、ピノキオもかくやという高い鼻、カッコいいや可愛いより美形と形容するのがふさわしい容姿の前に、一時的にでも騙されてしまう女子は少なくない。

 適当に生きていても、なんとなく他人の力で生き抜けてしまう彼は、毎日を自由に過ごしていた。

 

「……そういえば、やることあるんだった。行くかぁ」

 やるべきことを思い出した瑠凪は歩き出す。

 坂道を降って大通りに出ると、自らの頭の傷を撫で、その後、パンツの左ポケットに入っている財布を上から軽く叩く。

 

「まぁ、今日は災難だったけど、良しとするか」

 

 そして、地面に捨てられていた世界一周のチラシを横目で見ながら、人ごみの中に消えていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ