プロフ文
とはいえ、彼も変わろうと思っている。
力強い瞳が、それを物語っていた。
「最後はこれだ」
はじめまして!都内に住んでいる大和です!
大切にしたいと思える女性と出会いたいと思い、マッチングアプリをはじめました。
【性格】
アクティブな性格で、休日は友達と出かけることが多いです。一日中動き回っても疲れません!
【仕事】
飲食店を経営しています!従業員やお客さんとコミュニケーションをとる事が自分の性格と合っていて、とても楽しいです。まだまだ改善点も多く、奔走する毎日ですが、やりがいを実感しています。
【趣味】
休日は旅行に行く事が多く、この前は大阪まで行ってきました!都内では銀座や上野によく行きます!今後は海外にも行ってみたいなと思っていて、イギリスやイタリア、ブラジルが気になってます。
学生時代はサッカーをやっていて、今でも友達と軽く試合をしたり、サッカー観戦にも行きます。もし興味があれば、一緒に観にいけたら嬉しいです。
出かけない時は、家で映画を観ている事が多いです!邦画も洋画もどっちも好きなので、おすすめ教えてください!
【好きなタイプ】
話し合える関係性が苦じゃない人が好きです!お互いに悪いところがあれば直す、相手の趣味や決断を否定しない寛容な方と出会えたらなと思います。
メッセージをいただけたら、かならず返信します!
ご連絡をお待ちしています!
「さぁ、これはどうだ?」
先ほどと同じく文面を見つめている生島だが、うっすらと感嘆が漏れ出していた。
「女性からマイナスに受け取られそうな内容は全然ないし、仕事の項目も分かりやすくて、尊敬できます。趣味とインドアとアウトドアの両方に触れていて、『もし興味あれば』と押し付けないところから、優しい人なのが伝わってきますね……!」
「そうだな。好きなタイプも、長く付き合っていくなら当たり前のことを、それ自体を長所だという風に書いているから、真面目に恋人を探す女子に刺さりやすい。序盤の文も、これまでのプロフだと邪魔になっていたけど、ここまで作り込んでいれば誠実さのアピールになる」
「なにより、カッコで項目ごとに分けているから読みやすいですね!」
アプリのプロフ文に限ったことではないが、相手に文章を読ませたいなら、読みやすさを心がけなければならない。
そういう点も、この男性はクリアしているのだ。
「書き方を工夫するだけで、受け取られ方が大違いだろ?」
「はい、勉強になりました」
「それじゃあ、生島も自分の文を考えてみろ」
「わかりました!」
二十分後、スマホを手渡してきた。
プロフィールご覧いただきありがとうございます!
普段は大学に通っています!
【性格】
インドアに見えますが、外に出るのも好きです。休日は友人と出かける事が多いです。
【趣味】
最近はおしゃれなカフェを巡るのが好きで、1日に2件行くこともあります笑 まだまだ行きたいカフェがたくさんあるので、もし良かったら一緒に行きましょう!
家にいる時は映画を観たり、読書をしています。おすすめの作品があったら是非教えてほしいです!
【好きなタイプ】
一緒に笑い合える関係が理想です。刺激的なことだけじゃなくて、ゆったりした時間も大切にできる方と出会えたら嬉しいです。
メッセージは必ず返信します!
ご連絡お待ちしています!
「どう……ですか?」
「うん、かなり良いじゃないか。間違いないって言ったカフェ巡りを入れてるし、生島はスイーツに詳しいから武器になる。よく気付いたな」
「あ、ありがとうございます!」
褒められたのがそんなに嬉しいのか、声が弾んでいる。
俺はスパルタな方だし、あんまり褒めてこなかったな。
まぁいい、これでプロフ文は完成した。
「残りの身長なり何なりは、正直に埋めていい。デート代の支払いだけ、男性が多めに払うにしておけばいい」
「全額払うじゃダメなんですか?」
「それでもいいけど、飯目的の擦れてるやつに当たる確率が上がる。どっちでもいいけどな」
「じゃあ……一応、多めに払うにしておきます。でも、気が引けますね」
「なにが?」
「だって、僕は佐藤さんと話せるようになるためにアプリを利用しているわけですし、真剣な女性にとって、僕と話す意味はないと思うんです」
「あぁ……そんなことは、ないと思うぞ。今は理由を言えないけど、やってて良かったと思うはずだ」
生島は釈然としない様子だったが、俺にはこの先の展開が読めていた。