1.持ち込まれた難題(その1)
お久しぶりの死霊術師です。今回は四話の予定です。
前にも言ったけどよ、俺ぁ死霊術師と斥候職の二足の草鞋を履いてんだ。だもんで冒険者ギルドとは別に、死霊術師ギルドからの依頼を受ける事も――まぁ、偶~にだが――あるわけだ。
今から話すのも、そっち経由で持ち込まれた一件なんだけどよ。
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「怨霊?」
「あぁ。死霊術師ギルドに相談したら、君が適役だと言われて」
妙な話だ――って、そう思ったね。確かに怨霊祓いも死霊術師の仕事じゃあるけどよ、俺ぁ別にそっち方面が得意ってわけじゃねぇ。しがねぇ駆け出しの死霊術師なんだ。怨霊祓いの実績を積んだ者は、他に幾らでもいる筈なんだがな。
「いや……それが少しばかり厄介な話なんだ」
依頼人――怨霊が現れたって村の一件担当者……ってか、世話役だな――から聞かされた話ってのは、確かにちょいとばかり首を捻りたくなるもんだった。
「村の中に集まって練り歩くだけで、誰かに祟る様子も無ぇ……って、そりゃ本当に『怨霊』なんですかぃ?」
〝怨霊の群れが練り歩く〟って聞いて思いだしたなぁ、「七人ミサキ」って怪異の話だった。自称「賢者」の地縛霊やってるシグってやつから聞いたんだが……ありゃ確か、見た者に祟りがあるとか、亡者の仲間に引き入れられるとか、そんな話だったよな。見ても聞いても祟りが無ぇ……ってのは、違うのか?
そもそも「怨霊」ってなぁ何か怨み辛みがあって、それを訴えるために現れたり、実力行使で祟ったりするもんだと思ってたんだが……
いや……シグのやつが言ってたな。「怨霊」ってなぁ特定の人に憑くもんで、特定の場所に現れるなぁ「妖怪」って言うんだと。ま、それもやっこさんの国での話らしいが……けど、今回の話も「怨霊」たぁ思えねぇんだよなぁ。怨みも辛みも祟りも無ぇってんじゃ――
「いや、それなんだが……能く聞くと〝返せ、返せ〟と言っているらしくて」
「はぁ……?」
……どっかで聞いたような話だな。……「ドロタン坊」だったっけか? だとしたら何か盗られたってのか? ……けど、それにしちゃ〝怨霊が大勢集まって練り歩く〟ってのが……大規模な墓荒らしでもやらかしたのかよ、この村ぁ。
「いや……墓というか聖地というか……」
「……何か心当たりでもあんなさるんで?」
物騒な話なら御免蒙ると逃げ腰になりかけたんだが……依頼人の説明を聞いてみると、こりゃどうにも訳の解らねぇ話だった。
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「怨霊が現れるなぁ決まって畑で、そっから出発して村の中を練り歩く。で、その畑ってのが……」
「あぁ、元は何かの祭祀が行なわれていた跡地だったらしい」
そりゃ祟られるのも道理だろうと呆れていたんだが……事はそう単純なもんじゃねぇらしい。
さっきから話に出ている「村」ってなぁ、古い……五十年や百年どこじゃねぇほど大昔の村落跡地を、改めて開拓し直した場所らしい。で、畑が手狭になったんで、新たに藪を伐り開いて畑を広げたんだが……
「その過程で、壊れた石碑のようなものが見つかってね。どうも中央に石碑だか石柱だかが立てられていて、その周りに石が並べてあったらしい」
「へぇ……日時計みてぇなもんで?」
「あぁ。何でも形状的には、環状列石というものに似ているらしい。かなり破損していたようだが」
「……そんな曰く付きの場所を潰して、畑にしちまったんで?」
「いや、それが……」
村の連中も、そこが普通の場所じゃねぇって事ぐらいは解ったそうだが、他に適地も無ぇもんで、そこを畑にするしか無ぇって事に纏まった。けど、何かに祟られでもしたら割に合わねぇってんで、一応教会の連中を呼んで、お祓いだか何だかの儀式をしてもらったらしい。
で、その時に明らかになったのが――
明日もこの時間帯に投稿の予定です。