転生者探偵物語
雑なペンネームを使っている弊害が出ました
ちゃうねん
バディもののシティーシナリオぽいの書きたかっただけやねん
(下手な関西弁)
貿易都市オータム。
そのウィンターロード44にはなんでも屋を営む男がいた。
見る者が見ればわかる黒い喪服に身を包み、小型の魔法杖と東国産の刀を持つその男は自らを探偵と名乗り、この貿易都市オータムを守っていると自称している。
住人から『クロ』と呼ばれているその男の名はクロード=ノースシード。
前世日本人の転生者である。
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「傾くことも時には大事だが、あんたにゃまだ早かったなお姫さ……ぐえっ!」
怖さを紛らわせるべく無駄に芝居がかった口調で彼女を抱きかかえるまではよかったが、そのはずみで木から手を話してしまった俺はそのままそのまま地面に背中を強かに打ち付けてしまった
「あ〜……しまらねぇ。
お姫様、お怪我はないかな?」
胸元で丸くなっていたケットシーの女の子は大丈夫というようにミャーと元気に鳴いた。
「元気そうでなにより。
お前の母ちゃんが心配してたぞ、全く悪い子だなぁ」
立ち上がって顎をコリコリしてやると目を細めるお姫様。
なんといってもこの子は生まれてからまだ1年も経っていない、そんな子がこんな遠くの公園で木に登って降りられなくなるなってるなんて、なかなかにやんちゃ娘だな。
──ケットシー。
2足歩行の猫の妖精で幼少期は4足歩行で歩き、普通の猫とあんまり変わらない。
10年ほどで成猫になり、2足歩行をして言葉も話すようになる。
その愛くるしい見た目から商人になるやつが多いが、剣士として大成する奴もいるらしい。
まぁ、人種の坩堝たるこの貿易都市だと前者が大半だな。
「リリ!」
お姫様の母親が八百屋から飛び出してくる。
黒猫に紺色のエプロンを巻いたちょっと地味な出で立ちだが顔はスラッとした美猫だ。
見る人が見ればアニメ3大ママの仲間入りが出来るかもしれない。
呼ばれたリリが腕から抜け出して彼女の腕の中に飛び込んでいく。
「2ブロックも離れた公園の木に登ってたよ。
なかなかお転婆なお嬢さんだ」
「ありがとうございます、クロさん!
もぅ私だけでは狼狽えるばっかりで……っ!」
「愛娘なら仕方ないさ。
とりあえず事件に巻き込まれたんじゃなくて良かった」
「それで、あの……報酬なんですが、本当にこんなものでいいんですか?」
「最初に交わした契約通りに。
それでみんな幸せだ」
「はぁ……」
戸惑いながらママさんが報酬を俺に差し出す。
「じゃがいも5個、確かに」
「……やっぱり金銭の方が」
「俺は痩せ我慢しないタイプでね、毎日うまい飯が食えればそれでハッピーなのさ。
それに家賃分の金ならガルムからの依頼で賄えてるよ」
「そうですか……?」
「そいじゃ、ノースシード探偵事務所を今後ともご贔屓に!」
どこか納得行ってないママさんを言いくるめてさっさと退散する。
あのまま押し問答されたら他の野菜も持たされそうだ。
「さて今日は何作るかな、やっぱここはシンプルに蒸して塩とバターで食べようかね~」
よだれが垂れるのを我慢しながらウキウキ気分で市場へ向かっているといきなりムンズと首根っこを掴まれた。
「ぐえっ!」
「探したぞ、クロ。
仕事の時間だ」
じゃがいもを落とさないように、ホルスターから銃を抜こうと手を掛けたが声を聞いて一気に脱力する。
「なんだよガルム。
そんな約束なんかしてねぇだろ?」
振り返るとまんま狼人間のような面に鎧を着たマッチョマンが険しい目つきで俺を睨んでいた。
青と白の体毛に包まれたこの男はコボルトのガルム。
そう、俺より頭2つ分くらいでかく、目測2メートル近くありそうなこいつがコボルト。
小柄でもない角もない毒も吐かない。
個人的にはマジで種族名を狼男にでも改名してほしい詐欺みたいな奴らだ。
こいつらはもっぱら、秩序を守る兵士や騎士になる場合が多く、ガルムも騎士……前世で言うと警察機構に属している。
マジもんの犬のお巡りさんである。
「この街の平和を守るためなら力を貸してくれるんだろ?」
「まあな、事件か?」
「死人が出た」
「……一度家に帰らせろ。
食い物は大事にしないとな」
「同行するぞ?」
「当たり前だろ。
道中、事件のあらましを教えてくれ」
「おうともよ」
ニヤリとしたガルムが手を離すと早足で自分の事務所に向かう。
自分でも分かる。
まだ見てもいない事件なのに魂に火が入る音がした。
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死んだのはコノというヒム(平凡な人の意味、俺もこれ)族で22歳の娼婦。
殺害現場は路地裏で発見者は花街を取り仕切るマフィアの下っ端で、他に目撃者はいないらしい。
「ならその下っ端が犯人じゃねえの?」
「だったら楽だな」
現場に向かいながら2人で鼻で笑う。
きっとそいつじゃない事は想像がつく。
「なにせ、通報してきたのがマフィアの奴らだ。
死んだのは娼婦の中じゃそこそこの稼ぎ頭だそうな」
「よくあいつら大人しく通報してきたな」
「前で懲りたんだろ」
「違いない」
「それで今回の報酬だが……」
「家賃1ヶ月分でよろ」
「……まからんか?」
「これでも相当まけてるよ」
「……わかったよ。
またカードで巻き上げるか」
「おっかねぇお巡りさんだ」
「俺を鴨にしようとしてくる奴らが悪い」
ガルムはそう言って獰猛に笑う。
ホントそいつらには学習能力というのがないのかね?
現場につくとまだ腐敗の始まっていない死体があった。
だが、そこに他の騎士はいない。
居たのはマフィアの下っ端だ。
「お勤めご苦労さまです、お二方ッ!」
「どうも。
やんちゃしてねぇだろうな?」
「へいっ!
真っ当に働いておりやす!」
「そいつは重畳」
「見張り助かった、あとはこちらが引き継ぐ」
ガルムが手で合図するとそのまま下っ端は走って消えていった。
「他の奴らは?」
「花街で何が起ころうと知るかだと」
「根深いねぇ」
「東の国では身から出た錆だったか?」
「そうともいうね……防御創なしで心臓一突き、捻ったあともある」
「刃物にしても長物じゃないな」
「知り合いの犯行か?
ナイフで一突きって相当殺し慣れてるな」
「被害者は娼婦だ、客を取っていた可能性もあるのでは?」
「いや、客を取るにはここはメイン通りから離れ過ぎだ。
こいつの働いていた店はどこだ?」
「そこだ、目と鼻の先」
「……なら聞き込みといくか。
いやちょっと待て……」
「どうした?」
「口許のメイクが乱れてる」
「娼婦だからじゃないのか?」
「アホ、娼婦だから変なんだよ。
……」
「おいクロ、死体のスカートなんかめくるなよ」
「意外と重要なことよ?
下着は履いてて乱れもないし汚れてない。
……こりゃぁ親しい奴の仕業かもな」
「犯人は恋人か?
まるで場末の歌劇だな」
「にしては手口が鮮やかだったり腑に落ちない所は多いけどな、
とりあえず近いし仏さんの雇い主に事情を聞きに行くか」
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娼館の中はまだ日も高いっていうのに嬌声で溢れていた。
魔法があるんだから防音室でも作ればいいのに。
奥へ進むとマフィアの幹部であるこの店の店長が机で仕事をしていた。
「よぉ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかい?」
前世じゃこの手の連中と目も合わせたくなかったのに慣れっていうのは恐ろしい。
「……クロとガルムか。
なんかわかったのか?」
「なんとなくな。
被害者の家の場所とかわかるか?」
「控えている、おい」
近くにいた黒服に指示を飛ばすと、黒服はすぐに部屋から出ていった。
「それで、復讐の機会は与えられるのか?」
「いや。
俺たちに任せてもらう」
「ガルム、それはできない相談だ。
マフィアはな、舐められちゃ仕舞いなんだよ」
「俺としては個人的には仇討ちとか好きよ?
でもそんなバカみたいな理由なら止めるかな」
「……おめぇもか、クロ」
「お忘れかもだが無闇に力を振るえばそれ以上の力でぶちのめされるのがこの異世界の真理だ。
身を持って知っているだろ?」
「穴があろうとこの街には法の秩序がある。
罪を犯した者には相応の償いをしてもらう……可能ならばな」
「……っち。
とっととブツ受け取って出ていきやがれ」
「お世話様」
「協力に感謝する」
帰り際に住所の書いた紙を受け渡された俺達はそのまま店を出た。
ガルムが深呼吸をする。
「はぁ……空気がうまい」
嗅覚の鋭いコボルトにとってあの店は相当に辛い場所だったようだ。
コノという娼婦はどうやらその名に恥じない程度には稼いでいたようだが渡された住所は普通の住宅街にある集合住宅の一室だった。
「これは予想外……」
「そうか?
こんなに高そうな香水の匂いがするが……」
彼女の部屋に入ってみると、そこはなんとも簡素な部屋だった。
簡素なベッドに机。
言い換えればぱっと見では全く金の匂いのしない部屋。
ただ、ガルムの鼻はそうではないらしい。
「寝具、特にシーツや中身が真新しい。
見栄を張るようなカネの使い方はしないようだ」
「美容にでも使っていたのかね。
……いや、驚いたな。
おいガルム、机の上を見てみろ」
「……領地経営指南書に貴族のススメ?
これは貴族用の教科書だろ?」
「やばい匂いがしてきたな、どうする?」
「愚問だ」
「だよな」
俺達は決意を固めて家探しを再開する。
そうして恐らくは犯人に繋がる書物を発見した。
俺はそれを見つけた際、反射的に鼻で笑ってしまった。
神様がいるなら答えて欲しい。
どうしてこんな運命を彼女に与えてしまったのか……──
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「クリーク子爵ですか?」
翌日、中央区にある貴族用高級ホテルへとやってきた俺とガルムは件の子爵の泊まる部屋を訪ねた。
居たのはナイスミドルとでも形容できそうな人物だった。
「……そうだが?」
「オータム騎士団の者です。
貴方に逮捕状が出ています」
いきなりガルムが出していた逮捕状に向かって火が飛んできた。
多少予測はしていたものの、少し驚きなが抜刀して火を切り裂く。
「……貴族を前に抜刀とはどういう了見だ?」
子爵のあまりの発言に俺は皮肉を込めてカカッと笑った。
貴族という人種にはクニは違えどある程度共通点がある。
美形なものが多いことと、魔法が使えることだ。
まぁ専売特許というわけではないけれど。
「よくもまぁぬけぬけと」
「私が誰か知ってるのか?
ウェスバニア国の名をもって抗議させて頂く」
「子爵、ここは独立貿易都市オータムです。
貴方の罪は裁判所にて公平な裁判をされた後に決定されます。
ご同行を」
「拒否させていただくっ!」
言い終わると同時にまた炎がこちらに迫ってきた。
今度は広範囲。
ガルムも抜刀し、延焼を防ぐため二人でなんとか魔法を全て切り裂いたが、クソ貴族は窓から飛び降りたようで姿を消していた。
不幸にも床に落ちて火の粉があたり、燃えてしまった令状を2人で見つめる。
「余所者の思考回路は単純だな」
「ガルム、お前わざと逃しただろ?」
「クク……しらんな。
こちらは職務を全うしようとしただけだ。
同行を求めた騎士に対しての魔法使用及び逃亡。
放火未遂とすでに極刑は免れんだろうさ。
あの糞はこの街のルールを知らなすぎる」
「だよな。
弁護士を付ければせめて故郷の土くらい踏めただろうに。
追えてるか?」
「ああ。
タバコと香水の混じった匂いで鼻がひん曲がりそうだが、見立て通りだ。
そろそろ行くか」
「あいよ」
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オータムは他国とは独立した自治権を持つ貿易都市であると同時に緩衝地帯だ。
ここには様々な種族や国が集まってくる。
価値観もバラバラな人々を解し諍いを解決するためにこの中央区にあるのが裁判所、そして各国の領事館だ。
クリークは祖国ウェスバニアの領事館へ逃げ込むつもりだったが、既に領事館前には騎士団が張っていた。
クリークは知る由もないが、ウェスバニア領事館の長である大使は、クリークが1人でここにやってきた場合、彼を有罪と見なし、この街の司法に突き出すことを決めている。
手配したのはガルムの異母兄弟であり、騎士団長であるソドムという人族だ。
「あ~ぁ、貴族絡みとなると直ぐこれだ。
それほどに手柄が欲しいかねぇ?」
「そう言うな。
俺やお前と違って腹芸が出来る兄上には守るべきメンツというのがある」
「理屈はわかるがねぇ。
捜査するならば貴賎無くだ。
そうすれば今回みたいに大物が捜査線上に浮上するもんさ」
「時たま思うが、クロは妙に老成しているな」
「真理を探求していると言ってくれ。
ま、でかいネズミ相手だがね。
……動いたぞ」
路地裏で張っていた俺の目は、しっかりと逃げ出す大きなネズミの影をとらえていた。
ネズミの名前は言うまでもない。
「どこに逃げようというのだろうな?」
「スラムに入った。
紛れるつもりだな。
放っておくと被害が出る。
行くぞ」
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「がぁっ!!」
壁に囲まれたスラムの袋小路。
そこで足を撃たれたクリークは体勢を崩してそのまま床に転がった。
撃ったのはもちろん俺だ。
いくら魔法が得意でも魔法ではない魔法杖から繰り出された弾丸を防ぐ術は彼にはなかったのだろう。
「観念しろクリーク子爵」
抜刀して距離を詰めるガルムを見据えたクリーク子爵は炎を放つ。
だが、それを防げないガルムではない。
魔法を切り裂いたガルムはそのまま距離を詰める。
だが犯罪者に怯えは見えない。
第六感が働いた俺は愛銃に話しかける。
「チェック、コリジョン・ワン」
『モード2アウェイクン』
音声魔術が発動して、発射される銃弾の種類が変更された。
引き金を引くと銃特有の破裂音と共に弾丸が明後日の方向へと飛んでいく。
だが、飛び出した銃弾は壁を反射し魔法を発動しようと突き出していたクリークの手のひらを貫通し、弾丸は壁へをめり込んだ。
追跡魔法を改良した跳弾魔法を付与された弾丸。
痛みにひるんだ隙を見逃すほどガルムは甘くない。
独特な呼吸法を元に繰り出した前世風にいうならば燕返しのような軌道の剣筋はクリークの両腕を切り落とした。
「ぎゃあああああああああああ!!」
自分の腕が落ちるさまは相当に訓練を積まなければ痛みとショックによりその後の反撃を難しくする。
「余計な事を」
ガルムは血を払うと納刀し、ため息をついた。
「結構危なかったのよ?
俺が打たなきゃ土魔法でお前の腹に風穴が空いてたぜ?」
呆れながら俺はクリークの両膝の皿を撃ちぬいた。
「跳弾魔法ってホント便利」
「そんな魔法の使い方をするのはクロくらいだ。
……さて、クリーク子爵」
ガルムはのたうち回るクリーク子爵の肩を踏みつけて地面に縫いつける。
子爵はもう悲鳴も上げられない。
よだれと涙を垂らしてもがくが、体格差故びくともしない。
「オータムの法に則り、貴方を処刑します。
──貴族であった事に感謝するんだな外道が」
「人の命を弄んだんだ。
報いは受けな」
ガルムがクリーク子爵を蹴り上げて剣を抜く。
宙を舞ったクリーク子爵の頭はそのまま身体と分かれてさらに一段空中を飛び跳ねた。
「人を守ると誓った剣で人を殺す。
騎士と言うのは本当に豪が深い職業だな」
「軽々しく殺人できる人間なんて人間じゃねぇのさ。
ガルムは違うだろう?」
「そうありたいと常々思っている」
「それくらいでいいのさ。
さっさと首回収して団長殿に渡しちまおうぜ」
「そうだな」
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ウェスバニア所属クリーク子爵の大量殺人事件。
立件は出来なかったがクリーク子爵と言うのは他の自治都市でも同様の犯罪を複数起こしていたらしい。
全てが女性絡みで被害者は明日の身ともしれない娼婦ばかりだった。
後妻をチラつかせ現地の恋人と言う不健全な間柄を形成して、飽きたら殺していたらしい。
その手慣れた具合から殺すことが目的だったのだと結論付けられた。
娼婦と言う点で前世のジャック・ザ・リッパーを思い出す。
前世の記憶にあったものと少しでもリンクがあると、そっちと関連付けてしまいそうになるのは俺の悪い癖だ。
クリーク子爵の処刑から数日後の正午。
俺は共同墓地にやって来ていた。
墓地の様相は世界が変わったとてさほど変わることも無いようで。
街の近くにある静かで見晴らしの良い丘にたくさんの墓石が並んでいる。
共同墓地はその中でもひときわ大きな墓石だ。
ここは主に身寄りのないもの、近くに墓がないものが入る。
今回の被害者コノもここに入った。
彼女が勤勉な人間でなかったのなら、今回もクリーク子爵の思惑通り、迷宮入りしていたかもしれない。
それほどまでに娼婦殺しと言うのは立件が難しいのだ。
だからこそあの子爵は笑えるほどに浮足立ったとも言える。
それもこれも彼女の部屋にクリーク領の資料があった事に他ならない。
ご丁寧に書物に下線まで引いていじらしく勉強していた彼女。
ピースは子爵への最短距離を示していた。
婚姻も結んでいないのにひたむきに領地経営について学ぼうとしていた彼女の姿を思い浮かべる。
どうして勤勉な性質の彼女がマフィアの仕切る娼館で娼婦などしていたのだろうか。
……いや分かっている。
ここは義務教育のある日本じゃない。
子供を守ってくれる法律のある日本じゃないんだ。
俺は酒を煽るとただ祈る。
例えそれが彼女の幸せではなくても彼女が穏やかな来世を過ごせるように……と。
「にゃあ」
耳元で猫の声が聞こえて見てみるといつしかの傾きネコのリリが俺の肩にグデっとしがみついていた。
「……このお転婆め。
またお母ちゃんが心配しているぞ?」
「にゃぁ……クンクン」
「おいこら、酒に興味をしめすんじゃあない!!
お前にゃ10年早いっての!!」
酒瓶を持った腕を這っていこうとしたリリの行動を見て慌てて瓶に蓋をするとリリをしっかりと抱き上げる。
「全く……。
ほら、帰るぞ。
しゃあねぇから帰りにササミでも買ってやるよお嬢様?」
そう言いながら墓地を後にする。
偶にはガルムでも誘って飲みに行くか。
ゴロゴロいうリリの顎をコリコリしながら聞きなれたオータムの喧騒の中を歩く。
ここは貿易都市オータム。
日本じゃないが今の俺の故郷と呼べる街──。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
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