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優しい世界を望んだ竜  作者: 黒龍
2/2

発現

【2】転機


「力が欲しいか?」

夢にしては妙にはっきりしている声が頭の中に響く。

「·····誰?」

辺りを見渡しても何も見つからない。·····どこから話しかけているんだ?

「私に形は存在しない。探しても無駄だ。強いて言うなら·····概念、とでも言っておくか。」

それは自身をそう名乗った。続けて、

「欲しいんだろ?力が·····全てを滅ぼせる程の力が。」

「全て·····?いや、力が欲しいとは考えてはいたけどそこまでは·····」

得体の知れない存在を前にしているのに不思議と自分が冷静でいた。

「いいや、お前は近い未来求める·····。滅亡を·····破壊を。」

本当にそうなるのか?と疑い考えようとするとますますわけがわからなくなってくる。

「まぁいい。まずは実感して貰おう。既にお前の中に力を与えた。最初だから何か壊せるとかじゃないが、使ってみるといい。」

「は?使ってみろって、そんな都合良く使えるものかそれ?いきなり「与えた」って言われても·····」

「日が昇ったらどこでも良いから出かけろ。その出先で機会が来る。」

「·····は?ますます都合良すぎ──」

「その時になればわかる。次の夜更けにまた来る。」

「え?あ、ちょっと·····おい!」

告げ口をして一瞬で消えてしまった。気がつくともう朝だった。

「何だったんだ、あれは·····」

夢なのか現実なのか、もやもやとわからずじまいで迎えてしまった朝。

·········はすっきりしない気分のまま、身支度を始めた。

そして言われた通りに出かけ始めた。

あの得体の知れない概念とやらが現れていなくても出かける予定があったが、偶然にも程があるのではないだろうか?

まぁ今は忘れていよう。今日は待ちに待っていた新作ゲームの発売日だし、何事も無く済めばただの夢の中の話で終わる!


·····はずだった。

帰る途中、裏通りに続く脇道の先で嫌な感じで絡まれている女性がチラッと見えてしまった。絡んでる方は見るからにめんどくさくなりそうな男数名、1人は大柄、残りの2人は普通の体格だ。話が通じる相手だろうか·····?って感じだ。

嫌がる声が聞こえてつい反応したらこれだよ。まさか機会ってこれじゃないよな?

·····だけど力が無くてもこういう場面に出くわしたら放っておけない質なのが自分だ。

「(ここは丁寧に対応して穏便に済ませよう·····。)」

「あのぉ·····お取り込み中の所お邪魔しますが·····」

「あァ?なんだてめぇ?」

「こちらの方、凄く嫌がっているように見えたので·····あ、ナンパでしたらもう少し嫌がられない工夫を·····」

「はァァ!?このオレをバカにしてんのか!?」

「1人のくせにオレたちに説教とかバカじゃねーの!?」

「コイツボコボコにしてから晒しちまおーぜ!」

「それサイコー!」

「ですから馬鹿にしてるんじゃなくて工夫をしてと·····」

「オレにはバカにしてるようにしか聞こえねーなァー!」

「(あぁ·····思っていた通りのめんどくさい連中だった·····もう殴られるしかないじゃんこれ·····)」

「「やっちゃえリーダー!」」

「オレに指図した事、後悔して死ねぇ!」

「っ·····」

もうダメだと覚悟した刹那、男の拳が何かに阻まれ奮った腕の勢いがそのまま返され、体格差があるにも関わらず、強く吹き飛ばし、壁に打ちつけた!

ほんの一瞬の出来事に吹き飛んだ男以外全員が呆然としていた。

「えっ·····?」

多分自分の中の力とやらが吹き飛ばしたのだろうが、発現者本人の実感があまりなかった。

「り、リーダーッ!!?」

「てめぇよくもリーダーを!」

「オラァァァァァ!!」

「え!?ちょ、待っ·····!」

つい身構えた自分だが、2人のナンパ男の攻撃はまた先程と同じ何かに阻まれて2人を吹き飛ばした。大柄な男が気を取り戻し、

「な、殴れねぇなら物投げれば·····!オラ!」

ポケットからナイフを出して、········目掛けて投げた。·····が、それも阻まれて跳ね返った。

「ひぃぃ!?」

大柄な男がギリギリで避けたナイフは勢い良く壁に突き刺さった。

「ば、バケモノじゃねーか!くそぉ、覚えてやがれ!!」

「り、リーダー!」

「待って、置いてかないでリーダーァ!」

ナンパ男達は情けなく逃げていった。·····解決した、で良いのかこれは·····?

「·····」

女性の方も若干引いてるように見える。

まずいな、これ。

「え、えっと·····もう大丈夫そうなので私はこの辺で·····さよなら!」

········も逃げるようにその場を去った。

人助けしたはずなのに何だかもう、新作ゲームで遊ぶどころじゃなくなってしまった。

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