第3章 初外泊
第3章 初外泊
3‐1
「もしもし?麻希?今日麻希の家に泊まるってことにしておいてくれない?」
私は麻希に電話でお願いした
「いいけど、ちゃんと理由は明日聞かせてね」って
一応協力してくれた
「もしもし?ママ?私今日麻希の家に泊まるね。」
そう一言言って勝手に電話を切った
「こうちゃん、あたし今日泊まるね。お家の方にあいさつしたいんだけど…」
と私が言うと
「今日は僕1人なんだ」
とこうちゃんは呟いた
その時、私の心臓は破裂しそうなくらい
ドキドキしていた
3-2
やばい。普通に考えたら、かなりやばい。
こんな、付き合って約1ヶ月の2人が同じ空間で寝るなんて…
今は6時。もう少しだけ暗い
「こうちゃん?お風呂入る?」
そう言ってから後悔した。
こんなに熱があるのに入るわけがない!
「えっ?僕は無理だと思う…」
「だよね…ごめん。」そう私が言うと
「なっちゃんが入ってきなよ?」こうちゃんは綺麗な目で私に言った
「あ、そう?じゃあ、そうする」
私がそう言うと、こうちゃんは満面の笑みで私を見た
「でも、服とかない」
私は1番重要なことを忘れていたのだ
3‐3
「僕のそのタンスの3段目あけて」
ベッドに寝ているこうちゃんは言った
「うわぁ。Tシャツいっぱい!」
そこには色とりどりのTシャツがあった
「好きな色の着ていいよ」こうちゃんは自信気に言った
そんなこうちゃんはやっぱり愛らしい
「あと4段目もあけて」
4段目の半分には、長いジーパンやジャージなど
もう半分には、短いズボンなどが
「お好きなのを」
とこうちゃんは微笑んだ
かなり迷ってしまった、そんな私を見てこうちゃんは「まだぁ?」と笑った
私は幸せだった
3‐4
ガァーガァー…
初めて聞いたドライヤーの音…
「だれ?」
背後から、細く震えた声が聞こえた
私はゆっくりと振り向いた
―――可愛い子
それが第一印象であった
そこには両目がクリクリしてて少し長めの髪の毛を2つに結った女の子がいた
「お家の人?」
私は恐る恐る聞いてみた
「はい…あなたは…?」
その可愛い子は私に聞いた
私は、焦りを隠せなかった
3−5
「わ、わたしは」
と私が言いかけた時
「春乃、今日帰らないんじゃないっけ?」
とこうちゃんが急に来た
「お兄ちゃん、この人誰?何?」
とその子はこうちゃんに聞いた
「風邪ひいちゃったみたいで熱下がらないから、お兄ちゃんの彼女が泊まりがけで看病してくれることになったんだ」
とこうちゃんはその子に説明してくれた
「初めまして!愛坂夏美です。よろしくね」
と私はその子にほほ笑んだ
「妹の春乃です」
とその子は少しも笑わず私に言った
「お兄ちゃん、どうでもいいけど私今日家にいるから」
そうこうちゃんに言葉を投げ捨てて春乃ちゃんはどこかへ行ってしまった
3−6
「ごめんね。うちの妹、僕が女の子と話しているの見るの嫌なんだって」
こうちゃんは私に謝った
「もしかしたら、春乃ちゃんこうちゃんのこと好きなんじゃないの?」
と私は言った
そしたらこうちゃんは「まさかぁ」と笑って誤魔化した
こうちゃんはきっと、春乃ちゃんの気持ちを知っているのだろう……
その後、春乃ちゃんは私たちの前に姿を見せなかった
少し心配だったが本音を言うといろいろとやりやすかった
3‐7
台所借りて、おかまにあったご飯でこうちゃんにおかゆ作って
おかゆ食べさせて
タオル濡らして、こうちゃんの額においたり
こうちゃんの汗拭いたり
楽しかった、幸せだった、この時間が止まればいいと思った………
――――気がつけば私は眠っていた
こうちゃんの手をしっかり握りながら
目を開けてみれば、こうちゃんと目が合った
「よくなった?」
私のその問いかけに
「うーん…なっちゃんが今日も泊まってくれるなら元気になるかもしれない…」
とこうちゃんは真面目な顔をして言った
「じゃー今日も泊まっちゃおうかなぁー?」
と私はふざけて言った
こうちゃんは冗談が言えるほど元気になっていたのだ