もう【外れスキル】なんて言わせない②
普段は好好爺と言った雰囲気のギルドマスターだが、真剣になると恐ろしいほど鋭いオーラを放つ。
「話はわかった。……この度はうちのバカ職員が大変失礼しました、キバくん。死亡確認を怠った冒険者ギルドの怠慢、としか言いようが無い」
ギルドマスターに事情を説明すると、話は簡単に進んだ。
彼は受付嬢を横目で睨むと、低い声でこう続ける。
「担当の者にはきつい処罰を与えますので……、それにキバくんへのお詫びと補償も十分に……」
「いえ、俺はライセンス失効を取り消してもらえればそれで良いですよ」
件の受付嬢はさっきから真っ青な顔をしている。
彼女は比較的新人だから知らないだろうが、俺とギルドマスターはそこそこ古い知り合いだ。新人の頃から何かと世話になっている。彼女の態度には腹が立ったが、この場ではギルドマスターの顔に免じて水に流すことにした。
「いつもすまない、キバくん。【嗅覚強化】スキルの評判が悪いばかりに、君はいつも不当な扱いを受けている。何とか改善しようとはしているんだが……」
「別にそれはギルドマスターのせいでもないですし、気にしないで下さい」
「そう言ってもらえると助かるが……しかし、体の方は大丈夫なのかい? アンドリュー達の報告によると急に謎の巨大魔獣が現れて、君はそれに瞬く間に殺されてしまった、だから自分達は逃げてきた、ということだったが……」
「その報告は嘘だらけですが……」
苦笑いが漏れる。
どうやらアンドリューは、自分達に都合が良いように事実をねじ曲げて報告したらしい。
まあ、仲間を攻撃し、囮にして逃げてきたとは報告できるはずもない。実質殺人行為だ。
当たり前だが、ダンジョン内でも殺人は重い罪になる。
いや、それよりも気になるのは……。
「彼らは魔獣の名前もちゃんと報告していないんですか? 現れたのは特定災害級魔獣のアトラク=ナクアですよ?」
「な、なんだって!?」
聞き取れなかったかな?
「それが本当なら……いや、キバくんが間違うはずもない! なんてことだ、すぐに対処しなくては! 即刻ダンジョンへの立ち入りを禁止に、討伐隊を編成、いやギルドの手には負えない、まずは国王に報告か、それに……」
「あー、待ってください。確かにアトラク=ナクアだったんですが、対処は必要ありません」
「何を言っているんだね、キバくん!? 下手すればこの国が滅びる程の相手だぞ!?」
「あー、ですから。奴はもう、俺が殺したので」
「……は?」
ギルドマスターの貴重なポカンとした表情頂きました。
特に嬉しくはない。
「証拠ならありますよ。討伐証明部位が分からなかったので、適当に剥いできたんですが……」
そう言いつつ、懐から巨大蜘蛛《アトラク=ナクア》の素材を取り出す。
奴はデカすぎて、とても全体は持ち帰れなかった。
討伐の証拠になりそうな部位だけ幾つか採取し、残りはギルドに回収して貰おうと思っていたのだ。
「た、確かに蜘蛛型魔獣の素材のようじゃが……そ、そうだ、【鑑定】持ちに見せねば! 君、早く呼んできなさい!」
真っ青になっていた受付嬢は、急に声をかけられて変な反応を返す。
「な……何を言ってるんですかギルマス!? こんなの偽物に決まっています! 【外れスキル】持ちなんかが、討伐できるはずがありません!」
「バカ者! まだ外れスキルなどと言っているのか!」
ただでさえ問題を起こしているのにこの発言。ギルドマスターが怒るのももっともだ。どうやら彼女は相当な問題児のようである。
が、言い方は別にしても……急にこんなことを言われても信じられないのもわかる。
昨日までの俺ならやはり信じなかっただろう。
「良ければスキル鑑定機も持ってきてくれませんか? それで納得して貰えるはずです」
あまり目立ちたくもないが、変な疑われ方をしても敵わないからな。
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