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那朗高校特殊放送部!

那朗高校特殊放送部~学校の七不思議編~

作者: 那朗高校特殊放送部

今回の登場人物:紅葉黑音、倉井雪絵、与那嶺瀬奈

筆者:紅葉黑音


「ねぇ、那朗高校の七不思議って知ってる?」


放課後部室に向かう途中で、倉井さんがふと聞いてきました。


「七不思議?」

「そう。七不思議」


倉井さんは、まるで近所に新しくできたショップの話でもするように、

普段聞かない単語をぶっ放してきました。


「倉井さんがそんな話なんて、ちょっと意外」

「私の趣味ホラーゲームよ?どっちかっていうと興味ある方だからね?」

「あっ…そういえば…」


意外と噂好きな倉井さん。

とはいえ、色恋沙汰とかじゃなくて完全に都市伝説とか、そっち方面でしたが。


「で、内容とか知ってるかしら?」

「うーん…内容まではちょっと…」

「そう…残念」


少し残念そうな、というか完全に声と顔に出ている倉井さん。

私もその名前だけは聞いたことある程度で、内容までは知りませんでした。

那朗高校の七不思議…確か新聞部が発行してる新聞で見かけたような…?

記憶を巡らせてどうだったか思い出していると、


「あっ、私知ってますよ…」


と、後ろから声がして、

倉井さんと2人、同時に振り向いたら、そこには与那嶺さんが居ました。


「あら、そうなの?」

「はい、ちょっと前にクラスで話題になってて…」

「ふぅん、ちょっと詳細を聞かせて貰えるかしら?」

「わ、わかりましたっ」


いつもよりちょっと嬉しそうな感じの与那嶺さんは、私たちの横に小走りで駆け寄り、

部室に向かうために歩きながら七不思議に付いて話し始めました。

私達の歩くスピードはどちらかというと遅めですが、与那嶺さんはさらにゆっくりなので、

与那嶺さんはやや早歩き、私と倉井さんはやや遅めに歩いています。


「まず、七不思議は七つあって…」

「それはまぁ…当然と言うか…」

「分からないわよ?結構7つ目を誰も知らないとか、秘密の8つ目があるとか、結構バリエーションあるのよ?七不思議って」

「へ、へぇ…そうなんですか…」


マニアックな七不思議トークに、早くも置いて行かれそうな私。


「でですね、まず一つ目の不思議なんですけど…」


与那嶺さんは一本指を立てて、こちらを見ながら語ります。


「"歴代の生徒会長は、何か特別な力を持っている"って奴です」

「今年の生徒会長も個性の塊、って感じですからね…」


詳しいことは今は話しませんけれど、

生徒会長さんもこのアカウントに自伝が出てるので、ちょっと読んでみると良いかもしれませんね。


挿絵(By みてみん)


「でもそれ本人に聞けばわかる事なんじゃないの…?」

「仮に何かあっても普通は聞けないじゃないですか…何か特殊能力持ってるんですか?とは…」

「まぁ確かにそうやって都市伝説は生まれたりするのだけれど、普通誰かが聞いて決着つくもんじゃない?」

「確かに」

「少なくとも七不思議に認定されるほど長い歴史は生まれないと思うわ」

「…それでも七不思議になってるってことは、やっぱり何か不思議な力が…」

「知ろうとしたした人は何かしらの方法で消されてるのかもしれないわね」

「あ、あはははは…」


そんなバカな…

あの生徒会長にそんな一面があるとは思えません。

キレると怖くはありますが…



「その…せ、詮索するのはやめておきませんか…?」


生徒会長にそんな唐突な質問、出来ないですよね。

今年の生徒会長はなんだかんだ答えてくれそうな気はしますが。

まぁとにかく、消されないうちに次の謎に行きましょう。




「二つ目の謎は、"この学校の焼却炉は戦前から使われてて、怪しいものまで焼いてきた"らしいです」


「またなんというか…地味な謎ですね…」

「っていうか普通にあり得そうな謎よね」

「ですね…」


那朗高校の焼却炉は、学校の年代の割にボロいというか、

妙に歴史のある色合いをしています。

戦前から使われていると言われれば、確かにそうかも、という説得力があります。

後半の噂については…ノーコメントにしましょう。


「これも調べればわかりそうな七不思議ではあるけど、調べてみようかしら…」

「そう言えば、七不思議って解明しようとすると呪われるって噂もありましたよね」

「確か、一つ究明したら、1週間以内に7つ全て究明しないと行方不明なる、ってやつだったかしら?」

「あ、多分それ……かもしれません…」


ホラーゲームもやらなければ、ホラー番組も見ない私の都市伝説知識はガバガバで、

倉井さんのそれだったかも正直微妙ですが、多分、それなんじゃないかなぁ…?


「あぁ、それね、多分七不思議を究明されるとつまらないからって流れたデマ的な奴よ」

「そ、そうなんですか…?」

「だってそうでしょ?3つだけ解明された七不思議の残り4つとかかっこ悪いじゃない」

「まぁ、確かに…」


新しく3つ謎を作るのもアレだし、かといって4つしか無いのもパッとしない。

という倉井さんの主張には、確かに説得力があります。

ちょっと夢が無い気はしますが…


でも行方不明になりたくない私は、倉井さんの説を信じることにしましょう。




「で、3つ目の謎なんですけど…」


まだ部室には付きません。

話しながらでも、案外遠い部室。


「3つ目は、"旧校舎が取り壊されずに残っているのは、初代校長が決めたから"って物です」


「うちの七不思議そんなんばっかなの!?」

「地味なやつが多いですね」

「わ、私が聞いたのは本当にこれなんです…」


都市伝説ってもっとミステリーな感じかと思っていましたが、

どうもここの七不思議はそうでは無かったようです。


「っていうかこれ、答えまで出ちゃってるじゃないの…」

「確かに授業では使われてないですし、何で残ってるのかは謎ですけどね」


一応、演劇部とか、一部の部の活動場所にはなってますが…


「で、でも、前の二つと比べたら都市伝説っぽくないですか…?」

「確かにそうだけど…いまいちオカルト感に欠けるのよね…」

「ひとりでに鳴るピアノとか、そう言うのの方が好きなんです?」

「そういう訳じゃ無いけど、学校の七不思議だと、そっちの方がらしくないかしら?」


ど、どうでしょう…私はあんまり学校の七不思議とか知らずに生きてきましたし…


「わ、私はよくわかりません…」


与那嶺さんもいまいちこれといった像は無い様子です。


「ま、らしいらしくないの話は主観的だし、これくらいにしとこうかしら。でだけど…」


倉井さんはそこにはあまりこだわらないらしく、あっさりと話題を変えてきました。


「初代校長の意向ねぇ…これはなんかキナ臭い感じがするわよね」

「また探るんですか?」

「暇があったら、って感じかしら。あそこ立ち入り禁止の部屋とかあるし」

「企画に出来そうと言えば出来そうですね」


そんな提案をしたとき、横の与那嶺さんから息を飲むような声がしたように感じます。

そういえば与那嶺さんホラーは苦手だったような…


「とはいえまぁ、仮説が無い訳では無いわ」

「え、えと…あの…」


やや怯えかけている与那嶺さんをよそに、倉井さんは続けます。


「仮説ですか?」

「そ、初代校長と、旧校舎、そこから導き出される物は…」

「こ、怖いのはやめてくださいよ…?」


一呼吸入れる倉井さん、

なんとなく時間まで止まったような錯覚を覚えますが…



「多分、利権関係のドロドロした事情よ」

「それは流石に夢が無いのでは…」

「現実的と言いなさい」





そんなこんなで部室に到着した私たちですが、七不思議会議は終わりません。

まだ3つしか不思議が出て無いですしね。


部室に着くや否や、倉井さんが部室のホワイトボードに、与那嶺さんから聞いた七不思議を書き出していきます。

私が最初に企画に出来そうとは言いましたけど、これ本当に企画にするんでしょうか…?


「それで、4つ目なんですけど…」


倉井さんの現実的な仮説ではビビらなかった与那嶺さんは、調子を崩すことなく話を続けます。


「4つ目は"那朗高校には秘密の地下室があって、歴代たった一人の部員が切り盛りする謎の部がある"ってやつです」


「あ、これは都市伝説っぽい」

「そうそう、こういうのよね。七不思議って」


「ち、地下室の入口なんて、見たこと無いですけどね…」

「そういうのは隠されてるものよ。当然、その活動内容も…」

「な、内容も…?」

「当然、公にできない裏の部活動でしょうね…」

「っ!!」

「校則では捌けない学校の悪事を裁くとか…」

「えっ…」

「この学校の運営を安定させるために、良からぬものを作ってるとか…」


さっきから倉井さんがドヤ顔で与那嶺さんをビビらせて遊んでます。

やめておいてあげた方が…


「ま、七不思議なんて蓋を開ければなんてことないものだったりするものよ」

「そっ、そうですか…」

「きっとそんなもんよ」


いつもそんなに表情が変わらない倉井さんですが、

多分今は楽しんでると思います。


「でも、もしかしたら…?」

「ヒッ!!」

「いい加減与那嶺さん怖がらせて遊ぶのやめません?」



挿絵(By みてみん)





「5つ目の謎は、"美術室準備室には、絶対に見てはいけない絵画がある"です」


「なんか急に普通の学校の七不思議っぽくなったわね」

「なんというか、とても"らしい"不思議ですね」

「調べようと思えば出来そうだけど答え合わせは出来ないし、あまりやろうとも思わない感じ、完璧ね」

「でもこういう七不思議、美術の先生とかはどう思ってるんでしょうね」


よくある七不思議は、理科室とか音楽室とか、特別教室にある事が多いですけど、当然その教科の担当教師がいる訳で、そういう噂って当人はどう思ってるんでしょうね。

正直あんまりいい気持ちはしてないような気がします。


「どうなのかしら。真相は知ってても教えないようにしてるんでしょうね」

「それはそれでなんだか心苦しそうですね」

「とはいっても、学校の七不思議なんて基本どの学校にもあるし、仕方ないとは思うわよ」

「先生って大変なんですね…」


「でもこれは調べ甲斐があるわね」

「み、見てはいけない絵画を調べるんですか…?」

「先生から安全だってお達しが出たらね」

「そこは聞き出すんですね…」

「そりゃそうよ。別に死にたいわけじゃ無いもの」


そう言いながら倉井さんはホワイトボードにあった謎に、赤丸を付けます。

その真意は図れませんが、なんとなく分かります。



「6つ目は?」


少しテンションが上がった気がする倉井さんは、次の謎を急かしています。


「6つ目はですね、"夜中プールで動画を撮ってはいけない"です」


「これまた王道ね」

「いかにも何か映ってそうな感じですよね…」

「でも、この学校で過去プールで事故が起きたって聞いたこと無いのよね」


ホワイトボードに書き込みながら、ちょっとアッサリした感じで倉井さんは呟きます。

もしかして少しテンション下がった?

けれど、興味を失った感じではなく、考察は続きます。


「となると、昔偶然何かが写り込んだのを、地縛霊か何かと勘違いして広まった、って説が有力かしら」

「で、でもそれって、一回は撮れたって事ですよね…」

「ちょっとした浮遊霊なら、霊感ある人ならたまに撮れるわよ?」

「そっ、そうなんです…?」

「そうよ。私も撮ったことあるけど見る?」

「や、やめときます…」


実は私も一回倉井さんの撮った心霊写真見たことありますが、

なんというか、まぁ、確かに何かあるけど…って感じでした。


本人曰く、"役に立たない程度の霊感"らしいので、写真もそんな感じなのかもしれません。


「でもこれも、プールに一日定点カメラとか置いておけば検証できそうね」

「ま、またやるんですか…?」

「これならちょっとした検証企画にはなるでしょ」


もしかして本当に、七不思議を解明する企画でもやるんでしょうか…

私は遠慮したいので、出来れば男子の皆にやってもらいたい所です。





「それで、最後の謎は何ですか?」


七不思議はついに大詰め。

学校の七不思議にはあまり詳しくない私も、7つ目は何か特別な感じだってことは聞いたことあります。


「7つ目の不思議は、"那朗高校には異世界と交信する部がある"ってものらしいんですですけど…」


「「くっ!!」」


私と倉井さん、2人で噴き出してしまいます。


「もしかしてそれ私らの事じゃないの!?」

「異世界と交信してる気は無いんですけどね…?」

「昔はそんな事言ってなかったっけ?紅葉が一人でやってた頃」

「そ、そうでしたっけ…?」


記憶にあるような、無いような…


どちらにせよ、インターネットを介して動画やSNSという形で発信しているだけなのに…

いやまぁ、マジで異世界に行った事はありますが、それはバレてはいないはず…


「ついに私らも七不思議の仲間入りなのね…」

「それはそれでなんか複雑な気分ですが…」


もはやホワイトボードに書き込む気力すらなく、倉井さんは力なく椅子に座り込みます。


「っていうかこの部だって出来て2年経ってないじゃない!それまでの7つ目はなんだったのよ!」

「そ、それは分かりません…これしか聞かなかったので…」

「まぁそうよね…」

「もしかしたら前回のは誰かに暴かれちゃったのかもしれませんね」


個性的な生徒が多いここ那朗高校は、当然新聞部の個性も強く、

オカルトに強い部員とかがいて、解き明かしてしまったのかもしれません。


「まぁ、その可能性は十分にあるけど、何で次が私らなのかしら…」

「この学校で何が一番の謎かって聞いたら、うちの部なのも無理は無いのかもしれません…」


世界で唯一の部ですし、普通の放送部の活動は一切してないですし、

新入部員向けの部活動紹介などもしてません。


「意味不明な活動してるのってのは紅葉も認めるのね」

「実際月1で動画出してるだけですし…」






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「さて、」


全ての謎が出そろった今、倉井さんが神妙な面持ちで話し始めます。


「これで7つ全ての不思議が判明した訳だけど…」

「そもそもなんで急に七不思議の話を始めたんです?」


最初から疑問に思ってた事を、ついに聞いてみました。

始まりも唐突でしたし、これを聞く理由も知りません。

そんな問いに倉井さんは、


「昨日隣の生徒がそんな話してたのよ」

「隣の人?」

「そう。それで気になったのよね」

「それ、私とかじゃなくてその人に聞けば良かったんじゃないですか…?」

「嫌よ、あんな陽キャに聞くなんて」

「あ、あはははは…」


その時は乾いた笑いしか出ませんでしたが、まぁ、気持ちは分からなくもないかなぁ…

くらいのテンションの生徒が倉井さんの隣に居るのは知ってます。


「話戻していい?」

「はい」



「で、七不思議が全部そろった訳。それで、」


また席を立った倉井さんは、ホワイトボードの前に陣取りました。


「いくつか検証できそうなものもあったし、やってみない?」


「「……」」


広がる沈黙。


「あれ、反応薄いわね」


「えっと…その、そういうの怖いですし…」

「わ、私もその…そういうのはあんまり干渉しない方が良いかなぁ…って思います」


事なかれ主義…というわけではありませんが、

あんまり不気味な事には関わりたくない性格ではあります。

異世界?あれはまぁ…帰ろうと思えば帰れるので…


「…仕方ないわね。ホントは紅葉には参加して欲しかったけど、無理強いは出来ないわ」


倉井さんは小さく溜息を吐くと、そのまま外に出ていこうとします。

幼馴染とはいえ、何故私を巻き込もうとする。


「じゃあ、他の連中を誘ってくるわ」

「どうしても解明したいんですね…」

「当然」


そう言いながら倉井さんは部室から出ていきました。

残された私と与那嶺さんは、お互いに顔を見合いながら、


「あ、あれ、放っておいて良いんですか…?」

「ああなると多分私が止めても止まりませんし…」

「な、なるほど…」


面倒な事にならない事を祈るしかない2人でした。

倉井「城嶋君」

城嶋「な、なんですか先輩」

倉井「学校の七不思議って興味あるかしら」

城嶋「え、学校の七不思議…?」



紅葉(って今頃なってるんですかね…)

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