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第10話 前に進んでいる。



 川崎さんはあまり自分から話をしようとしない。

 だから川崎さんと会う時間を当初は結構困ったりしていた。というのも最初は何も喋らずじっと見つめてくるだけなのだ。これだけ綺麗な人に見つめられるのがこんなに辛いとは知りませんでした。けれども慣れてくると逆にこれがとても可愛く感じるようになっていた。ほんと不思議。


 そういえば一緒に過ごすようになってから寝ぼっち生活は終りを迎えていた。いや怪我が治るまでの期間だろうけどね。休み時間になると必ず川崎さんはやって来て僕の側でいろいろと世話をしてくれる。俺は男どもの嫉妬の視線が痛くて痛くてたまらないんだが川崎さんはそういう視線を気にもしない。


「別に周りがどうこう思っても私には関係ないわ」


 なんて言っちゃったりする。


「川崎さんは好きな人とかいないの? いたら勘違いされないかな? そこは気になる」


 俺はちょっと不安に思っていたことを彼女に告げる。


「いないから安心して。気になる人ならいるけどね。でもその人が勘違いすることはまずないから」


「それならいいんだけどね」


 僕はそううなずいた。ちょっと気になる人っていうのが引っかかったけど。


 そうそう、川崎さんが側にいる影響か玲が側に来なくなった。本当に良いことなのだがその玲がなにかおかしい。いつも元気に周りと会話する玲がここのところとても静かで無表情なのだ。あんな玲は見たことなかった。

 でも俺が気にしても仕方ないと考えないことにした。そうしないと、玲から離れないと思い出してしまう嫌な嫌な記憶があるのだから。


 話は変わるけど川崎さんが通学も一緒にしようと言ってくれたが流石に申し訳ないと最初は断っていたのだけど数日後には一緒に登下校するようになっていた。鞄まで持ってくれる優しい川崎さん。うちの母さんも気に入ったようで、帰宅した際に「お茶でも飲んでいかない? 」と誘う始末。

 まあ川崎さんもうちの母さんと会話するのが嫌では無いようで何より。たまに「ガールズトークするからトモくん、部屋にでも行ってて」なんて母さんに追い出されたり。まあいいんだけどさ。


 とりあえずいい感じで学園生活を送れるようになってきた気がする。男どもの視線は痛いが。

 あの痛みも少しずつだが和らいできている。ひとりぼっちで寝ていた時はやっぱりふと思い出すこともあったりでしんどいときもあったけど。

 川崎さんに会って、見つめられたり会話したり一緒に食事したり緊張したり照れたりと思い出す余裕もほとんどなくなってしまった。


 


 うん、少しずつ前に進んでいるそんな気がした。 

 


お読みいただき有難うございます。

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