最後の責任
髪型を変え、生活環境も変えた。美味しい物を作ったり、食べに行ったりし体重も増やした。胸のサイズもAAからAサイズに、背筋を伸ばし、猫背も矯正した。外見が内面を変えるのか? 俺と一緒にいる事が楽しいのか? 妹は笑顔でいることが多くなり、性格も明るくなった。まあ、オタクなのは変わらないけど……でも、これなら……彼氏、作れるんじゃないか?
化粧も練習させ、顔の良さにもさらに磨きをかけた。
俺はこの一ヶ月で妹に対してやれる事は全部やった。
これで彼氏が出来なかったら……ああ、いいよ、責任取ってやるよ!
俺はそれだけ自信があった。今の妹は見違えた……1ヶ月前ボサボサ頭で芋ジャーを着てたあの時とは比べ物にならない位に……他の男に取られるのが惜しいって思うくらいに……
こういうのを親心っていうんだろう……この気持ちは決して恋心ではない。
「よし……これで完璧だ、萌、今のお前なら彼氏が出来てもおかしくない!」
「本当?」
「ああ、よっぽどの事が無い限り行ける……と思うぞ」
妹は俺から見ても、可愛いと思える位に変わった、この間一緒に出掛けた時も、何人もの男が妹を見て振り返っていた。
「本当!」
「ああ、大丈夫だよ、絶対に出来るよ……あ、そうだ聞いた事なかったけど、お前ってさ、好きな人とか居ないのか?」
「いる……よ」
「…………そ、そうなの? か、あはははは、なんだ早く言えよ、そうか…………あ、じゃあ……そいつの好みを調べた方が手っ取り早かったんじゃねえかよ」
「え……う、うん……」
「まあ……でもさ、今のお前なら、大丈夫だよ、うん……」
「本当に?」
「……ああ、本当だ、俺が保証する!」
「…………」
俺がそう言うと妹の顔から笑顔が消えた。
「ど、どうしたんだ?」
「ううん……」
「なんで……そんなに寂しそうな」
「お兄ちゃんはさ、私に彼氏が出来たら……嬉しい?」
「え? そ、そりゃ……」
「私ね……楽しかった、お兄ちゃんとずっと一緒に居れて、一瞬にお出かけして、この一ヶ月凄く楽しかった」
「そ、そか……」
「ありがとうね……お兄ちゃん」
「あ、ああ……」
俺も……楽しかった……こんなに毎日一緒にいても、全然嫌じゃなかった。変わっていく妹を見て、凄くうれしかった。でも……これって誰かの為にやってたんだって思うと……惜しいって、悔しいって少し思う……ほんの少しだけそう思う……思ってしまう。
「…………じゃあ……私、今から……告白……して来ます」
「え?!」
「駄目だったら、お兄ちゃん……責任取ってくれるんでしょ?」
「いや、それは…………ああ、取るよ責任取ってやるよ!」
「本当?」
「ああ……でも……大丈夫、今のお前なら絶対に大丈夫だよ!」
「そか……」
「ああ…………」
「…………じゃあ、行ってきます」
妹はそう言うとゆっくりと振り向き俺の部屋の扉を開ける。良いのか俺……あの扉が閉まったら……もう妹は……
俺は何か言わなければいけないと思った。でも何を言って良いかわからない……妹に何か。
妹はゆっくりと扉を閉める、こちらを振り返らずに、俺を見ずにゆっくりと……
そして……俺の部屋の扉が完全に閉まった。俺と妹の楽しい夏休みが……今、終わった…………終わってしまった。
「良いんだ、これで……」
そう思いながらベットの上に座り込む………これで良かったんだ、妹も好きな人と…………っていうか、ちょっと待て、妹の好きな奴って誰だ? あの総受けとか言ってた妹の事をバカにした奴か?
いや、駄目だろ、そんな奴最悪だろ? そんな奴に告白して、オッケーされるとかマジで外見しか見てないって事じゃねえか!
駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ、そんな奴に、そんな奴の為に、俺はそんな奴の為に妹をあそこまで可愛くしたわけじゃねえ!
「まだ間に合う! 今ならまだ」
俺は立ち上がり、扉を開け部屋を飛び出す! 妹を追いかけ、追いかけ……
「お、お前……なんでここに?」
妹は俺の部屋の扉の横に立っていた。
「ん? お兄ちゃん出てくるのを待ってたの」
「俺の事を? な、なんで?」
「…………好きな人に告白をする為に」
「…………は?」
そう言うと妹は俺に向き合い、笑顔で、今までで最高の笑顔で言った。
「お兄ちゃん……ずっと好きでした……私と付き合って下さい!」
「………………はあああああああああああ?」
「駄目かな?」
「いや、そんな……だ、駄目だろ駄目だよ! お、お前何言ってるんだ?」
「そうかーーー駄目かーーー」
「なんで棒なんだ、いや、駄目だ、兄妹で付き合うとか」
「わかった、じゃあお兄ちゃん、責任取って!」
「は?」
「駄目だったら責任取ってくれるんでしょ?」
「あ! あああああああああ!」
「言ったよね? 告白が駄目だったら、彼氏が出来なかったら責任取るって、私、お兄ちゃん以外と付き合うつもり無いよ?」
妹はウインクしながら俺にそう言った……そうか……そうか、俺は……妹に……まんまと嵌められたのか……
しかし……一体どこから? 俺に責任取れって言った所から? 最初に泣きついた所から? まさか、もっと前……そうだよここ1年くらいであいつ急にオタクになり、だらしなくなったんだ。こいつは小学校までは評判の美少女だったんだ……それが急に……
まさかこの日の為に……全部?!
「どうするお兄ちゃん? 付き合う? 責任取る?」
「いや、それは……」
「約束したよね?」
「した……」
「どうする~~~♪」
嬉しそうに俺に向かってそう言う妹……悔しい、悔しいけど……どこかでホッとしている自分がいた……俺の好みの女子……俺が作った俺好みの女の子に、可愛い女の子に、好きって言われて……俺は凄く嬉しかった。たとえそれが妹だとしても……」
「わかった……わかったから……最後に一つだけ聞かせてくれ」
「なーーに?」
「お前本気なのか?」
「当たり前でしょ?」
「――――わかったよ、じゃあ…………」
俺は妹を抱きしめた、強く強く抱きしめ、そして耳元で囁いた。
「責任……取ってやるよ……」
妹に彼氏を作るって言った責任、妹に彼氏が出来なかった責任
どっちの責任を取ったかは……いつか……また。
今まで書いた妹物中では一番の大失敗作だったかも。
もうちょっとじわじわ可愛くなっていく妹の姿を、それを見てどんどん惹かれていく兄を書きたかったけど……さすがにモチベーションがorz
次頑張ります~~( ;゜皿゜)ノシ
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