表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/27

チート能力を見せるようにせがまれて その1

「じゃ、すみません。何日かお言葉に甘えてもいいですか」


 もちろんだよ! とアウラ喜び、イリスさんもほほえんでくれた。


 アウラは後ろの抽出から巻紙を取り出して、羽根ペンとインキ壺を用意した。


「いま、滞在許可書作るから、ちょっと待ってね」


 紙にさらさらとなにやら書き付ける。おれはその文字を読むことは出来ない。滞在許可書と言っていた。なにかの書類だろうか。


「異世界からやってきた人を泊めるときは、一応その許可書を提出しなきゃならなくてね。そういう決まりなんだよ。ここにサインして」


 アウラは巻紙から書いた部分を切り取ると、白く細い指で書類の一番下をさした。そういう決まりなら仕方がない。おそらく、アウラの名前が横に書いてあるのだろう。おれはアウラの名前に並ぶように自分の名前を書く。


 名前を書いている途中、イリスさんの顔をチラッと見たら随分表情が固かった。アウラも妙に真剣なまなざしを向けている。


 おれは自分の名前を書いた書類を見て、ここには一体なにが書かれているのか。少し不安になった。が、彼女たちをもう信じるしかない。


 名前を書き終えると、見間違えだろうか、紙が青く光ったような気がした。


 イリスさんがぼそっと、


「発動しました」


 と意味の分からないことを言った。


「ありがとう。これでもう大丈夫だよ」


 アウラは唇をすぼめフーとインクに息を吹きかけて、乾いたのを見計らうと、クルクルと円筒形にして紐で結わいた。


「で、ヒサヤ。あなたどんなチート能力があるの?」


 そう訊ねるアウラも、イリスさんも。瞳がらんらんと輝いていた。


 チート能力。ぐいっと意識を集中すると視界の中にうっすらとおれのステータスが浮かぶ……ことはなかった。


「いや、おれそういうのないし」


「またまた、謙遜しちゃって」


 しがない史学科専攻のおれに特殊な能力などあろうはずもない。


「謙遜なんてしてないよ」


 気まずい沈黙が流れる。


 アウラもイリスさんも動きが止まってしまっている。おれは仕方なく、目の前の茶を啜ったが、意識しての茶を啜る行為というのは随分と精神をすり減らすものだった。


「……もったいぶらないでよ。本当はなにかあるんだよね?」


「わたしからもお願いします。ぜひ、異世界のお力を拝見したく」


 アウラのフレンドリーな頼み方なら断りようもあるが、女神のようなイリスさんに真顔で頼まれたのでは断るに断れない。


 今のおれに出来ることは……、と部屋の中を見回した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ