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ははは、未開人め

「電話したり、ネットにつなげて情報とったり……」


 と説明したところで余計訳がわからなくなる。


 彼女はおれの手元のスマホをのぞき込む。


「写真、撮れるんだよ。なんていうかな、景色とかをそのまま、この画面に残せる」


 やっぱり、おれの言っていることがわからないようだった。実演して見せた方が早い。カメラモードを立ち上げて辺りの景色を写す。画面に景色が映り出されていることに、アウラは驚いているようであった。


「ほら、ここにレンズ……、目がついている。この目で見たものが、ここに映し出されるで、このボタンを押すと――、景色が固まってここに残る」


 アウラはおれの手からスマホを奪い取る。


「すごいっ、どうなってるの? どうやるの?」


 おれはもう一度撮影モードにして渡してやる。


 彼女は様々な方向にカメラを向けて、そこに映る画像を楽しんでいる。


「あ、ヒサヤ、出てきたよ、ここに」


「下のボタン押してみな」


 パシャリとシャッターが切られた。


「ヒサヤが残ってる」


「おまえも撮ってやるよ。動くなよ」


 おれはポートレートモードに切り替えて、アウラを写した。われながらベストショット。神はなんてものを造形したのだろうか。ここで、アウラを撮りまくって、帰った後に写真集にして売り出したら儲かるのではなかろうか、などという卑しい考え。


「へぇ。わたしがいる。なんか変な感じ。鏡とも違うし。わたしってこんな感じなんだ?」


「こういう機能もついてる。ちょ、ここに立ってて、動かないでね」


 でも、それよりも、記念になる写真を欲しいと思った。おれはセルフタイマーをセットして、手頃な木の枝にスマホを挟んだ。そして、アウラの隣に戻る。


「なにしてんの?」


「動かないでって、で、あの目の方を見てて」


 パシャリと音がしてシャッターは切られた。スマホには上手い具合に二人が映っていた。


「へぇ。おもしろい。不思議な力、あなた持ってるじゃない」


「でも、もうバッテリーがなくなる」


「バッテリーって?」


「燃料がなくなって、動かなくなるってこと」


「入れれば?」


「電気だよ。あるの?」


「なにそれ? やっぱりあなたは使えないわね」


 やっぱり、とか改めて言われるとムカつく。が、写真すら、電気すら、ご存じない未開なやつを相手していると思えば、優越感すら湧いてくる。


 そうだ。おれは文明人なのだ。おまえら蛮人とは違うんです。といってもなにも出来ない寂しさよ。カメラの他にこの世界で使えそうなアプリはなかろうか。しかし、電池が……。

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