美女の次は美熟女だし
「さぁ、ここ、座って、ちょっと待ってて」
おれはリビングダイニングらしき部屋のテーブルに座らされた。随分と年期が入っているが、分厚い木材を惜しげもなく使っている。こちらの世界ではありふれた食卓なのかも知れないが、元いた世界では相当の値がつくだろう。
天井も高い。部屋を見回すが、掃除も行き届いている。あの女が掃除しているのだろうか。
テーブルには椅子が四脚。四人家族と考えていいのだろうか。
バタバタと先ほどの女が戻ってきた。もうひとり、姉だろうか、年嵩の女性を連れていた。こちらも、ため息が出るほど美しいひとだった。美魔女、というカテゴリーではない。もっと、清楚な佳人である。
おれは思わず椅子から立ち上がって会釈をした。
「わたしが捕まえたんだよ~」
女はうれしさを隠そうともせず、女性に自慢していた。しかし、捕まえた、というのはおれのことなのか?
「ほらほら、みんな座って。どうしよう。あ、じゃ、まず自己紹介。わたしはアウラ」
早口でアウラはいうと、おれの方へ手を差し向ける。自己紹介せよというつもりらしい。なにをどう紹介したらいいのだろうか。
「田中久也です」
アウラも自分の名前だけだったので、おれも名前だけで充分だろう。
「初めまして。イリスと申します」女性は静かに、だが、柔和な笑顔で言う。「タナカさん、と仰るのですね。失礼ですが、この世界の方ではないとお見受けするのですが」
「お母さん、なに言ってるの!? 見てよこの服、この顔! この世界の住人なわけないでしょ。絶対異世界の人だよ!」
お母さん? ということは、イリスはアウラの母親ということだろうか。
「あ、はい。異世界から参りました」
アウラにも、そして、イリスにもぱっと喜びの色を頬につけた、
「ヒサヤ、こっちに来てどのくらい?」
とアウラ。すでにため口である。君よりかはたぶん、おれの方が年行ってるような気もするんだけど。
「いや、さっき来たばっかり。突然だよ。だから、右も左もわからない」
アウラは小さくガッツボーズをした。