表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/27

イリスさんに話してしまう

 竈の炎もどうにか安定してきた。


 イリスさんは色々切ったり、煮たり、焼いたりしている。本当にアウラの手伝いがなくて大丈夫なのだろうか。


「アウラ、呼んできましょうか?」


「いえ。大丈夫です。ヒサヤさんも手伝ってくれているので」


「おれなんか全然役に立ってない感じで……。むしろ足引っ張ってませんか」


「そんなことありませんよ。助かってます」


 お世辞でもそう言ってもらえると嬉しい。が、彼女はどうも他に何か話したいことがあるかのように、唇が戸惑っていた。


「あの、ヒサヤさん。なにか聞いていませんか。アウラから」


 ド直球な質門でおれはたじろいでしまった。それがまずかった。彼女はおれが知っていることをわかったらしい。


「先ほど王家の使いが参ったのを、遠くからですが見ました。なにか当家に伝えたのでしょう。アウラがあのように部屋に下がってしまうと言うことは、おそらく、あの子はわたしに伝えたくないことを聞いた。そうでしょ?」


 そこまで言われてしまってはもはやとぼけることも出来ない。


 おれは、アウラには悪いと思ったが、お兄さんのことをイリスさんに話して聞かせた。


 アウラのように取り乱すかとは思ったが、イリスさんは気丈だった。


「いえ、それくらいでよかったです。わたしはあの子の死も考えていましたから。あの子はまだ死んでいない。それは分かるのです」


「すみません。おれがなにも力になれなくて。なにか、もっと、無敵みないな能力があれば、みなさんのお役に立てたかも知れないのに」


 アウラさんは再び手を動かし始めた。そして、鍋に入っているスープを、ほんの少し小皿に移してそれをすすった。味が決まっていたのだろう、ふと表情を和らげた。


「いえ。あなたはなにも悪くありませんよ。謝る必要などありません。それに、まだ役に立たないと決まったわけじゃないじゃないですか」


「はい。おれで出来ることがあれば頑張りますから」


 とは言ったものの、先ほどアウラと契約を解除して、おれはあと三日しかこの世界にいられないのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ