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不穏な知らせ

 馬の跳ねるリズムというのは、こちらに否応なく焦燥というか、苛立ちというか、恐怖というか、心をかき乱させる。


 その不安はアウラも同じようで、いや、彼女の方が突然この世界にやってきたおれなんかよりも、より脈絡に即した不安を感じているはずだ。


 彼女は身を翻らせて駆けだした。


 おれは彼女を追った。走ると、また腹が痛み始めた。


 よほど慌てていたのか、彼女はスカートの裾を低木に引っかけて大きく裂いてしまった。白くまっすぐな、健康的な足がそこから覗いていた。おれはついそれに目を奪われる。


 アウラは舌打ちをしつつ、


「見ないで。あと、ヒサヤ、あなたが出てくるといろいろと面倒なことになるかも知れないから、ちょっと隠れてもらってていいかしら?」


 彼女は破れた箇所を片手でまとめ、再び駆けていった。


 そりゃもっともな話だ。おれは頷いた。そして、間隔を取って彼女の後を追い、木の幹の裏に身を潜めた。


 家の前では馬から下りた兵士が扉を叩いていた。イリスさんがいないようで、兵士は困ったように片足に体重を乗せて、また扉を叩いた。


 走って戻ったアウラが兵士に声をかけた。ここからでは会話の中身までは聞こえてこない。


 アウラに声をかけられた兵士はにわかに姿勢を正し、なにかを伝えているようだった。


 そして、アウラが、急に糸が切れたように膝を地面についた。破れたスカートも手から離してしまって、太股があらわになっている。


 おれは出て行って助けようか迷ったが、兵士がアウラの手を取って起こしていた。そして、また、なにかを伝えていた。


 よろよろとアウラは壁に手をついて、そして、兵士に礼を述べているようだった。


 兵士は再び馬にまたがると、馬蹄の音を響かせて去った。


 いったいなにが起きたのだろうか。おれはまだ馬蹄の音が耳に響く間に、森から飛び出してアウラの元へ駆け寄った。


「なにがあった?」


 あの気丈の彼女らしくない、うつろな瞳に憂いをおび、おれの質問に答えない。


「大丈夫か?」


「……うん。大丈夫」

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