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習作短編集  作者: 脱兎
5/10

5,つかれてる?



「実は今、悩んでることがあってさ……」


 喫茶店の窓際の席に腰掛け、男はこわごわと話し始める。


「女か? 女だな」


 その向かいに座った彼の友人が茶化すように言う。


「そうなの? 女なの!?」


 男の横の女がヒステリックな声を出した。


「女じゃねえって。まあ、当たらずも遠からずではあるか……。

 ほら、言わなかったか。俺、この前首吊り死体を発見しちまったんだよ」


「ああ、言ってたな。お前ついてないよな」


 うんうん、と友人は何度も首を縦に振った。


 と、そこで男と友人が注文したコーヒーがテーブルに到着する。

 友人はカップの取っ手に指を掛け、「でもまあ」と言葉を繋げた。


「死体を見つけるなんてこと一生に一度あるかないかだからな。貴重な体験と言えなくもない。

 それに、見つけてもらったその相手はお前に恩を感じてるだろうさ。早めに発見されてよかった、ってな。女だったんなら尚更だ。

 ずっと誰にも見つけてもらえずに、腐っていくなんて、俺だったらまっぴらごめんだね」


「そうよ、感謝してるわよ」


 妙に楽観的な友人の言葉に、男はため息をつきながら、熱々のコーヒーカップにミルクを注いだ。


「あら、ブラックじゃ飲めないの? 可愛い」


 くすっ、と女がはにかんで見せる。

 男は、まだ一口も飲んでいないコーヒーをテーブルの中央辺りに押しやった。


「なんだ、飲まないのか? ははーん、さてはまだ猫舌直ってないのか」


 友人は見当違いなことを言いながら、ブラックコーヒーに口をつける。

 男は空いたスペースに両肘を置き、頭を抱え始めた。


「そんなことより、あの日以来俺は困ったことになってるんだ……」


「なあに、困ったことって!? 私に何でも話して!

 あなたの為ならなんでもする。私、あなたに感謝してるの。恩返しがしたいのよ!」


「あの日って、死体を見つけてから、ってことか?

 悪夢を見て眠れないとか?」


 男は首を横に振る。


「信じられない話だとは思うが……どうやらつかれた(・・・・)らしいんだ」


「疲れた?」


 怪訝な顔をする友人に、男は言葉を付け足す。


「"幽霊に憑かれる"の憑かれた(・・・)、だよ」


「なんだって。じゃあ、お前は何かに憑かれてるのか?」


 友人は男と距離を取るように、大袈裟に体を後ろに退いてみせた。


「そうだ──多分、俺が見つけた遺体の霊に。

 お前は信じないだろうがな、その霊は今もここにいるんだぜ」


「そんな馬鹿な!」


 友人は大きな笑い声を立てる。


「俺とお前の他にもう一人いる(・・・・・・)って言うのか?」

「もう、つれないのね。あの日以来、ずーっと一緒にいるのに」


 男の耳には、友人と女の声が重なって聞こえた。


お題:『コーヒーカップ』『風』『危ない恩返し』


なんだか創作意欲がわかず、短めのお話で。

書き終えてから風要素を入れ忘れたことに気付きましたw……

無理をせずマイペースにやってきたいと思います!

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