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習作短編集  作者: 脱兎
4/10

4,手作り



「ああもう間に合わないいぃい‼︎」


 夕焼けを映す窓ガラスの茜に髪を染められた少女が、突然何かが切れたように奇声をあげる。


美波みなみ、落ち着きなって。そんなにヤバイの?」


「早苗ちゃん助けて! 編み目間違えてホルンが小ちゃくなっちゃった!」


「助けてって言われても……あたし、編み物出来ないし」


 前の席の椅子を拝借して机の向かい側に座った友人、早苗に泣きついた美波だったが、にべもなく断られてしまった。


「大体ねえ、無謀だったんじゃないの。『卒業しちゃう先輩達の為に、それぞれの顔と担当楽器を編み込んだ絨毯をプレゼントする』だなんて」


 早苗の言葉に美波はぎくりとする。それは、自分の弱い本音とよく似た呟きだったからだ。


「絨毯じゃなくって、毛糸ラグ。さすがに絨毯なんて作れないって……。

 でも私、先輩達に形に残るものを渡したくて。合奏だって全然いいと思うんだけど、私みんなより演奏下手くそで迷惑たくさんかけたから。

 それに、永瀬先輩ので最後だし、もうちょっとだから頑張る」

 

 美波は少し目線を伏せて、編みかけていた毛糸をするすると解き始めた。

 


「真面目だねえ」と美波に感心したような目を向ける早苗だったが、少しして彼女の視線が鋭くなり、


「んん?」


「な、なに?」

 

 訝しがるような声を上げた友人に、美波は不安になり手を止めた。


「美波! ……永瀬先輩の鼻の下に黒子出来てるよ!?」


「ええ!」

 

 美波が慌てて確認すると、既に出来上がっていた顔部分に、黒い点が浮かび上がっていた。

 

 うそ。なんで? 美波の頭が真っ白に染まる。

 なぜ、今の今まで気が付かなかったのか。

 これだけには、こんな失敗は許されないのだ。これだけは。


 美波は断腸の思いで順調に編めていた部分を解いていく。


「あっ」


 早苗が怪しい声を漏らす。と、同時に半分ほどほつれた毛糸化した永瀬先輩の顔の上から、黒い点が消えた。


「美波……ごめん。それ、虫だったみたい」


「嘘でしょ……卒業式まであと五日なのに」


 美波はがっくりと肩を落とす。


「ホントにごめんね……間に合いそう?」


 早苗に悪気はないのは明らかだったから、美波は泣きたい気持ちをこらえて答える。


「多分、ものすごく頑張れば……。ううん、大丈夫だから!」


「美波、あのさ……無理そうだったら、もっと他の簡単のを作れば?」


 早苗の提案に、美波は固まる。

 それは絶対に嫌、永瀬先輩にだけ手を抜いたものを渡すなんて出来ない──、と美波が言う前に、早苗の口が動いた。


「マフラーとか。五日でできるよね?」


「作れると思う、けど……」


 マフラー。しかも手作りの。

 多くの場合、それは恋人に贈るものだ。あるいは、想いを伝える意味を込めて。


「だったらそうした方がいいよ。マフラー渡して気持ち伝えなきゃダメだって。一生後悔するよ」


 早苗の真剣な言葉に、美波は顔を上げた。



お題:『虫 』『絨毯 』『最高の高校』


ほぼ虫しか使ってませんね。最高の高校に至っては単語すら出てこない。

実は疲労困憊で、眠気と闘いながらの執筆です。ほとんど無理矢理書いたので、ツッコミどころが多いです。明日は頑張る!!

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