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へびのだん

「リンゴが美味いのだー」

「だぁああ、だから声が大きいシグ!?」


 俺は食いかけのリンゴを片手に騒ぐシグの口を慌てて塞ぐ。


 ここは泣く子も黙る凶悪な犯罪組織、<<蛇の団>>のアジト。

 いつもニコニコ優しいお姉さんのファラエルさんが捕まえた<<蛇の団>>の手下。

 ファラエルさんは彼から親切にも丁寧にアジトに関する情報提供を受けたのだ。


 え? 拷問? ……何の事かな?


 俺たちは今、そこを衛視たちと共に囲んでいる。

 そう。ついに悪の組織<<蛇の団>>に最後のときが来たのだ。


 建物の周囲は全部塞いだ。

 俺たちと衛視たちで囲んで<<蛇の団>>の連中には逃げ場なし!

 きっと完璧のはず!!


 よし、待ってろよ<<蛇の団>>!

 今までの逆恨みの全て、ここで全部返させて貰う!


 と、突入しようかとしたその時だった。

 玄関がバン! と開け放たれる。


 まさか、まさかまさかで覚悟を決めて投降して来た?

 いやいや、それは無いな、無い無い。

 腐ってもあのしつこい<<蛇の団>>の連中だ。

 なにか勝算があるのだろう。

 見るからに凶悪そうな禿げ頭の男が出てくる。

 数々の修羅場を潜り抜けてきたと思わせるその顔。

 気迫を感じ取ったのか、たじろぐ衛兵達!


「諦めろ! こっちにはあの<<竜殺し>>のアレフがいるんだ! おとなしく投降しろ!!」


 衛視長さんが吼える。


「そいつは聞けねぇ相談だな、衛視長の旦那。俺ら<<蛇の団>>。もう後が無いとは言え、簡単に諦めてたまるかってんだ! お願いします! 先生!!」


 ん? ……先生?


「はーっはっはっは! 俺が終わりのときはみんな道連れよ! 壊せ、破壊しろ! みんなみんな砕け散れ!!」


 と、謎の<<蛇の団>>のボスの最後の足掻きとも取れる言葉と共に現れたのは──。


 どかーん!!


 扉を外壁ごと打ち破って現れたのは白い巨人。

 氷で出来た巨大なアイスゴーレム!!


「お待たせしましたねボス。なぁに、この最強のゴーレムがある限り、いかに悪逆非道で名高い<<竜殺し>>のアレフ率いる一党といえど一捻りですよ!」


 現れたのは一人の魔術師。


「あなたは!」

「ふ、やはり。ファラエル、あなたも当然いましたね」


 魔術師の姿を見るなり叫んだのはファラエルさん!


「あなたは炎の魔術師ルドルフェン! まだしょーこりもなく生きていたのね!?」


 えーと、たしかファラエルさんとの勝負に何度も負けた炎の魔術師さんだったような?

 ……うん。この人、かなりの美男子だったから覚えてる。


「お久しぶりですお嬢さん。この前はよくもやってくださいましたね。あなたを倒すまではこのルドルフェン、山賊や盗賊団、果ては流れ流れて犯罪組織の一員にまで身を落とそうとも諦めません!」

「ふ、バカねルドルフェン! 炎の魔術師ごときがこのあたしを倒そうなんて百万年早いのよ!」


 ファラエルさんが思いっきり喧嘩を売った。


「また大口を」

「何ですって!? 炎の魔術師があたしを舐める気!?」


 今にも掴みかかりそうなファラエルさん。

 よほど炎の魔術師には恨みがあるに違いない。


「見なさい、このアイスゴーレムの雄姿(ゆうし)を! 見ての通りこのアイスゴーレムは氷のゴーレム! あなたの氷魔法など通用しませんよ!?」

「ア、アイスゴーレムですって……?」


 ファラエルさんの顔が一瞬曇る。


「さぁどうしますかファラエル!? こんなときもあろうかと、あれから私は研究に研究を重ねて古代遺跡から発掘してきたのです!! あなた、憎き怨敵ファラエルを倒すためだけに!!」

「あははははは! たいしたプレゼントだこと。素晴らしい愛の告白ね。でもあたしはもっと情熱的な告白が聞けるものと思っていたのだけれど!」

「黙りなさい! このアイスゴーレムはことあなたに関しては無敵! しかも受けた傷は瞬時に回復!」

「それは凄いわね」

「そうですとも! 無敵無敵無敵! まさに絶対無敵の最強ゴーレムなんです!!」


 炎の魔術師、ルドルフェンは両手を広げて絶対勝者の笑みを浮かべて言い切る。


「どうです!? 泣いて許しを請うなら今ですよ!? さもないと──ああファラエル!」


 ルドルフェンはまだなにか言おうとしていたが、問答無用のファラエルさんの先制攻撃!


「アイスジャベリン!」

「無駄無駄無駄無駄ぁ!」


 氷の槍が突き刺さる。

 が、ルドルフェンの言うようにアイスゴーレムには傷一つつかない!


「やれアイスゴーレム! 虫けらどもを潰してしまえ!!」

「Groooooooooooooooooooooooooooooooooo!!」


 氷の巨腕が唸る!

 ファラエルさん目掛けて振り下ろされる。


 ガシィ!


 氷の破片が飛び散った。

 俺の剣がファラエルさんの目の前に迫った拳を受け止める。


「あ、ありがとうアレフ君」

「それよりファラエルさん、あいつ倒せるの!?」

「楽勝よ」

「なにが楽勝と言うのです! 行きなさいゴーレム!!」

「Groooooooooooooooooooooooooooooooooo!!」


 ゴーレムが両手を挙げて威嚇する。

 その時、ファラエルさんの声が響いた。


「ギガンティックアイスジャベリン!!」


 巨人の腕よりも太い槍が氷の胸板を貫く!

 しかし見る見る塞がるゴーレムの傷口!


「効かん効かん、効かんなぁ!?」


 魔術師ルドルフェンは勝ち誇る。


「ギガンティックアイスジャベリン! ギガンティックアイスジャベリン! ギガンティックアイスジャベリン!!」

「え? 連撃?」


 胸に刺さった大槍が、次々にゴーレムの傷口を広げていく。


「ギガンティックアイスジャベリン! アレフ君、コアを!!」


 赤い光がゴーレムの胸に見えた。

 俺は跳ぶ。大地を蹴る!

 脚に乗り、胸に上がり、(コア)を抉る!!


「Groooooooooooooooooooooooooooooooooo!!」


 するとどうだろう。

 氷の腕が、脚が頭が。

 次々と地面に落ちてゆく。


「バカな、私のゴーレムが……」


 口をあんぐりと開けたまま、その場に固まる魔術師ルドルフェン。


「確保ー!」


 衛視長さんの号令が、アジトの周囲に(とどろ)いた。

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