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ほどよくね!

「おー、アレフー。大丈夫なのか?」


 メシ屋でシグがリンゴをウマウマと齧りながら聞いてくる。

 シャリシャリ。シャリシャリ。


「いてて、あちち」

「ヒール、ヒール、ヒール~。お願い女神ライア様、アレフの傷を治して!」


 ヒールが掛かると共に、次々と俺の体の火傷が治ってゆく。


「痛いの痛いの飛んでいけー!」


 かなり痛みが消えた。

 それにしても。はぁ、今回も酷い目に合った。


 ぷよはファラエルさんが凍らせてシグが砕いて粉砕することで決着をつけた。

 でも、岩ぷよを誘い出した俺は散々酸を引っ掛けられて。

 その時俺は、すごく火傷をしたんだ。

 ううう、つむじ風の時の切り傷といい、今回の岩ぷよのときの火傷といい……。

 泣くぞ!


「でもアレフ、前回といい今回といい、かなり囮の役目を覚えたな!」

「まぁね」

「さすが()が騎士アレフ! この調子ならいつでも盾役を任せられるな!」

「そうだね、確かにそうだ」

「はっはっは! さすが吾が目に狂いなし! 立派だぞアレフ、はっはっは!」


 そうだな。シグの言うとおりだ。

 良い方に考えよう!


 ◇


 建物から建物に渡された紐からぶら下がる透明な肉片。

 細く裂いた岩ぷよのゼリーだ。


「ほー。これがぷよの干物か!」


 シグの眼が丸い。


「そうみたい。日干しにして乾燥させて毒抜きするんだって」


 ジュリアが眩しそうにそれを見る。


「この天気なら良く乾くな! はっはっは!」


 太陽がさんさんと輝いていた。


「シグちゃん、まだ食べちゃダメだからね?」

「そうだぞシグ。まだ毒があるからな?」


 だよな、こいつ何でも食うし。

 一応、釘を刺しておかないとな!


「アレフ! ジュリア! お前たちは吾をなんだと思っているのだ! さてはお子様扱いしているな!?」

「シグちゃん、我慢だよ?」

「そうだぞシグ。我慢を覚えないと良い大人になれないぞ?」

「だぁぁ! 吾を子ども扱いするなぁ! 吾はこれでも竜人族の皇女シグルデ! 一人前のレディなのだ!!」


 おっちゃんが竜革の鎧を持ってきたのはそんな時だった。


「嬢ちゃん嬢ちゃん、こんな所にいたのか。ドラゴンスケイル出来たぜ? ちょっと合わせてみてくれよ!」

「おおおー! 吾の鎧! ありがとう人間!」

「人間って……まぁ良いや。ちょいと着てくれよ。細かいサイズを調整しないとな!」


 と。

 シグが鎧を着た。

 こうしてみると、かなり豪華な革鎧……。

 ただ、胸が。


「おいシグ、胸に隙間があるぞ。直してもらえ?」


 そう。

 かなり隙間が出来ていた。


「ええいやかましい! 直ぐに吾はボンキュッボンになるのだ! その時困るであろう!!」

「ボンキュッボンになればな……?」

「そうとも!」

「それを何だアレフ! 胸を潰せとは冗談か!」

「いや、あの……」


 俺は隣のジュリアを見る。

 ジュリアには……ちょっと逆に余裕が無いか。


「何だその目はアレフ! 意味深な動きはなんだ! 吾が騎士アレフ! 悪意を感じるぞ!! 邪悪な悪意だ!!」

「いや、あの、気のせい……気のせいだから?」

「そうか? それにしてはアレフ、さっきから吾とジュリアの胸を交互に見ているが……」


 げ。読まれてる!?

 まさかシグにそんな知恵があるなんて!


「いや、その……なぁシグ? そんな意味じゃないんだ」

「どんな意味だ」


 半眼。シグからの視線が突き刺さる。


「いや、シグはボンキュッボンになるんだから、そんなスペースで足りるのかなって……あはは……」

「え!? アレフ!?」

「おい、兄ちゃん!?」

「何だアレフ、さすが吾が騎士を名乗るだけの事はある。よくわかっているではないか!」

「あは、あはは、あはははは……」


 俺はおっちゃんに耳打ちする。


「(適当にサイズあわせをお願いします)」

「わ、わかったぜ兄ちゃん、それで良いってんなら俺もそれで良いからな! あっはっは!」

「ぜひお願いします。シグにぴったりのカッコ良い鎧に仕上げてやって下さい!」


 そうそう。あんまり隙間が開くのなら、詰め物でもすると良い。

 そう、ニセ乳……。


「じゃあ嬢ちゃん、仕上げをするからもう一度鎧を返してくれないか? 二日後には持ってくる!」

「うん人間! よろしく頼むのだ!」


 おっちゃんはガハハと笑う。

 シグもはっはっは、と笑う。

 俺とジュリアは……あはは……と笑う。


 うん、でも良いや。シグの機嫌も直ったし? たぶん、たぶんね!

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