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かがやき

「キラキラなのだー! ……でも、食べれないのだ。やはりリンゴだな、リンゴ!」


 シグの手にはダイヤモンドにも似た煌く宝石。

 もう片方の手には、かじられたリンゴだ。


「ヒール、ヒール……アレフの痛いの痛いの飛んでけー!」

「あいた!」

「あ、ごめんアレフ。まだ痛かった?」


 俺の体をさするジュリア。

 傷は塞がり血は止まっている。


「いや、ありがとう」


 と、俺は強がってみるものの。


「でもつむじ風を無事に倒せて、こうして宝石を拝めるのもアレフ君のおかげよね!」

「うんうん! アレフが体を張って一身につむじ風の攻撃を受けてくれていたおかげだよ!」

「はっはっは! もっとアレフを褒めろ! なにせアレフはこの(われ)の騎士なのだからな! はっはっは! 今回も良くやったぞアレフ!」


 ◇


「あなた達! まだこの村にいたのね!? ちょうど良かった、もう一度わたしと狩りに行かない!? あの恐竜の肉だけじゃ冬の蓄えにはちょっと足りなかったのよね……」


 メシ屋で声を掛けてきたのは弓矢を背負った緑のショートヘアの小柄な少女、狩人のファニー。

 俺はシチューを啜りつつ、スプーンを口に咥えながら聞く。

 シグ?

 シグは当然リンゴを齧っている。


「条件はこの前と同じよ! 角や牙、革はあなた達に譲るわ! そして晩御飯も任せて? わたしの料理、美味しかったでしょう?」

 まぁ、美味しかった。


「おおお! またあの美味いご飯が食べれるのか!」

「ああ、ファニーさんのご飯か。確かに美味しかったなシグ!」

「悪い話じゃないわね。シグルデちゃんのスケイルメイルが出来上がるまでもうちょっと日数が掛かりそうだし」

「ご飯がただで食べられることは良い事です! 女神ライア様に感謝しないと!」

「なぁアレフ! お前もそう思うだろう!? 吾はまた美味いご飯が食べたいぞ!」

「まぁね。一日中素振りするのも飽きてきた事だし」」

「そうよアレフ君。こんな小さな村で、一日中酒場にいるのもね」

「酒場に入り浸ってたのはファラエルさんだけだよね」

「あら。私はお酒を飲みながら新しい氷の魔術の魔法理論に思いを馳せていたのよ?」


 怪しい。凄く怪しい。

 だけどまぁいいか、ファラエルさんだし。


「私はライア様の教えを村人さんにずっと説いてましたが……」


 うう、ジュリアはいつも一生懸命だな!


「ジュリアちゃんは偉いわね。さすが真面目なジュリアちゃん。でも今回の狩り、付き合ってくれるんでしょ?」

「もちろんですファラエルさん!」

「決まりね。ね、アレフ君!?」

「まぁね! 狩りに行こうかファニーさん。俺たちでよければまた付き合うよ!」

「本当ですか!? 手伝っていただけるんですね皆さん! 嬉しいです!」


 ファニーさんの目が喜びに輝いた。


 ◇


「いたわ……」


 荒地を歩く俺たちの行く手を、突然ファニーさんの右手がさえぎる。


「隠れて」


 ファニーさんはそう言って大岩に身を隠す。

 俺たちもそれに続くものの……。


「え!? どこどこ!?」

「見えないよ? ファニーさん」

「そうね、あたしにもわからないわ」

「いるぞ? 岩に張り付いている。なぁファニー?」


 シグは言うが、見えない。どこにも見えない。


「岩そっくりの色をしているの。岩ぷよよ。ゼリーを日に干して、水で戻して食べるの」

「ぷよ?」

「そう。ゴツゴツしてるけどアレはぷよ」

「ぷよなー。アレフアレフ、昔を思い出すな!」

「そうだな。お前とぷよ退治したよな。でも、そんな昔の話じゃないだろ?」

「はっはっは! そんな昔の事は忘れたのだ!!」

「今『思い出した』って言ったよなシグ!?」

「はっはっは!」

「ええとファニーさん、あの岩ぷよをあたし達が退治して、見返りに何がいただけるのかしら。見たところ、角も革も無いようだけど」

「肉が珍味です! 肉をお分けしますよ!」

「珍味! 美味いのか!?」

「売り飛ばす前にお腹の中に入ってしまいそうだけど……まぁ良いわ。どうせ暇潰しだし」


 ◇


「結構強敵よ!? 今回もわたしが(おとり)になって釣って来るから、あとはお願いね!?」


 と、跳び出そうとするファニーさん。

 だが、俺はその襟首をガシッと捕まえる。


「ちょっと待てい!」

「な、なによ!?」

「あんたこの前そう言って、釣ってくるんじゃなくて獲物に釣られてたよな?」

「え? あ、あれはたまたまよ、たまたま!」

「そう言えば……そうだったねアレフ」

「忘れてたわ。よく思い出してくれたわね、アレフ君」

「ファニー。囮するのか?」

「う゛」

「今回俺が囮をするよ。いや、今回も、か。ね、ファラエルさん? つむじ風のときは大変だったけど、俺も囮の練習して置いて損は無いし」

「アレフさん?」

「ファニーさん、俺が囮をします。ファラエルさんの魔術で仕留めてもらって下さい」

「え? 魔術!? 炎の魔術じゃ丸焼けなんだけど!?」

「大丈夫、ファラエルさんは世にも珍しい氷の魔術師だから」

「ちょっとアレフ君、何よ人を珍品みたいに! でも良いわ。これもアレフ君に認められた証。あたし、あなたのためなら頑張れるわ」

「それじゃ行って来る! 必ず仕留めてくれよ!? ファラエルさん!!」

「ええ任せて! 酸でギトギトになった体はきっとジュリアちゃんが治してくれるから!」

「え?」


 俺は固まる。何と言ったファラエルさんは。

 酸?

 え、俺……今回は火傷するの?


「ね、ジュリアちゃん?」

「はい! じゃあアレフ、頑張ってね! 私、応援してるから!!」

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