さいき
「うんまうんま。それでは吾が騎士アレフ! 修行の成果を見せてもらうぞ! <<鑑定>>!」
リンゴを齧りながらシグが俺に向けて<<鑑定>>を使う──!
「どれどれ?
アレフ 人間 男 15歳
冒険者レベル:25
スキル:剣士 習熟度SS
剣聖 習熟度E
竜殺し 習熟度D
才能限界突破
おおおお? <<剣士>>スキルの習熟度がありえないSSランクになっているばかりか、<<剣聖>>スキルが身についているぞ!!」
「お、俺が<<剣聖>>?」
「<<剣聖>>。伝説のスキルね……」
「あのお爺さんの言葉、本当だったんだ……」
「俺はまだ強く、なれるのか?」
「ええアレフ君。もっとあなたは強くなれるわ」
「ファラエルさん……」
「当然ではないかアレフ! なにせお前はこの吾の騎士なのだからな!」
「シグ……!」
「私はアレフがどうあっても、一緒に冒険に出るからね!」
「ジュリア……!!」
信頼できる仲間。頼れる仲間。
俺は恵まれているのかもしれない。
よーし、やるぞ!?
◇
歓声が沸きあがる。
久しぶりの王都の空気。
そして雪辱の場所。
ここは王都の闘技場。そして相手は──待ちに待った、チャンピオンのダルガンだ。
「おい小僧。お前この前な、俺に殴られた痛みをもう忘れたのか?」
「忘れちゃいない。だからこうしてまたお前と戦いに来た」
「そうか。なら今回は手加減無しだ。本気で行くぜ」
ダルガンが巨大な両手剣を振り回し威嚇する。
だけど、それがどうした?
常勝無敗のチャンピオン。それは今までのチャンピオンだ。
今日からは違う。
初めの屈辱を、初めの一負けを俺の手で味あわせてやる!
俺は剣を構える。
あの時、この前と同じように。
『剣の声を聞くのじゃ』
爺さんは言っていた。
『剣の声を聞くが良い。剣の声に耳を傾けるのじゃ。自分を信じ、剣の動きに逆らうでない』
──剣の声。
「アレフー! 頑張ってー! でも余り無茶な事しないでー!」
ジュリアの無理な要求が聞こえる。
「アレフ勝て! 絶対勝て! 今度こそ勝たないと許さんぞアレフ!!」
シグの興奮に満ちた声。
「アレフ君、あたしは信じてるわ!」
今回も大量の紙束を片手に両手を振り回すファラエルさん。
「勝ってお願い! あたしの、あたしのお小遣いを増やして! アレフ君のオッズが今回また上がってるのよぉおおおおお!!」
邪念丸出しの声援だった。
そして響く、銅鑼の音。
睨み合う俺とチャンピオン。
「小僧、向かって来ないのか。来ないのならこっちから行くぞ!」
先に動いたのはダルガンだった。
チャンピオンの大剣が俺に迫る。
俺の手が自然に動く。
──剣の声を聞け──。
金属がぶつかる音。
飛び散る火花。
ダルガンの大剣が俺の剣に流され泳ぐ。
──剣に逆らうな──。
ダルガンの大剣が地を抉る。
俺は剣を跳ね上げる。喉元を狙った突き。
チャンピオンは辛くも交わす。
横薙ぎに来るチャンピオンの大剣。
俺の体は勝手に動く。
ガシィ!
またも火花が散る。
自然と俺の手が動き、ダルガンの剣を弾いていた。
「キャー! アレフー!」
「おいアレフ! ぼやっとするな!」
「アレフ君!? ちょっと大丈夫なの、お姉さんびっくりしちゃったんだけど!?」
チャンピオンは踏ん張る。
「小僧がぁ!」
唸る大剣。
迸る汗。
大剣の切っ先は鋭く早い。
だが、俺には見えていた。
どう動けば良いのか、俺にはわかる。
バキィ!
重なる俺とダルガンの大剣。
ダルガンが押す。俺が引く。
ダルガンの蹴りが……俺は飛び退く。
ガリッ!
剣は火花を散らして大地を抉る。
「うぉおおおおおおおお!」
「小僧、舐めるなぁああああああ!」
チャンピオンの、ダルガンの動きが見える。
ダルガンの大剣が右下から迫る。
「アレフー! ああ、ライア様!?」
「アレフー! さっさと決めろ!!」
「アレフ君粘って! あたしのために!!」
轟!
唸りを上げて振り回される大剣。
振り抜かれた大剣を俺は半歩下がってかわす。
チャンピオンに浮かび上がる隙。
俺はダルガンの懐に飛び込んだ!
ダルガンが驚きに目を見開く。そして遅れて振るわれる大剣。
だが俺は──!
一際甲高い歓声が闘技場に巻き起こる。




