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初クエストクリア!

 サンディさんはチャームポイントの緩くウェーブのかかった金髪を揺らしつつ、俺を笑顔で迎えてくれた。


「やりましたね。アレフさん。依頼達成です。薬草は確かに受け取りました。これは報酬になります」


 渡されたのは十シル。

 すぐに使い切る金額だけど、初めて同然の仕事。

 事実上の初報酬。これが嬉しくないわけが無い。


「アレフ! アレフ! リンゴリンゴ!」

「後で買ってやるから今は我慢な?」

「むー。(われ)はお腹がすいたのだ」

「今食べたばかりだし!?」


 さすがドラゴン。いや、竜人族か。

 人間とは色々と違うのかもしれない。


「あ、サンディさん。こいつ、シグルデって言うんだけど、冒険者登録してもらえます?」


 カウンターに届かずピョコピョコ時折飛び上がっては顔を見せていたシグの目が輝く。


「アレフ! 吾の出番か!?」

「出番の前に、正式に冒険者登録しなきゃね。サンディさん、お願いできますか?」

「はい、もちろんです。アレフさんはお仲間も見つけてきたんですね。良かった良かった」


 サンディさんはやや身を乗り出して、シグに視線を合わせる。


「ええと、シグルデさんですね?」

「そうだ!」

「クラスは何ですか?」

「ドラゴンだ!」

「はい?」


 一瞬サンディさんの時間が凍る。

 気を取り直してサンディさん。多少、顔が引きつっているような気がしなくも無い。


「種族は人間族ですね?」

「違う! 竜人族だ!」

「竜人族? 聞いたことの無い種族ですが……あ、ありました。ええと……ああ、登録できました。そのような種族があるみたいですね」

「うむ!」

「絶滅危惧種の少数民族、っと」


 つまり田舎者、っと。


「で、クラスなのですが……」

「ドラゴ……ええい、アレフ、何をする!」


 俺はシグの口を手で塞ぐ。


「ええと、シーフでお願いします」


 軽業が得意そうだしな。

 実際、先ほどの盗みの技……リンゴといい、財布といい、その手際には目を見張るものがある。


「はい、シーフ、と。で、お年はいくつですか?」

「十二歳だ!」


 うお……見かけ通りのお子ちゃま……。


「何だアレフその目は! そのうちボン! キュッ! ボン! になるから期待しておけ!」

「は、はぁ。期待しておくよ」


 多少、棒読みになったのは許して欲しい。


「女の子ですね」

「そうだ!」

「銅級冒険者からのスタートになります。ここのアレフさんも銅級冒険者です。なるべく早く、もう少しパーティメンバーを増やして生存率を高めることをお勧めします。依頼の受け方から、報酬の受け取り方など細かい点については、アレフさん、お任せしてもよろしいですか?」

「もちろん」

「助かります」

「人数が少ないうちは、なるべくEランクの依頼を受けるようにしてくださいね。無謀な仕事を請けて、死んでしまっては何にもなりませんから」

「お気遣いありがとうございますサンディさん」

「いいえ。アレフさんはもうここの常連ですよ。下働き、今日までご苦労様でした。私もアレフさんには期待してますから明日からは冒険で稼いでくださいね」


 サンディさんの目が一瞬鋭く光る。

 やさしい中にも、鋭い輝き。


 俺は悟る。やっぱりだ。

 今回の依頼、本当に俺への最後通牒だったのだろう。

 仕方が無い。俺は無能だったのだから。

 だけど今日からは違う。

 <<剣士>>スキルを伸ばして、レベルも上げて、俺は最強の冒険者になってみせる!


 ◇


「無いな」


 俺は思わず漏らす。依頼の張られた掲示板。

 銅級冒険者用。Eランクの依頼。とても簡単な駆け出し冒険者用のお仕事。


「アレフさん」


 背後から急に掛けられたサンディさんの声に、俺は飛び上がって驚いてみせる。


「お困りですね?」


 と、ウィンク。実に様になっている。


「街道のモンスターを倒すことでも報奨金が出ますよ? わずかばかりですが、パーティメンバーがお二人になったことですし、一つ試しで狩りに出かけられてはいかがですか?」

「なるほど」


 ソロでは思いつきもしなかった発想。

 無意味に短剣を振っていた頃が懐かしい。


 シグがパーティに入ってくれた今、モンスターを倒すのは簡単だろう。しかもシグはドラゴンに変身できる。最強のモンスターであるドラゴン。それにかかれば、街の周囲のモンスターなんて一ころだ。危なくなったら変身してもらう。だけど、あくまで俺の<<剣士>>スキルの習熟度上げ。これだ。


 いきなり危ないことはしない。地道にゆっくりと勇者への、英雄への道を目指す。

 完璧だ。俺の計画は完璧すぎる。

 自分に惚れ惚れするね、うん。


 そうと決まれば、俺はリンゴを齧っているシグに声を掛ける。


「シグ!」

「ん? アレフ、出番か!?」


 シグの目が輝く。


「狩りに出かけよう! リンゴの代金を稼ぐんだ!」

「さすがアレフ、気が利くな!! 早速仕事か! では行くぞアレフ!!」




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