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ほのおと、こおり

「探知魔術? なんですかそれファラエルさん」

「あらかじめ人物や物品に目印となる魔術を掛けておいて、後日その人物や品物の在り処を別の場所から探る魔術よ」

「なんだかそれだけ聞くと便利そうな魔術ですね?」

「便利よ? 実際」

「え?」

「ふふふ。それはね──人物探しの時にはとても役立つのよ? 相手への心のこもったプレゼント、って渡せば肌身離さず持っていてくれる……奪われでもしない限りはね! そんなバカを探すときには大助かり!」


 ◇


「ほうら見つけた。炎の魔術師ルドルフェン! あなたまだ魔術師なんてやってたの? たいした才能も無いのに」


 大通り。ファラエルさんと並んで歩いていたときだ。

 俺達は一人の青年に出会った。

 いや、ファラエルさんが因縁をつけた。


「おや。誰かと思えば……ファラエルじゃありませんか。使い道も無い氷魔術ばかりを習得されていた役立たずのファラエルさんで?これはまた、いつの間に王都へ?」

「つい先日よ」

「出稼ぎも大変でしょうに」

「出稼ぎじゃないわ。あたしはね、真の英雄を見つけたのよ。そして今のあたしはその英雄の手伝いをしているだけ。いえ、英雄に選ばれたのよ。炎の魔術なんて低俗な技ではなく、氷の魔術こそが最強。この真理を英雄は見抜いてくれたわ」

「英雄?」

「竜殺しの英雄よ」

「竜殺しだと!? バカな、早々ドラゴンなんているはずが無い。もしもいたとして、人間がドラゴンに敵うはずも無い!」

「それは炎の魔術師の話でしょ? 炎がドラゴンに効くはず無いもの。でもあたしの操る氷の魔術は違う。氷の魔術はドラゴンにも有効よ? そうよ。氷の魔術は初めから選ばれているの。そうですとも。氷の魔術こそ必殺の技。最強の技なのよ!」

「くだらない冗談を。炎の魔術と氷の魔術のどちらが優れているかなんて、子どもでも分かること。ファラエル。あなたが何と言おうと、炎の魔術の素晴らしさは変わりません。世間の認識は炎の魔術こそ至高にして万能。──毎食の炊事場から夜の明かりまで。これなんです」


 ファラエルさんは悔しそうに歪めた顔から声を絞り出す。


「ならば、その身で試してみる? 優秀な炎の魔術師さん?」


 ◇


 魔術学院……その破壊魔術実験場。

 今そこに、因縁の二人の魔術師が対峙している。

 一人はファラエルさん。銀の髪を流す美女だ。銀の髪に相応しく、この世界でも珍しい氷の魔術を得意とする魔術師でもある。

 そして向かい側には炎の魔術師ルドルフェン。彼はその他大勢の魔術師同様、最も使い勝手の良いとされる炎の魔術を極めた秀才らしい。


「なぁなぁアレフ。何が始まるのだ?」


 と、リンゴを齧りながらシグ。


「ファラエルさん、大丈夫なの……ねぇアレフ、どうなってるの?」


 周囲には大勢の野次馬たち。


「氷の魔術師なんて存在していたのかよ!」

「炎を取らないなんてバカなんじゃね?」

「せめて雷の魔術よね」

「バカ、そこを言うなら水の魔術だろ!」

「まさか氷は無いよなー」

「ああ。最強を極めるならやっぱり炎の魔術だろ」

「だよな?」

「ああ。炎の魔術以外ありえないって」


「ファラエルは今からあの男と戦うのか!?」

「ああ。勝負するらしい」


 ◇


「それでは、行きますよ……後悔しないでくださいねファラエル」

「それはこっちの台詞よおバカさん。あなたルドルフェン。学院時代から変わってないのね、そのマヌケさは」

「こ、この言わせておけば!」


「フレアアロー!」

「アイスアロー!」


 相手の掌から生まれた炎の矢は氷の矢によって相殺される。


「フレアアローシャワー!」

「アイスアローシャワー!」


 現れた無数の矢。それをファラエルさんは全て迎撃!


「ファイアストーム!!」

「ブリザード!」


 吹き荒れる炎の嵐。それをファラエルさんは全て迎撃!


「ファイアボール!!」

「アイスウォール!!」


 炸裂する火球。弾ける爆風。

 ファラエルさんの氷の壁はそれを遮った。


「決着つかないね、大丈夫かなファラエルさん」

「うーん……そうだ!」

「アレフ? どうしたの?」

「シグ、リンゴをあの魔術師に投げつけろ。焼きリンゴは美味いぞ?」

「焼きリンゴだと!? なんだそれは! やるやる! えい! えいえいえい!!」


「アイスバースト!!」

「ファイアウォール!!」


 襲い掛かる凍てつく冷気。

 炎の魔術師、ルドルフェンはその冷気を防ごうと、炎の壁を立ち上げる──。


 と。幾つものリンゴが炎の壁に飛び込んだ。

 そして、そこに穴が開く。


「何ぃ!?」

「アイスアロー!」

「フレアアロー!」


「なぁアレフ。まだリンゴ投げるのか? 良い臭いがしている……もうあれ、食っても良いか!?」


 降り注ぐのはリンゴのつぶて。


「ていていてい!」


 それはルドルフェンの体に次々と当たって……!


「なっ!?」


「卑怯だぞファラエル! 仲間の手を借りるなんて!」

「最強のあなたはボッチでも勝てるんでしょ? それなら最後まで一人で頑張りなさいな」

「何を言っているのですファラエ──」

「アイスコフィン!」


 カキン。

 今、ファラエルさんの前には見事な氷の棺が一つ。その中には相手の炎の魔術師、ルドルフェンの姿があった。


「勝ったわね」

「そうだな、シグの食欲が勝ったな」

「なぁなぁなぁ、焼きリンゴは? 焼きリンゴ……もう無いのかアレフ?」

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