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うたげ

「でかい鳥も片付いたぞ! アレフ……人助けも大変だな!」

「そうだなシグ。今晩は焼き鳥だ!」

「肉!? 肉が食えるのか!?」

「ああ、食えるぞ。表面の皮はこんがりと焼けて、中身はジューシーな肉汁の詰まった鳥腿肉だ! それに胸肉、心臓、肝臓……今晩はご馳走だな! 石化から解けた連中を交えてコカトリスの肉で宴会といこうぜ!」

「おお! この鳥を食うのか!」


「特にジュリアは大変だったな。しかも石化からの蘇生術、お疲れ様」

「ほんとに。でも、みんな元の姿に戻って良かったわ」


 あのデカイ鳥、コカトリスを倒した後、あれから石像を一つ一つ人間に戻していったんだ。


「どうして私ばかり狙われるのよ。おかしいじゃないアレフ……アレフはちっとも助けてくれないし」

「そんな事無かっただろ?」

「そんな事あったよ!」

「俺は助けただろ、(かば)っただろ、俺はジュリアの盾になったよねぇ!?」

「そうだったの?」

「そ・う・な・ん・だ・よ!」

「まぁまぁ、アレフ君にジュリアちゃん」

「「ファラエルさん……」」

「ジュリアちゃん。今日の出来事はね、きっと神様がジュリアちゃんに与えた試練だったのよ」

「女神ライア様の試練……そ、そうねファラエルさん! 私、頑張る!」

「うんうん、その意気よ!」

「あの……その……俺が……俺はジュリアを……」


「ありがとうファラエルさん! そう言ってもらえて嬉しい!」

「いいえジュリアちゃん。頑張ったのはあなた自身よ!」

「ファラエルさん! ありがとうございます!!」


 そこには二人の世界があった。

 俺の入る隙間は無い。


「俺は? 俺の活躍は?」

「大丈夫、もちろん覚えてるアレフ」

「アレフ君、当然じゃない」


 あ、ちゃんと覚えていてくれたんだ……。


 ◇


 その日の夜。星々の元で赤々と炎を吹き上げる焚き火がある。

 村の広場の中央、その周囲には肉汁滴る(あぶ)り肉。

 コカトリスの肉だ。

 火を囲んでジュリアのおかげで息を吹き返した冒険者達がわいわいとやっている。

 そしてこの村の住人も。

 臨時の祭りだ。宿の親父や村の住人が酒を出す。

 肉はみんなで食べても余るくらい。

 そこに吟遊詩人エリフキンのリュートの調べに詩が乗る。


「♪石像の森に現れたるは石化の魔力を持つコカトリス~♪」


「アレフ、シグルデ、ジュリア、ファラエルっと。はい覚えた! 恩人の名前は覚えておくぜ!」

「俺も俺も」

「よく倒せたな、あんな化け物! あんた達凄いな!」

「アレフ……もしかしてあの無能!? どこが無能だよ。コカトリスを倒すなんて凄いじゃないか!」


「♪るるる~そうしてアレフは来る、そうして役立たずと呼ばれた勇者はやって来る~♪」


「助かりました。石化解除までしていただけるなんて。素晴らしいプリーストがお仲間におられるのですね!」

「え? 私!?」

「そうです。あなたには何とお礼を述べて良いものか。本当にありがとうございました!」

「いえ、お構いなく……」

「いえいえ、ここはお礼をさせてください」

「は、はぁ……アレフ? 貰っていいと思う?」

「貰え貰え。貰っておけよジュリア」

「そ、そっかなアレフ。それじゃ、頂きます」

「その年で石化解除の奇跡をね……凄い信仰心じゃないか!」


「♪るるる~こうしてジュリアは現れる、こうして優しき聖女は現れる~♪」


「いや、ファラエルさん? あんた炎の魔術は使えないんだろ? なのに氷の魔術だけでコカトリスとやり合うなんて……いかれてるぜ!」

「炎や雷の魔術師でもないのに、よくやるな!」

「何を言ってるの? 炎の魔術に雷の魔術ですって? この世で最高の魔術は氷の魔術! 氷の魔術こそが至高、最高の技なのよ! 炎の魔術の時代はもう終わったの! これからは氷の魔術の時代なのよ!」

「お、おぅ……まぁファラエルさん、あんた頑張れよ?」

「当然よ!」


「♪るるる~そうしてファラエルは戦う、そうして氷の魔術師の誇り共に戦う~♪」


「ん? お嬢ちゃんは肉を食べないのかい?」

「肉は不味かった! その前にお前、誰がお嬢ちゃんか! 吾を子ども扱いする出ない! 吾はすでに一人前、立派なレディなのだぞ!?」

「あはははは! お嬢ちゃんは冗談が好きなようだな! どこからどう見てもまだまるっきり子どもじゃないか。あはははは! それにきちんと食べ物を食べないと大きくならないぞ?」

「うきーーーーー! お、お前、言って良いことと悪い事があるぞ!? (われ)は、吾は……うわーーーーーーーん! アレフ、アレフー! こいつらが吾を苛めるのだーーーー!」


 そしてシグは俺の足に跳び付いて来た。

 おいおい……シグ、また泣かされているのかお前は。


「♪るるる~彼らが連れるはお姫様。いつも背伸びしたいお年頃~♪」

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