表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
32/82

なにか手ごろな依頼はあった?

「アレフ君。何か手ごろな張り紙あった?」


 川縁から釣り糸を垂れながらファラエルさん。

 俺は剣の素振りを繰り返す。


「いえ、特に美味しい依頼も普通の依頼もなかったです」

「そっか。早々美味しい仕事が転がっているわけないものね」

「ほっほっほ。相変わらず腰がはいっとらんのぅ。少年や」


 ファラエルさんの隣に座る白髭爺さんも、釣り竿を片手にいつもの言葉を繰り返す。

 え? 俺ってまだまだそんなに剣振るのが下手なの?

 上手く<<剣士>>スキルを使いこなせてない?

 成長ポイントは全部<<剣士>>スキルに注ぎ込んだのに……。


「そう。仕事は無いのねアレフ君。それじゃお姉さん、いつものようにここで釣りしてプーしてるわ?」

「若いの。ずいぶん達観しておるの?」

「あたしは今を好きに面白おかしく生きているだけなの。だって世の中、優秀な氷の魔術師であるあたしに居場所は無いもの。どいつもこいつもあたしの実力を認めないクズばかり……ああ、アレフ君は別よ? アレフ君はあたしを認めてくれた唯一の人。信頼しているわ。むしろ、好きよ?」

「あ、はい」


 何だかドス黒いものがファラエルさんの背後に一瞬見えたけれど、これはきっと気のせいだろう。

 そう、例えるならば怨念のこもった何か……。


「氷の魔術こそ至高! 氷の魔術こそ最高の術!! 氷の魔術こそこの世の真理!!! そうよ、その道を極める事を選んだあたしは何一つ間違ってないわ! ……たとえ今はこうして仕事も無く川べりで釣り糸を垂れる生活を送っていてもね……」

「あ、はい」

「アレフ君もそう思うわよね!? 優秀なあたしにも、そのうち報われる日が来るって! その内、こうして慎重に機会を待っていれば、きっと白馬の王子様が迎えに来てくれるって!!」

「あ、はいそうですね」

「アレフ君……優しいのね」

「いえ、そんな……」

「照れなくても良いのよ? アレフ君は良い人だから、本当の事を言ったまで。あたしの言葉はね、心の清い人にしか届かないのよ……」

「あ、はい」


 ◇


「アレフ! アレフー!」


 なんだかバタバタと掛けて来る足音がする。それはどんどん大きくなって……。


「シグ?」

「アレフ、ここにいたか! アレフ、またご指名の依頼なのだー! この前のラルフとか言う商人、お前も覚えているだろ? あの商人からまた隊商の護衛の依頼なのだ! 早く冒険者の店に来い! ラルフとやらが待っておる!!」


 ◇


 そしてまたも隣街へと向かった俺達。

 市場で俺達はラルフさんと別れる。


「今回は何事も無く過ぎましたねラルフさん」

「その方が良いですよ。いえ、今回もアレフさん達がいるとわかっているから山賊やモンスターも現れなかったのでしょう」

「そうであろうそうであろう! なにせ(われ)らは強いからな! 敵が恐れて出てこないのも充分ありうる! うん、ありうるぞ!」

「あーはいはい。言ってろよシグ」

「そうだよシグちゃん。それは違うよ? 全ては女神ライア様が見守ってくださっているおかげだってば」

「いや、ジュリア……それも……な?」

「なに言ってるの? 山賊の間で美人の氷の魔術師が恐れられてるからに決まってるからじゃないの」

「あの……それも……ファラエルさん?」

「とにかくアレフのせいではない事だけは事実だな!」

「どうしてそうなる!? 俺頑張っただろ!? 俺しっかり警戒して聞き耳して周囲に気を配ってたよな!?」

「そうね、盗賊としての身のこなしはシグルデちゃんが一番だけど……何か音がする度、いつも真っ先にビクビクしてオロオロしていたのはアレフ君ね」

「ファラエルさんは俺にどうしろと……」


 ◇


 リンゴを食らいつつ、シグが一言。


「今回の報酬は用心棒料だけだな!」

「そう何度も美味しい話は転がってないよシグ」

「むー。でも、それもそうだな! アレフ、リンゴだ! リンゴをくれ!」


「アレフ様、アレフ様いらっしゃいますか!?」

「ん? おいアレフ。受付嬢が呼んでるぞ?」

「この街の冒険者ギルドの人?」

「そうじゃないのか?」


 ◇


 パカラ、パカラ……ゴロゴロゴロゴロ……。

 馬車は行く。

 一路、馬車は俺達の街へ。


「なに、友人から護衛にうってつけな腕の良い冒険者がいると(うかが)いましてね?」

「それってラルフさんの事ですか?」

「そうです。ラルフです。彼はあなた方の腕をとても高く買っていました。私もそれにあやかりたくなってですね。あなた方がまだあの街に滞在していると聞き、ああして声を掛けさせていただいた訳です」

「そうだったのですね。伝手(つて)も無いのにいきなり指名の仕事があると言われてびっくりしていたんです」

「いやいや、こうしてあなた方と旅が出来る。私としてもとても幸運な事だと思っています。期待してますよアレフさん?」

「えーと」

「任せておけ! (われ)の騎士、アレフの腕は折り紙つきだ! なにせ上級スキルである<<剣士>>スキル持ちだからな!」

「おお、<<剣士>>! そうでしたか!! どおりでラルフが自信を持って紹介する訳だ!」


 ヒュン。ヒュンヒュン。ストンストンストン。

 

 え? 矢?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ