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だいじなものは

「今日もリンゴが美味いのだ! アレフが買って来るリンゴは実に美味い!」

「アレフはリンゴ選びの名人なのかな? シグちゃん?」

「そうかもしれないな! はっはっは!!」


 リンゴを齧りつつ、ジュリアの問いにシグは答える。


「シグ、悲しいお知らせがあるんだ。ジュリアも聞いてくれ」

「どうしたアレフ」

「アレフどうしたの?」

「金が無い。だからリンゴは諦めてくれシグ」

「どういうことだアレフ! 成長のクリスタルも全て(かね)とやらに変えたのであろう!? 剣や鎧に金を掛けすぎたのか!?」

「いや」

「それにしてはアレフ。お前の装備は替わってないようだが……」

「ああ」

「では、ジュリアの装備を買ったのか? ……違うな。ジュリアの装備も変わってない。メイスに革鎧。いつもどおりだな」

「ジュリアに金は渡したんだ」

「え!? あのお金ってそんな意味のお金だったの!?」

「大事な装備調達用の金をせっせとライア様とやらに寄付するバカがいてな……」

「そんな! ライア様は素晴らしい神様なの! 日頃の感謝をお金で示しただけなの!!」

「寄付したんだな寄付したんだろう!? どうだどうなんだジュリア!?」

「ええと……それは……神父さまに声を掛けられたから……」

(だま)されるなジュリア! 神父も人の子、お前が持っていた大金に目が眩んだんだ! 騙されたんだよジュリア!」

「そんな! 神父様は良い人よ! けっしてそんな邪な方じゃないわ! それに、たくさん寄進すれば私の教団内での地位が上がるし、何よりライア様は喜ぶし!?」

「おい待てジュリア。お前は大切なリンゴ代を邪神ライアの供物に捧げたと言うのか!?」

「誤解だってシグちゃん。ライア様は立派な神様なんだから!」

「ライアはドラゴンに意地悪するから嫌いだ! 今回もリンゴ代を持っていかれた!」

「う」

「ジュリア頼む。現実を見てくれ。俺達に必要なのは名声と装備だ。女神ライアへの寄進額の大小じゃない」

「うう! そんな酷い、酷い酷い! 私、ライア様が二人の事を守ってくれますようにって、毎日お祈りしてるのに!」


 ◇


 ──とにかく仕事だ。何か依頼をこなさないと。

 そして当面の生活費を稼がねば。


「ちっ……依頼が少ないな……ん?」


 ◇


「これだ! 荒れ狂う雪玉を治めて報酬五ゴールド!」

「おおー! アレフ!! それはリンゴ幾つ分なのだ!? リンゴ一個三カパーとして、ええと……」

「雪玉……炎の魔術師の力が借りたいところね」

「当てがあるのかジュリア?」

「全然」

「だぁああああああ! 使えないなジュリアは! デカイのは乳だけか! やはりお前は邪神ライアの使徒!」

「シグ、そういうお前は炎のブレスは吐けないのか?」

「ドラゴンに変身してか? ダメだ! 一族の秘儀だ! この程度のピンチでは使うわけには行かないな」

「ジュリアだけじゃなくてシグも使えないじゃないか……」

「何を言う! それを言うアレフは魔術師に心辺りはあるのか!?」

「そうよ。そこまで言うなら魔術師を連れて来てよアレフ」

「知り合いがいないわけじゃないけど……」

「何!? 心当たりがあるのかアレフ!」

「アレフ、誰か知ってる魔術師がいるの!?」


 魔術師。確かに一人、暇そうな人に心当たりがある。

 川でいつも釣りをしているお姉さん。

 彼女に声を掛けてみよう。


 ──俺は、その時はこれで上手く行くと思ったんだ。


 ◇


「涼しい……気持ち良い天気ね、アレフ君」

「ファラエルさん、寒くないの?」


 俺は先頭を行く紫ローブのお姉さんに声を掛ける。


「何を言ってるのアレフ君。こんな清々しい天気、そう無いわ。絶好の釣り日和よ!」

「あの、ファラエルさん。釣りに来たんじゃないんだけど」

「わかってるわアレフ君。雪玉を鎮めるのね? 大丈夫。お姉さんに任せなさい」


 空は曇天。横殴りの雪。いや、吹雪。


「寒い、寒いよアレフ! どうにかならないのこの寒さ!」

「そうだぞアレフ! なんだこの寒さは!」

「仕方ないだろ!? 雪玉が暴れてるくらいなんだから!」

「……」


 ボゴッボゴッボゴッドドドドドドドド!!

 ん? 返事が無いな?

 うお!?


「おいシグ! ジュリア! ファラエルさん!!」


 真っ白に染まる視界。

 見れば、人型の雪像が三体……って、うわあ!?


 ◇


「ぷはぁ!?」

「ぐはぁ!?」

「気持ちぃ良いいい! ゾクゾクするわ!」


 ああ冷たい。指が冷たい、冷たい冷たい!

 俺は急いで三人を雪から掘り出したのだけど……この寒さが気持ち良い!? ファラエルさん、元気だな!?


「ファラエルさん、今のが雪玉だよ! あれをやっつけて!」

「わかったわ。アレフ君」

「お願いファラエルさん、得意の炎の魔術で──!」


 空が曇る。来る、来る! 雪玉が山と来る!!

 白が濃くなる!!


 で、ファラエルさんが魔術を使ってくれたわけだけど。


「アイスファランクス!」


 ファラエルさんの長いプラチナブロンドの髪が広がった。

 で、ここでファラエルさんの炎の魔術が……って、ぇ?

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