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ちょっとだけ背伸び。

「やはり美味いのはリンゴだな、アレフ」


 リンゴを齧りつつ、茶色のツインテールが跳ねる。


「そうかもしれないね。思い出すだけで吐き気がしてくるよ」

「もう、二人とも気をつけてくださいね!」


 ジュリアはあれかからプンプン丸だ。


「怖がりジュリアの特訓にはなったぞ?」

「そうだね。アンデッドに少しは慣れてくれたんじゃないのかな」

「慣れません! 無理! 無理無理無理! ライア様にお願いしてるけど無理無理無理!!」

「そうかなぁ。結局最後はジュリアが決めてくれた訳だし……」

「ジュリアがいて助かったな? なぁアレフ!」

「だよね、シグ」

「アレフ……シグちゃん……私、頑張るね!」


 ◇


「アレフさんたちは最近順調にクエストをこなしてますねー。そろそろクエストの難易度を上げられてはいかがですか?」


 金髪を指にくるくると巻きながらサンディさん。


「そうだな! 高い難易度のクエストをこなせば(われ)ももっとリンゴが食べられる! どうだ? このジャイアントボア退治と言うのは!」

「シグ? ええと何々?『最近ウチの畑に大イノシシが出て収穫間際の芋を掘り返され困ってます。どうか大イノシシを退治してください……』なんだこれ?」

「イノシシ退治だ! イノシシを退治した金でリンゴを食う! そしてアレフは退治したイノシシの肉でイノシシ鍋! どうだ、完璧だろう!」

「シグにしてはまともな意見をありがとう」

「何だと!?」

「私もその依頼、頑張ってみようかなぁと思います! ……お化けも出てきませんし。きっとライア様も助けてくれます!」

「うーん。ジュリアも賛成か。それじゃ、やってみようか」


 ◇


 俺は縄を手に巻き、茂みに隠れている。オレの両隣にはシグとジュリア。


「なー、こんな罠で本当にイノシシが捕まるのかシグ?」


 大きな篭と、皿の上に乗せたリンゴ。

 大丈夫。たぶん。

 イノシシが餌に食いついたところで縄を引く。

 篭がイノシシに覆いかぶさったところで俺達が一斉に飛び出し篭ごとイノシシを叩く。

 そして楽勝。

 うん、完璧な作戦だ。


「あー、リンゴがもったいないなー食べたいなー」

「我慢してくれよ。あれはイノシシ用の餌なんだって」

「むー」


 そんな時、ガサっと奥の茂みから現れる黒い影。


「お」

「あ」

「うわぁぁぁ……」


 ドドドドドドド……バキィ!

 ガリガリ、ムシャムシャ……。


 それは小山ほどもある化け物だった。

 あれぞまさしくジャイアントボア。


「おいアレフ。篭よりもはるかにデカイぞあいつ」

「篭壊れちゃいましたね……」

「貴重な吾のリンゴがぁああああ!?」


 ええい、こうなったら剣で!


「剣でやっつけよう!」

「正気かアレフ!?」

「俺にはスキルがある! 今なら隙を突いていける!」

「アレフ、無茶しないで!」


 無茶じゃない。毎日の素振りの成果、見せてやる!!

 唸れ、俺の<<剣士>>スキル!!

 俺は力の限りロングソードを突き刺した。


 グサ。


「刺さった!」


 うん。確かに刺さったよ。お尻に深々と刺したんだ。


「ぴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

「おうわぁ!? 暴れるなよ、こいつ!?」


 途端に跳ね上がるジャイアントボアの後ろ脚。

 俺の脚が地面を離れる。振り回される。

 剣を握ったまま引き摺られる俺。


「アレフー! 吾のリンゴをどうしてくれる!!」

「アレフ! 大丈夫アレフ!?」


 大丈夫じゃない、目が回る、回る回る目が回る!!

 俺は剣を掴んで離さない。

 ジャイアントボアは尻の痛みに暴れ回る。


 どうなる俺、せめて剣が抜けてくれれば!

 あんなに勢い良く突き刺さなければ良かった!


 ばったばったと引き摺られ、俺の体はもうボロボロ。


「ヒール、ヒール、ヒール! アレフを助けてライア様!!」


 回復魔術が俺を包む。

 痛みが消えて、俺はまた地面に叩きつけられまた痛む。


「シグー! 助けてくれー!! シグルデー!」

「仕方ないなアレフは! 吾の騎士ではなかったのか、情けない」

「良いから早く助けろ何とかしろ!」


 俺は溜息を聞いた気がした。


「とりゃぁああああ!」


 どげし。

 シグはジャイアントボアの横っ面を蹴飛ばす。

 唸る遠心力、今度は横に振り回される俺。


「おうわ!?」


 と俺はクルクル回って……剣が抜けた!


「ヒール、ヒール、ヒール!!」


 ヒールの光に包まれながら、俺は剣を振り上げて──。


「よくもやってくれたなー!」


 まるっきり悪役の台詞を吐きながら、俺はシグの蹴りで転んだジャイアントボアの脳天に剣を突き込んだ。


「ぴーーーーーーーーーー!」

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