さぁ来いアンデッド!
「昨晩は大変だったなアレフ!」
シグがリンゴを齧りながら声をかける。
「ああ、ジュリアがあれほどグロをダメな人だとは思わなかったから」
「ごめんなさい、ごめんなさい、どうしても苦手で……毎朝ライア様にお願いしてるんだけど、どうしてもダメで」
「大丈夫だ! 要は慣れだ、慣れ! これからのために慣れるぞジュリア!」
「えぇ!?」
「そんな無理なこと言ってやるなよシグ」
「アレフ。今晩も行くのだろう?」
「えぇ!?」
「ジュリア。悔しくないのか? アレフの役に立ちたくは無いのか?」
「えぇ!? そ、それは……」
「役に立ちたいのであろう?」
「それはそうですが」
「ならば慣れだ! どうせゾンビ共を成仏させるためにはジュリアの力が必要なのだからな! なぁアレフ!」
「ん、まぁそうだね。でも無理強いは良くないよシグ」
「何だとアレフ!? そんな事で良いのか!!」
「だって仕方ないだろシグ! ジュリアが嫌がっているんだから!」
「そんな事でどうする! 吾のリンゴはどうなる!?」
「リンゴかよ!」
「リンゴ最高! リンゴ最上! リンゴ代をせっせと稼げ!!」
「止めて下さい。私頑張ります、勇気を出してもう一度チャレンジしてみますから! ライア様に誓います!」
「ジュリア……」
「ほれみろ! ジュリアはヤル気だぞ!」
「わかったよ。ジュリアがその気なら、俺も全力でサポートする。みんなで頑張ろう!」
「お願いしますね、アレフ。それにシグちゃん」
◇
「依頼、引き取りましょうか? アレフさん」
と、金髪をかき上げつつサンディさん。
「いや、今晩もう一度チャレンジすることにしたよ。今晩こそジュリアに頑張ってもらうんだ」
「そうですか。アレフさんが応援してあげれば、ジュリアちゃんも頑張れますよ」
「え?」
「ではアレフさん、クエスト成功の報告をお待ちしてますね!」
ウィンク。
ああ、やっぱりサンディさんは美人だな。
◇
そして夜。
俺たちはまた墓地にいる。
アンデッドはターンアンデッドで浄化しないとその魂を救う事ができない。
昨晩は失敗したけれど、今晩はジュリアに頑張ってもらって!
「ジュリア。大丈夫?」
「だ、大丈夫」
気のせいか、言葉の端が震えるジュリア。
「ジュリア! 期待しているぞ!」
「うん、私頑張るシグちゃん」
ジュリアが柔らかく微笑む。
「アレフ、ジュリア! そろそろ来るぞ! ジュリア、頑張れ!」
「ジュリア、俺は信じてるからな!」
「アレフ……」
ボゴッモゴッ……。
土が盛り上がる。腐った腕が、頭が、胴が見えてくる。
ゾンビだ!
「ひっ……!」
「こらジュリア!」
「ジュリア、行けそうか!?」
「う、うん、私頑張る!」
ボゴッモゴッ……。
ボゴッモゴッ……。
来た来た来た! 来たぞゾンビが!
次々来る! 頼むぞジュリア!
「ひぇっ!?」
「なにをしているジュリア!」
「だぁあああ、プレッシャーをかけるなよシグ!?」
「ジュリア、落ち着いて!」
「わ、わかってるアレフ!」
ジュリアに迫る、ゆっくりと歩を詰めるゾンビ達。
ジュリアの顔は実に青い。
本当に大丈夫か!?
「ええいアレフ、切り刻め、間に合わん! ジュリアが危ない!」
ボゴッモゴッ……。
ぇ? まだ増えるの!?
「ジュ、ジュリア助けて!」
「え!? アレフ!」
「何をしておるのだアレフ! ゾンビごときに遅れをとって!」
「挟み撃ちなんだよ!?」
俺は前方のゾンビに切りつける。でも背後のゾンビは──。
「アレフ! ターンアンデッド!!」
光に包まれた。
ゾンビが聖なる光に包まれる。
「ターンアンデッド! ターンアンデッド! ターンアンデッド!! 嫌、アレフを助けてライア様ーーーーーっ!」
光が墓場を覆った。
◇
「いやぁ、ジュリアも中々やるな!」
シグがリンゴを齧りながらジュリアを褒める。
「あの時はアレフが危なそうだったから私、必死で!」
「助かったよジュリア」
「そんな……アレフこそ私を庇ってくれてありがとう」
「ほう……さてはジュリア」
「はい? なにシグちゃん」
「ジュリアはアレフが好きなのか?」
「え、えぇーっ!? ど、どうしてそれを!? ……じゃなかった、そ、そんな事!?」
「ジュリア!?」
「い、いや、その、そんなんじゃない……いや、そうなんだけど……」
「はっはっは! アレフ! 吾は腹が減ったぞ! リンゴをもう一個くれ! はっはっは」
ジュリアの顔が真っ赤になっている。
そっか。そうなのか。
ジュリアは俺の事を……!
よーし、やる気が出てきたぞ!?