【短編版】ギフデッド~才能溢れる天才達の死~
あくまでも短編として、こんな形で書きますよという形の確認のために投稿します。
十で神童、十五で才子、二十過ぎればただの人。
天才も二十歳という大人として成人すれば、もう既にただの人となってしまう。
才覚溢れる人というのは数少ないが、その才覚を天才という名で形作るまでに成長した人物はさらに少なく、真の天才として大人になる者はさらに少ない。
もし天才を天才のままにしたければ、いくつかの方法が考えられる。
今回はそのうちの、2つの方法を紹介しよう。
1つは天才を育て上げる環境を作る事である。光る可能性の鉱石を見つけだし、磨きあげ、そこからさらに光り輝く一級品の鉱物へとしていくかのように……その才能を磨きあげ、綺麗になるような環境を作り上げば良い。そうやって才能を育て上げれば、きっと天才という才能溢れる者を作り上げる事が出来るだろう。
ただただ無駄に時間を浪費させるよりかは、才能を育て上げる最高の環境を用意しておく方がよっぽど有意義だろう。
もう1つは……ただの人になる前に殺す事。
天才を天才のまま。
秀才を秀才のまま。
異才を異才のまま。
超高校級を超高校級のまま。
天才児を天才児のまま。
大人になって天才になれなかった者、《元》とかの意味不明な称号が付く前に殺せば良いんだよ。
これは、《超逸材》として選ばれた6人の高校生の物語。
10年間森の中で女子力ならぬ狩人力を磨いて数々の危険生物を狩った《超逸材の狩人》、戸隠七海。
毎月開催されるコンサートでは満員でドラマや音楽でも活躍する《超逸材のアイドル》、鳥飼祐樹。
人類が未踏だった遺跡を数多く見つけ出した《超逸材の冒険者》、大和歩。
未解決のまま放っておかれた難解事件や殺人事件などを数多く解決してきた《超逸材の探偵》、雪割花江。
自称忍者の末裔としてスクープを連発して来た《超逸材の新聞記者》、夕張安奈。
小学生の時から極道や犯罪者の難病を治療してきた《超逸材の闇医者》、美原くるみ。
1人1人がスーパースター。
全員揃ってオールスター。
世界を変えるほどの才能を持った6人による、謎のロボット《ダックルラ》と名乗る者による殺し合い。
人を殺し、その罪を暴かれなかった者だけがこの監禁生活から逃れられるというそんなふざけた世界で生きる6人の物語。
……まぁ、もっともその中の1人、《超逸材の探偵》さんはこの中の誰かに殺されちゃったんだけれどもね。
今から語るのは、そんな騙し合いの物語。
――――犯人が騙し、他が騙され、他が騙し、犯人が騙されて。
驕られ、騙し、謀り、たらしこみ、裏切り、ごまかし、嘘を吐く。
そんなどうしようもない、くだらない言い争いだと思って欲しい。
さぁ、始めようか。
1人の人間が死んだことで始まる、裏切りと謀略の裁判を。
☆
ギフテッド。
天才を意味するこの名前を冠して行われることになった、天才の卵達を集めて未来の天才を作るという《ギフテッド》制度が行われ始めて、早数年。
最初こそちょっとした問題やいざこざや恨みや嫉みとか、まぁ色々とあったがそんなのは今の状況ではどうだって良い些細な問題だろう。
世界を明るく導くための希望として集められた《超逸材》の名を冠した者達。
彼らは順調に、順当に、希望としてその才覚を磨いていた。
――――そこに現れた《ダックルラ》と名乗る、白と黒の二色に彩られたネコのぬいぐるみが現れた。
ダックルラによって彼ら希望は監禁生活を余儀なくされ、そこから出るために誰か1人を殺し、犯人として見破られなかったら出られる、というルールの下で監禁生活が始まった。
最初こそはみな、仲間同士の殺し合いなど認めずに抗っていた6人であったが、動機などを渡され、殺し合いの方向へと誘導される事によって――――遂に、《超逸材の探偵》こと雪割花江が殺された。
探偵として犯人を追いつめ、被害者に寄り添う探偵として活動してきた彼。
この殺し合いに一番否定的で、皆との協力を大事にしてきた彼が一番に殺されたのは、必然だったのか、それとも違うのか。
ナイフによって脇腹を刺され、その上で野球ボールに当たって腹部に強烈な衝撃を受けていた《超逸材の探偵》雪割花江。
誰がこの事件を引き起こしたのかは分からない、けれどもこの中に犯人が居るのは間違いない。
ならば、僕達はこの裁判を勝ち残り、ここから出なければならない。
ヤマトアユム(……そうだ、それが僕達の生き残る道。この殺し合いを生き残り、希望を未来へと繋げるために――――)
ヤマトアユム(僕達は……負けられないんだ!)